映画【ダークナイト】。9月に公開予定の【TENET テネット】に期待が高まる中、多くの映画ファンが改めてクリストファー・ノーラン監督に注目しているかと思います。第81回アカデミー賞にて2部門を受賞し、最近ではリバイバル上映第1弾として上映されたアメコミ新時代をぜひご覧くださいませ。
【ダークナイト】のあらすじ
ピエロの仮面をかぶったグループがゴッサム・シティ銀行をマフィアの資金強奪を図るものの、チーム内で裏切りを繰り返し、最後に残ったジョーカー(ヒース・レジャー)ただひとりで逃走します。
バットマンことブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)、ゴッサム市警のジム・ゴードン(ゲイリー・オールドマン)、地方検事のハービー・デント(アーロン・エッカート)も後に加わり、ゴッサムから犯罪をなくすために活動していました。
ブルースは、マスクなしで犯罪と戦うハービーに感銘を受け、彼をサポートしつつバッドマンの引退を考え始めていました。
そんなある日、バットマン登場で動きづらくなっていたところに、資金強奪という事件を受けてイラついているマフィアボスたちが集まる会議にジョーカーが突如現れ、資金の半分と引き換えにバットマン殺害を提案します。
突然かつ失礼な態度に腹を立てたボスのひとりであるギャンボル(マイケル・ジェイ・ホワイト)は、ジョーカーに懸賞金をかけますが……。
【ダークナイト】の見どころ・ネタバレ
観客・批評家ともに絶賛の嵐
DCコミック原作の「バットマン」シリーズを、クリストファー・ノーラン監督が制作した本作は【ダークナイト・トリロジー】(2008)の中の2作目にあたります。
かの有名なアメリカ映画批評サイトRotten Tomatoesでも、高い支持率を誇る本作。
アメコミという概念にとらわれず人間の内面や複雑な心理を描いたことから、アカデミー賞では8部門ノミネートというアメコミ映画としては前代未聞の領域に踏み込んだ作品とも言えるかと思います。
作品賞にノミネートされなかったことが大きな批判を集め、翌年から候補枠が5作品から最大10作品に拡大するなど、映画界に与えた影響も大きかった作品です。
ぞっとするほどのめり込む悪役
ヒース・レジャー演じるジョーカーは、現在でも絶大な人気を誇っており、ジャック・ニコルソンが演じたジョーカーとは異なる像を作り出したことでも大きな話題になりました。
というのも、ジョーカー役が決まってからのヒースの役作りはとんでもないもので、6週間ロンドンのホテルにひとりきりで閉じこもり、専門書を読み漁り、外部との連絡をなくして独特な笑い方や話し方をひたすら練習していたそう。
原作ファンからのプレッシャーの中、サイコパスになりきって演じたヒースは疲れ切って不眠症に陥ってしまいます。
睡眠薬を服用し始め、薬物併用から起こる急性薬物中毒の事故死で【ダークナイト】の公開を待たず亡き人になってしまいます。
その後、ピーター・フィンチ以来2例目となる故人での助演男優賞を受賞するなど、彼の演技力は世界に認められました。
ジョーカーはヒースが文字通り命を懸けて挑んだ不気味かつ狂った悪役である、ということを踏まえて観ていただければ、よりジョーカーという人間についてさらに深く感じられるかと思います。
特別な力を持ってやしない
アメコミ、といえば特別なスキル・パワーを持っていて空を飛んだりビームが出せたりする、といったイメージを持つ方が多いかもしれません。
しかし、バットマンはガジェットとスーツが最新かつ強力で、彼自身も鍛えてはいますが、中身としてはサイボーグやミュータントというわけではなく、ただの人間です。
ジョーカーに関しても然りで、作中でもっバットマンにボコボコにされているシーンがあるくらいなので戦闘が得意ではないように感じられます。
ジムもハービーも人間で、特別なパワーを持ったキャラクターは作中にはひとりも出て来ないのです。
本編で語られるのは「人間という生き物の本性」ではないかと感じます。
ブルースやゴッサム市民の希望であったハービーは、最愛の人を失った結果、悲しみと恨みから見事に変貌し終盤には本性を剥き出しにしています。
ジョーカーは、ルールや秩序を壊したいだけなので金も名誉も必要がありません。
ただルールを壊して、市民やバットマンの本性を暴きたいという欲だけです。
バットマンを殺す気はないし、いっそ殺されたいと願うジョーカーに人間を殺せないバットマンはどう足掻いても勝てやしないのです。
スーパーパワーで正義は悪に勝つ!といったステレオタイプなアメコミ像を見事に壊した作品だと強く感じました。
【ダークナイト】まとめ
有名なドラマ「シャーロック・ホームズの冒険」シリーズでホームズを演じたジェレミー・ブレット然り、天才や狂人を演じることは俳優たちに大きなプレッシャーを与えました。
演技の練習にのめり込んだ結果、肉体的にも精神的にも影響を与えてしまうということを頭に置いて、映画やドラマなどを鑑賞していきたいと強く感じた作品です。
結局のところ、人間であれば何かを優先してしまうのもで、それはヒーローであっても変わりはないという本質を描いているかと思います。
下手なサイコスリラーやドラマ映画よりも、よっぽどいい意味でも悪い意味でも人間らしさがにじみ出ている映画なので、「アメコミは苦手……」という方にもおすすめしたい一作です。
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