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父親たちの星条旗/硫黄島からの手紙から見る-戦争が残していったもの-[Cineamour]

連載コラム
© Warner Bros. Entertainment Inc. and DreamWorks LLC.
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作品情報
  • 製作:2006年/アメリカ合衆国
  • 原題:「Flags of Our Fathers」「Letters from Iwo Jima」
  • 監督:クリント・イーストウッド
  • ジャンル:戦争映画
  • VOD:[U-NEXT] [hulu] [Prime Video]

太平洋戦争で最も激戦地のひとつといわれた硫黄島の戦い。その硫黄島の戦いをアメリカ側と日本側から描いたのが、「硫黄島2部作」といわれる今回の映画です。

どちらの作品も硫黄島を題材にしていますが、「父親たちの星条旗」は戦争に英雄はいるのかということを描いているのに対して、「硫黄島からの手紙」では日本人の側から見た戦争の虚しさというものを描いています。

どうしてクリントイーストウッドはアメリカと日本双方の側の映画を撮ったのか、そしてこの2本の映画を撮ることで何を伝えたかったのか・・・・

今回は、「父親たちの星条旗」の海軍の衛生兵、ジョン・ブラッドリーと、「硫黄島からの手紙」の陸軍一等兵、西郷昇という2人の人物に焦点を当ててクリントイーストウッドの作品に対する思いについて考えてみたいと思います。

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キャスト

硫黄島からの手紙

  • 渡辺謙
  • 二宮和也
  • 伊原剛志
  • 加瀬亮
  • 中村獅童
  • 松崎 悠希
  • 渡辺広
  • 裕木奈江 ほか

父親たちの星条旗

  • ライアン・フィリップ
  • ジェシー・ブラッドフォード
  • アダム・ビーチ
  • ジョン・スラッテリー
  • バリー・ペッパー
  • ポール・ウォーカー
  • ロバート・パトリック
  • ジミー・ベル ほか
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あらすじ

「父親たちの星条旗」は、ジェームズ・ブラッドリーとロン・パワーズのノンフィクション小説「硫黄島の星条旗」を元に、「硫黄島からの手紙」は栗林忠道陸軍中将の「『玉砕総指揮官』の絵手紙」を元に作られた映画です。

「父親たちの星条旗」では、硫黄島での戦闘は最初の上陸の場面こそリアルに描かれているものの、それ以外は断片的な回想シーンのみで、映画の中でメインとなるのは硫黄島にある摺鉢山の頂上に6人の兵士が米国旗を立てた写真が話題になったことから、戦争で生き残ったジョン・ブラッドリー、アイラ・ヘイズ、レイニー・ギャグノンの3人が戦債キャンペーンで戦費を集めるための広告塔として利用されるというものです。

3人は資金集めをするために国中を回ってスピーチを行いますが、婚約者を連れてうまく立ち回っているレイニー、戦争での体験のフラッシュバックで苦しむジョン、罪悪感から次第にアルコール依存症になるアイラというように、英雄だと思われた3人の若者の等身大の姿が描かれています。

そして「硫黄島からの手紙」は、硫黄島の調査隊が地下壕の地中に埋められていた数百通もの兵士の手紙を見つけた場面から、1944年6月に栗林忠道陸軍中将が小笠原方面最高指揮官として硫黄島にやってくる場面へと移っていきます。

到着してから現場を視察した栗林は、これまで一般的だった水際防衛作戦ではなく、島中に地下壕を掘ることで内地で戦うゲリラ戦で戦うことを主張しました。

また、着任早々から部下の兵士に対する理不尽な体罰を戒めたことから、これまでなかった上官の姿に陸軍一等兵の西郷昇はかすかな期待を抱くようになります。

アメリカ軍を迎えうつため島中に地下壕を張り巡らせたなか、1945年2月19日、ついにアメリカ軍が上陸を開始し、硫黄島での戦いがはじまるのでした・・・

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クリントイーストウッドが伝えようとしたものとは・・・

今回の映画についてクリントイーストウッドは、戦争の虚しさについて描いているということと、戦争には勝者も敗者もないということをインタビューで語っています。

また、クリントイーストウッドがこれまで観た戦争映画というのは、正義と悪による二項対立の映画がほとんどだったとも述べています。こうした正義と悪がはっきりした映画には必ずといっていいほど英雄が登場し、そうした英雄に人々は喝采を送ります。

