【風の谷のナウシカ】あらすじと見どころ。巨匠・宮崎駿監督の長編アニメーション映画第2作(第1作は【ルパン三世 カリオストロの城】)であり、金曜ロードショーで最も多く放送されているジブリ(トップクラフト)作品である【風の谷のナウシカ】。コロナ禍で世界中に不安が渦巻く今、じっくりと観てみると今までと違った角度から見えてくるものがあるかも。
【風の谷のナウシカ】のあらすじ
1000年前に起きた「火の七日間」と呼ばれる最終戦争によって現代文明は崩壊。
腐海(ふかい)と呼ばれる、吸うと身体に害のある瘴気を発する菌類の森に覆われながら、わずかに生き残った人間は森に住む巨大な蟲に脅かされながら暮らしていました。
酸の海からの風によって森の毒から守られ、慎まやかな生活をしている「風の谷」に住むナウシカ(島本須美)は、族長ジルの娘であり、腐海の蟲を恐れず心を通わすことのできる少女でした。
そんなある日、トルメキア大国の輸送機が風の谷に墜落。
その輸送機には「火の七日間」の際に使用されたといわれる「巨神兵」の胚が積み込まれており、輸送機が撃墜されたとして風の谷に皇女クシャナ(榊原良子)を筆頭に侵攻してきます。
彼らは育てた「巨神兵」を用いて腐海を焼き払うことを目論んでいました。
その際に、父・ジル(辻村真人)を殺害され乱闘騒ぎになったのちに捕虜となったナウシカは、トルメキアの船にて工房都市国家・ペジテへ護送されることになります。
しかし、途中で戦闘機に攻撃を受け墜落してしまいました。
腐海に不時着したクシャナやナウシカは、蟲たちのざわめきに胸騒ぎを感じて単身その場を離れます。
メーヴェで飛行していて見つけた、蟲に追われている少年・アスベル(松田洋治)を助けるものの蟲からの体当たりで蟻地獄に落ちてしまい、腐海の深層部に落ちてしまいます。
その場所はマスクなしでも呼吸が可能な空間でした。
ナウシカは腐海が毒を洗浄する役割を持つのだと確信。
その場から脱出したナウシカは、アスベルの故郷・ペジテへ向かうも、街に残留するトルメキア軍一掃のために住民が蟲を利用した結果、すでに壊滅状態で……。
【風の谷のナウシカ】の見どころとネタバレ
スタジオジブリができるきっかけとなる作品
コロナ禍によって映画館にて再上映されたことも記憶に新しい【風の谷のナウシカ】。
宮崎駿が監督として手掛ける第3作目であり、スタジオジブリ初作品となる【天空の城ラピュタ】(1986)など、その後のジブリ作品を支えていくことになる高畑勲、鈴木敏夫、久石譲などスタッフが集まったのも本作の特徴です。
1984年のアニメグランプリ・日本アニメ大賞の作品部門を受賞、映画雑誌でもベストテン入りと国内外と賞賛され、同時に宮崎駿の知名度を挙げた作品とされています。
元は宮崎駿がアニメージュにて連載していた同名のマンガが原作であり、映画は2巻途中ごろまで執筆していたときに制作されたため、マンガとは内容が異なるので気になる方はぜひチェックを。
現代社会におけるメッセージとは
本作を観て思うことは、戦争の怖さでしょう。
1000年前に起きたという「火の七日間」について、チラリとしかでてきませんが描かれなくとも酷い状況であったことが想像できます。
「巨神兵」は圧倒的な光線をその口から吐いてあたりを焼き払い、ナウシカたちの住む現代は荒れに荒れてしまいました。
そんなことが昔あったにも関わらず、トルメキアとペジテは対立し「巨神兵」と蟲を利用してさらに環境を悪化させてしまいそうなことを計画していました。
現実社会にも「巨神兵」のようなパワーを持つ核兵器や原発などがありますが、もし故意に使ってしまえばとてつもない人数の死者や街の崩壊、放射線の汚染によって住めなくなるエリアなどが出てくることは想像に容易かと思います。
その後、待っているのはおそらくナウシカたちが住むような世界です。
しかし、ナウシカは「こころを通わすことができる」ということを本編で証明してくれています。
蟲を森へ送り返すシーンやラストの王蟲たちの暴走を食い止めるシーン、はたまたペジテのブリッグ(大型貨物艇)に監禁されるものの、アスベルの母や周辺の協力によって脱出するシーンなど色々ありますが、人間同士はもちろん自然との共存の方向性は必ずあるという強いメッセージが込められいるのだと考えます。
作中におけるメカについて
宮崎駿作品といえば、やはりオリジナリティ溢れるメカにも注目していきたいところ。
本作にはよく見るといろいろなメカが登場していますが、やはりその中で特に印象的なのはナウシカが乗っている小型グライダー「メーヴェ」でしょう。
ドイツ語で「かもめ」という意味のこの乗り物は、風の流れを利用して滑空するため、一流の風使いにしか乗れないとされていますが、ナウシカは見事に乗りこなしています。
他にもガンシップや風の谷の民が1台乗っ取ったトルメキアの自走砲、王蟲の幼生を捉えて移動させていたペジテの飛行ガメなど。
その後の作品を観ていってもわかるように、空を飛ぶものが好きな宮崎駿らしいです。
【風の谷のナウシカ】まとめ
製作から約35年が経過していますが、まだまだ現代社会にとって大切なことを教えてくれる、色褪せることのない作品のひとつだと思います。
似たような世界観としては【もののけ姫】(1997)も人や環境に関するメッセージ性を感じますが、宮崎駿が全話演出を務めたアニメ【未来少年コナン】(1978)がぴったりでしょう。
まさしく兵器戦争によって大きく文明が失われた世界が舞台であるため、本作よりも現代に近いイメージで観ることができるのではないかと思います。
また、当時同時上映されていたのはアニメ【名探偵ホームズ】シリーズの2作品だそう。
全体26話中、6編分宮崎駿が監督・演出などを務めており、特に【天空の城ラピュタ】の際に上映されていた2作中1作は、宮崎駿の演出らしい飛行機による空中戦が繰り広げられているため、メカ好きならチェックを。
© 1984 Studio Ghibli・H
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