スポンサーリンク

【ジョン・F・ドノヴァンの死と生】亡きスターと少年の❝秘密の文通❞。美しくも儚い映像と人間ドラマから、目が離せない。

「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」出典:Amazon.co.jp

Writer:nono
Introduction

【ジョン・F・ドノヴァンの死と生】あらすじと見どころ。世界が注目するグザヴィエ・ドラン監督による、自身の体験から着想を得たヒューマンドラマ。ある少年と文通をしていた若手スター…成長した少年が手紙の内容を振り返りながら、若くして死んだスターの死の謎と、知られざる孤独を紐解いていく。

© 2018 THE DEATH AND LIFE OF JOHN F. DONOVAN INC., UK DONOVAN LTD.

Production

公開:2018年 イギリス/カナダ

原題:The Death & Life of John F. Donovan

監督:グザヴィエ・ドラン

キャスト:キット・ハリントン、ナタリー・ポートマン、スーザン・サランドン、ジェイコブ・トレンブレイ、キャシー・ベイツ、タンディ・ニュートン、ベン・シュネッツァー

スポンサーリンク

あらすじ

2016年のプラハ、街角のカフェでジャーナリストと一人の若手俳優が顔を合わせていた。

オードリー・ニューハウス(タンディ・ニュートン)が独占取材する相手は、新進気鋭の俳優ルパート・ターナー(ベン・シュネッツァー)。

ある俳優と交わしていた秘密の手紙を、ルパートが初めて公開したからだ。

10年前の2006年、当時幼かったルパート(ジェイコブ・トレンブレイ)は、ニューヨークの大スター、ジョン・F・ドノヴァン(キット・ハリントン)と密かに文通していた。

学校ではいじめられ、母親と二人で暮らしていたルパートは、ジョンに憧れ、届く手紙を心待ちにしていた。

時の大スターと一人の少年という真逆の立場の二人だったが、❝孤独❞という共通点からか、手紙を通じて心を通わせていく。

しかし、ある日、ジョンが29歳という若さでこの世を去る。

彼は自殺をしたのか? はたまた不運な事故、事件なのか?

謎に包まれていた彼の死が、大人になったルパートの口から、初めて語られることとなる。

スポンサーリンク

繊細な演技で魅了するキャスト陣

《ジョン・F・ドノヴァン役:キット・ハリントン》

タイトルにある通り、本作はジョンの人生にフォーカスし、進んでいく。

新進気鋭の若手スターとして華々しく活躍する一方、自身のセクシュアリティで悩み、自分が生きる場所に孤独を感じている

そんな、人々の憧れの存在でありつつも繊細なジョンを、キット・ハリントンが力強く演じている。

純粋すぎるまでに透き通った瞳は、様々な感情に揺れ動き、こちらに静かに訴えかけてくる。

だからこそ、観客は彼から目を離すことが出来ない。

Kit Harington/キット・ハリントン
1986年12月26日 イギリス・ロンドン出身。
由緒正しい準男爵家の出自で、演劇学校を卒業後、ブロード・ウェイに並ぶウエスト・エンドの舞台【ウォー・ホース 〜戦火の馬〜】で主演を務めた。
2011年~2019年には大ヒットTVドラマ【ゲーム・オブ・スローンズ】に出演、世界的に有名に。
主な出演作:【サイレントヒル: リベレーション3D】(2012)、【ポンペイ】(2014)、声の出演【ヒックとドラゴン2】(2014)、【ゲーム・オブ・スローンズ】シリーズなど。