ですが「父親たちの星条旗」を観て、戦争での英雄とは作られたもので、それがまたプロパガンダとして利用されてしまうということがよくわかります。

また、「硫黄島からの手紙」では、戦争で生き残るよりも自決を選ぶ兵士に対して、何としても生き残ろうとする西郷の姿というのは、これまでの戦争映画になかったキャラともいえるでしょう。

そして、「父親たちの星条旗」のジョン・ブラッドリーは、前線で戦う兵士の救助を行う衛生兵で、「硫黄島からの手紙」の西郷昇は、軍隊上がりの兵士ではなくパン屋を営んでいた我々と同じような普通の人です。

この2人の若者に共通するのは、敵に対して決して銃を向けていないということです。

さらに、「父親たちの星条旗」と「硫黄島から手紙」では日本兵、アメリカ兵の双方が描かれることはほとんどありませんが、双方の兵隊の個性が描かれているというのが、「硫黄島から手紙」で捕虜になったアメリカ兵の手紙をバロン西が読み上げる場面です。

「硫黄島から手紙」では、唯一アメリカ兵の手紙が読まれる場面ではありますが、負傷して横たわっているアメリカ兵はどこにでもいるような普通の若者で、彼の母親が書いた手紙の内容が、日本人の兵士にも十分に伝わってきているのが映画では描かれています。

それまでの戦争映画なら描かれることのなかったような人物や場面が描かれているということからも、冒頭で書いたクリントイーストウッドの思いが伝わってくるのではないでしょうか。

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映画の回想シーンは誰が行なっているのか?

今回の映画はどちらも現在から過去を回想するというかたちで映画が描かれています。

映画を観た人が「父親たちの星条旗」が分かりにくいと感じるのは、「硫黄島からの手紙」が時系列の回想で描かれていることに対して、「父親たちの星条旗」は時系列がバラバラで描かれているだけでなく、息子がかつての父の戦友に話を聞く、ドキュメンタリー形式が採られているからでしょう。

そしてどちらの映画も、現在から過去への回想、過去の登場人物がそれぞれ回想するという二重の回想の形式で描かれています。

そこで不思議に思うのは、過去の登場人物の回想はジョン・ブラッドリーなら彼の回想、栗林忠道陸軍中将なら彼の回想ということが分かるのですが、では現在から過去への回想というのは誰が行なっているのでしょうか。

そうした疑問に対するヒントとなるのは、「硫黄島からの手紙」の栗林のセリフである、「何年もたった後、君たちのことをみんなが思い出し、君たちの魂を祈ってくれる」にあるかもしれません。

作家が作品を作る動機のひとつに、死者の声に耳を傾け、彼らの声を代弁するというものがあります。

そう考えてみると、今回の映画の現在から過去への回想というのは、クリントイーストウッドが硫黄島での死者の声に耳を傾け、彼らの声を代弁したものともいえます。

松尾芭蕉の俳句に「夏草や兵(つはもの)どもが夢の跡」というものがありますが、「硫黄島からの手紙」のラストでの誰もいない、かって最前線だった硫黄島の海岸の風景を見ていると、忘れてはいけない死者たちの魂の声が今にも聞こえてくるようでもあるのではないでしょうか。

Photo:「硫黄島からの手紙」「父親たちの星条旗」©Warner Bros. Entertainment Inc. and DreamWorks LLC.
本ページの情報は2024年7月時点のものです。