【ラスト・クリスマス】ワム!の名曲と共に。クリスマスに訪れた切ないほどに優しい奇跡とは。

【ラスト・クリスマス】あらすじ。クリスマスの定番ソングである、ワム!のラスト・クリスマスをモチーフに出演者のひとりでもあるエマ・トンプソンが製作・脚本をつとめた、ロマンチックコメディ。クリスマスシーズンに奇跡と優しさがいっぱいに詰まった心温まる作品をぜひ。

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【ラスト・クリスマス】あらすじ

クリスマスシーズン真っ只中のロンドン。

バーで出会った男の家で一夜を過ごしたケイト(エミリア・クラーク)は、起き抜けにシャワーを浴びていたところ、男のガールフレンドと鉢合わせ。

濡れた髪のままアパートを追い出され、思わず悪態をつく。

「クソみたいな人生!」

クリスマスショップで働きながら歌手を目指すケイトの日々は、上手くいかないことばかりだった。

過保護な母親や真面目な姉とは喧嘩が絶えず、歌のオーディションは落選続き。

よく知りもしない男と関係を持ったり、家に帰りたくないばかりに居候させてもらう友人宅では、毎度の様にアクシデントを起こしていた。

そして挙句の果てには、自分の不注意で職場であるクリスマスショップが強盗に入られてしまう。

そんな中、ケイトは不思議な男と出会う。

トム(ヘンリー・ゴールディング)と名乗るその男は携帯も持たず、いつもふらりとケイトの前に現れては浮世離れした言動を繰り返していた。

ケイトはそんなトムに呆れながらも、気が付けば彼に会えるのを心待ちにしてしまうのだった。

しかし、突然トムはケイトの前から姿を消してしまう。

トムを必死に探し回るケイトを待っていたのは、衝撃の事実だった……。

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【ラスト・クリスマス】ネタバレと結末

トムとの距離感

いつしかトムに恋心を抱いていたケイトだったが、掴みどころのないトムとの距離は一向に縮まらない。

そんな時、ついにトムの家に招かれる。

モデルルームのような殺風景な部屋に驚きつつも喜ぶケイトだったが、普段のようにベッドインとはならない。

トムの包み込むような優しさを受け、気が付けば自分が抱える問題を打ち明けていた。

「手術したの。心臓移植よ」

病気を患っていたケイトは、1年前に心臓移植の手術を受けたのだ。

自分のではない、誰かの心臓で生きるケイト。

周りは「幸運だ」と言うけれど、大切なものを失ったような感覚のまま生きている実感を得られないでいた。

その感覚はいつしか、歌を歌うことや人との関わり方まで変え、自分の心の傷を誰にも打ち明けられないままケイトは自分を見失っていた。

そんなケイトの傷に耳を傾け、優しく彼女を抱きとめたのはトムだった。

どこか投げやりに自分本位で生きていたケイトは、その日を境に次第に変わっていく。

ボランティアに参加したり、バラバラだった家族との関係を見つめ直したり、疎遠になっていた友人と仲直りをしたり、上司であるサンタ(ミシェル・ヨー)の恋を取り持ったり……。

ケイトは徐々に自分を取り戻していったが、トムと会えない日々が続いた。

約束

連絡も取れない中、町中を探し回っていたケイトはトムの家を訪ねてみることに。

しかし、家の中にいたのはトムではなく不動産業者の男だった。

男は、ケイトを内見希望者と勘違いして部屋の紹介を始める。

困惑するケイトに、男は追い打ちをかけるかのように伝える。

ここは1年近く空き家であること、前の住人は去年のクリスマスに交通事故で亡くなったこと。

その瞬間走馬灯のように、同じく去年のクリスマスに心臓の移植手術を受けたことがケイトの頭の中を駆け巡った。

トムという青年は既に死んでおり、移植手術によって自身が得た心臓はドナー登録をしていたトムのものであることを悟ったケイト。

自分を変えてくれて愛をくれたトムが、もうこの世にはいないという真実。

では、今まで自分が会っていた青年は?他の人には見えていなかった?