《グレース・ドノヴァン役: スーザン・サランドン》

長年、息子のジョンとわだかまりがある母・グレース役にスーザン・サランドン

ドラン監督の想いが一番詰まったキャラクターではないかと思わせる、映画の中でも象徴的な役柄を、ベテラン俳優のスーザンが堂々と演じている。

華やかな世界で活躍する息子と折り合いが悪く、ジョンにとっては愛憎とも言える感情を思い起こさせる相手であるグレース。

しかし、彼女がどんな人物であれ、ただジョンを愛し、良くも悪くも無意識の領域で彼の理解者でもある。

映画終盤のジョンとグレースのシーンは、数少ない幸せなシーンであり、母と子という、切っても切れぬ残酷で愛しい繋がりについて、思わず考えてしまう名場面と言える。

Susan Sarandon/スーザン・サランドン
1946年10月4日 アメリカ・ニューヨーク出身。
【ジョー】(1970)で映画デビュー後、地道に俳優活動を続ける。
カルト的人気を誇る【ロッキー・ホラー・ショー】(1975)で主演を務め、高い評価を受けた。
【デッドマン・ウォーキング】(1995)ではアカデミー主演女優賞を受賞。
主な出演作:【アトランティック・シティ】(1980)、【ザ・クライアント 依頼人】(1994)、【ムーンライト・マイル】(2002)、【アバウト・レイ 16歳の決断】(2015)など。
Instagram:@susansarandon

《サム・ターナー役:ナタリー・ポートマン》

密かに遠い海の向こうのスターと手紙のやり取りをしては、悩みを抱えながらも夢を追う息子を見守る母親役に、ナタリー・ポートマン

私生活でも二児の母親であるナタリーが、厳しくも愛に溢れたルパートの母・サムを流石の演技力で演じている。

女手一つで必死に息子を育てながら息子の夢を応援し、幸せを願い続ける一方で、気付かない間に開いていくサムとの心の距離に悩む、等身大の女性。

ナタリー演じるサムの存在が、この物語を温かなものにしているのは確かだろう。

Natalie Portman/ナタリー・ポートマン
1981年6月9日 イスラエル出身。
【レオン】(1994)で映画デビューし、マチルダ役での可愛らしくも大人びた演技が国際的に評価される。
【スター・ウォーズ】シリーズのパドメ・アミダラ役で人気を不動のものに。
その後も、演技力の求められる様々な作品で役を掴み、美貌を兼ね備えた実力派俳優として現在も活躍している。
主な出演作:【クローサー】(2004)、【ブラック・スワン】(2010)、【マイティ・ソー】(2011)、【ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命】(2016)など。
Instagram:@natalieportman

《ルパート・ターナー役(少年期):ジェイコブ・トレンブレイ》

ジェイコブ・トレンブレイ演じた幼少期のルパートは、学校ではいじめられ、家は父親が出ていき母親と二人暮らし。

子どもながらに大きな孤独を抱え、テレビの向こうの輝かしいジョンに憧れていた。

自分とは真逆の存在であるジョンの様になりたいと、自身も子役オーディションを受ける日々だ。

ジョンとの交流に無邪気に喜ぶ子どもらしい姿を見せる一方、母親への複雑な感情、ジョンの胸中や死に動揺する姿も見せ、ストーリーテラーとして観客の目となってくれる。

Jacob Tremblay/ジェイコブ・トレンブレイ
2006年10月5日 カナダ・バンクーバー出身。
【スマーフ2 アイドル救出大作戦!】(2013)で映画デビュー。
第40回トロント国際映画祭で観客賞を受賞したルーム(2015)の演技を評価され、全米映画俳優組合賞助演男優賞にノミネートされた。
その後も話題作に出演し、今後の活躍がますます期待されている。
主な出演作:【ワンダー 君は太陽】(2017)、【グッド・ボーイズ】(2019)、声の出演【あの夏のルカ】(2021)など。
Instagram:@jacobtremblay
スポンサーリンク

抑えるべきポイント

グザヴィエ・ドラン監督の初英語作品

監督のグザヴィエ・ドランは、カナダの監督・俳優でありながら、これまでの監督作品は全て英語以外の言語によるものだった。

弱冠19歳にして監督・脚本・主演を務めた【マイ・マザー】(2009)の時から映画はフランス語で作られ、その後の【胸騒ぎの恋人】(2010)、【わたしはロランス】(2012)、【Mommy/マミー】(2014)もフランス語で物語が展開し、どの作品もカンヌ国際映画祭等で数々の賞を受賞した。

繊細かつ深い人間ドラマを描くことで有名で、多くのファンを持つドラン監督による本作は、初めて全編英語で語られる作品となっている。

また、数々の作品で親子関係や親子愛をテーマとして扱ってきたドラン監督、本作も例に漏れることなく、スターと少年の不思議な絆や孤独を描くと同時に、若くして命を落とす人気俳優と母親、そんな俳優に憧れる少年と母親と、二組の親子に真摯に優しくフォーカスしている。

更に、予告映像の冒頭にもあるように、会ったことのないスター俳優と一人の少年が文通する中で、お互いへの理解を深めていくストーリーというのは、幼少期のドラン監督が、憧れていたレオナルド・ディカプリオに手紙を書いた実体験から創造したんだそう。

監督初の試みである英語作品、また監督自身の体験から生まれた物語という、ドラン監督ファンにとってはより楽しめる作品となっている。

センスが光る選曲の数々

本作は、美しい映像や印象的なカットを楽しめるほか、劇中流れる音楽にもドラン監督のセンスを感じることが出来る。

映画であると同時に、ある種ミュージックビデオのような洗練さも醸し出しているのだ。

特にオープニング、水面を映していたカメラがニューヨークの摩天楼に移るが、その時に流れるのはAdeleの大ヒット曲「Rolling in the Deep」。

出だしの❝There’s a fire starting in my heart(私の心で、炎が燃え上がる)❞という歌詞が、Adeleの力強い歌声とメロディによって、物語のはじまりを観客に感じさせる。

そして、次のカットで登場する、本作の主人公であるジョン・F・ドノヴァン。

若手スターらしく撮影中の彼は、瞳を伏せている――まるで、彼にしか分からない苦悩に一人向き合っているかのように。

そして、表情を伺い知ることが出来ずにいたその時、パッと視線をカメラに向けるのだ。

同時に現れるタイトルと、サビに入り一層熱のこもったAdeleの歌声、❝We could have had it all(私たち、全てを手に入れることができたのよ)❞という彼の未来を想起させるような情念のこもった歌詞、キット・ハリントン演じたジョンの真っすぐな瞳の全てが融合し、観ているこちらに鳥肌が立つくらいの衝撃を感じさせる。

圧巻、とでも言うべき、美しい映画のはじまり。

ここに「Rolling in the Deep」を当てたセンスには、脱帽するしかない。

 

他にも、映画の終盤でジョンと彼の母親が心を通わせるシーンでは、Lifehouse「Hanging By A Moment」がラジオから流れてくる。

愛しい人との一瞬を歌うこの曲は、亡くなる前のジョンが母親と過ごす幸せな瞬間を心地よく彩りながらも、切なさと儚さも孕んでいる。

素晴らしい選曲で映像に感情を与えることが、どれほど映画の魅力をアップさせるかが分かるだろう。

スポンサーリンク

周りにいる大切な人の存在を改めて認識する

新作が発表される度に話題になる、グザヴィエ・ドラン監督。

洒落た映像と音楽にのせて描かれる人間ドラマは、辛く苦しく、現実世界を残酷なまでに真っすぐ表しているが、だからこそ、今の世界に生きる人々に必要な映画と言えるのではないだろうか。

本作も、若きスターの死の真相を知る少年、という興味惹かれるストーリーラインに、登場人物それぞれの孤独や苦悩をドラン監督らしいタッチで丁寧に描いている。

生き辛い世の中を懸命に生きていく人間の悲哀と、それでも小さな希望や愛を見出し、再生していく強さ

見終わったあと、ジョンの波乱な人生を想うと同時に、自分のこれからの人生に希望を見出すかのような、奇妙な感覚を覚える。

ラスト間際、カフェから去っていく成長したルパートの表情は、爽やかな風が吹くような、晴れ晴れとした感情にさせてくれる。

誰しもが大なり小なり悩みを抱え、どう生きていけば良いか分からず、迷子になってしまう時がある。

そんな時こそ、この映画を観て欲しい。

ファンタジックだけれどどこまでもリアルな登場人物たちの人生から、きっと自分なりの道筋が見えてくる。

そして、周りにいる大切な人の存在も、改めて意識するだろう。

グザヴィエ・ドラン監督、今後も彼が作り出す世界を楽しみにしていたいと思う。

タイトルとURLをコピーしました