混乱するケイトの前に、トムはいつもと同じようにふらりと現れた。

「なぜ感じるの?」

そう尋ねるケイトの胸にトムは優しく手を重ねた。

「君の一部だから。……大事にして」

トムの瞳を見つめ、目には涙を浮かべながらケイトは答えた。

「約束する」

深く見つめあう2人。

ケイトは分かっていた。今がトムと過ごすことのできる最後の瞬間であると。

後日、大勢が集まるボランティア会場では、クリスマスコンサートが開催されていた。

ケイトは、家族や友人たちの前で、幸せそうに愛しそうに『ラスト・クリスマス』を歌うのだった。

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【ラスト・クリスマス】の魅力

たっぷりと詰まったクリスマスムード

本作は、クリスマスシーズンに観るのにぴったりな作品だ。

冒頭、ケイトがロンドンの街を足早に歩くところから、ワム!の「ラスト・クリスマス」が流れ始める。

名曲「ラスト・クリスマス」をモチーフにした作品なだけあり、全編で流れる音楽はワム!や同バンドの歌手でソロでも活動していたジョージ・マイケルの楽曲を使用している。

もちろん、耳だけではなく視覚でもクリスマスを感じられるようになっていて、ケイトが働くクリスマスショップは小さいけれど魔法のように素敵な場所。

大きなクリスマスツリーに壁一面に飾られたクリスマスグッズ、サンタクロースの置き物やトナカイや雪だるまのオブジェ。

夜になると店内がライトアップされロマンチックな雰囲気に。

今すぐにツリーを出したくなるような、そんなワクワクとした気分にさせてくれる。

トムとケイトが、クリスマスシーズンのロンドンでデートするシーンも要チェック。

寒い冬、クリスマスムードを楽しむのにピッタリの映画だ。

忙しない現代を生きる人々に響くメッセージ

自分を見失ったまま生きる主人公のケイト。

仕事や学校、人付き合いに追われ、自分の内面に目を向ける時間が足りない、なんてことはないだろうか。

気が付いたら心が疲れ切ってしまっていたというのは、現代社会ではよく聞く話。

そんな自覚がある方は、作中でトムがケイトに教えた言葉を意識してみてほしい。

❝日常の小さな行動がその人の人格を作る❞

流れるように過ぎていく日々の中で、自身の言動のひとつひとつを大切にする。

丁寧に毎日を意識して過ごすことによって、自分がどうなりたいのか、どうしていることが幸せなのか、どのように人と関わり合いたいのかが見えてくるかもしれない。

自分を理解することが、自分を一番大切にできる方法なのではないだろうか。

自分を見失い日々に疲れてしまった人は、是非本作で数々の愛に溢れたメッセージを受け取って欲しい。

内包された社会的テーマ

ロマンチックコメディである本作には、同時に多くの社会的テーマが描かれている。

そのうちの一つが、セクシュアルマイノリティーについて。

ケイトの姉のマータは同性のパートナーと共に暮らしているが、両親には恋人ではなく友人として紹介している。

そんな姉をもどかしく思って度々衝突し合うケイトだが、それはマータの幸せを願っているからこそ。

以前に比べて、セクシュアルマイノリティーに対する理解や意識は良い方向に向かっているが、それでも社会の仕組みや偏見、差別など、まだまだ問題は山積みである。

それぞれの性のあり方、それを踏まえた上での家族のあり方など、本作を観ながら今一度考えてみてはどうだろう。

この他にも、移民への差別を描いていたり貧困について触れていたりと、世界で問題となっている様々な社会問題を内包している本作。

映画を楽しみながらそれらに触れて、自分なりに考えてみるいい機会になるのでは?

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映画【ラスト・クリスマス】まとめ

ハッピーなラブコメディかと思いきや、クリスマス映画らしいファンタジーと切なさが詰まった本作。

とにかく、登場人物みんなが愛に溢れていて後半は涙が止まらない。

一言では言い表せられない幸福感と、自分を大事にして生きていこうという、生きることへの意識も変わるただのラブコメディには収まらない力があるのだ。

クリスマス映画としても素晴らしいので、クリスマスシーズンに観るもよし、家族や恋人、友人、大切な人と観るもよし。

是非、この映画の奇跡と優しさを受け取ってほしい。

©Universal Pictures