映画【パージ:フォーエバー】は、2021年に海外で公開されたアメリカのホラー映画。シリーズ5作目にして最終作。毎年たった1日12時間の間、いかなる犯罪も許されるパージの日。しかし、パージの日が公式的に終わった後も、アメリカの浄化を叫ぶ過激派集団によってパージが行われ続けたのです。本作では、生き残る為に孤軍奮闘する主人公たちの姿を描いています。
あらすじ
アメリカでは、1年に一晩(12時間)だけ、殺人を含む全ての犯罪が合法になる法律、“パージ法”が施行されました。
そんな中、アメリカンドリームを夢見てメキシコからやって来たアデラ(アナ・デ・ラ・レゲラ)とフアン(テノッチ・ウエルタ)夫婦、テキサスの裕福な村で馬小屋や農場を営みながら安楽に暮らすディラン(ジョシュ・ルーカス)家族は、緊張しながらパージの日を迎えます。
幸い、大きな事故もなくパージの日を終え、公式的なパージの終了サイレンが鳴ると共に彼らは平穏な日常生活に戻ることができました。
しかし、アメリカの浄化を叫ぶ過激派集団が現れ、取り返しのつかない暴力と殺人が進行し始めたのです。
アデラとフアン夫婦、そしてディラン家族は公権力と法の統制を失った永遠のパージの中で、生き残る事が出来るのか……。
歴代【パージ】シリーズ
ブルームハウスとプラチナム・デューンスが共同制作した【パージ】シリーズは、1年のうち1日(12時間)だけ、殺人はもちろん、どんな犯罪も許されるパージの日によって、失業率と犯罪率1%のアメリカを舞台に繰り広げられる恐怖スリラーです。
イーサン・ホークが主演した第1作目【パージ】(2013)公開後、これまでにない斬新さが注目され、300万ドルの低予算で制作した映画が北米だけで6400万ドルの収益を上げる人気作となりました。
2014年には続編の【パージ:アナーキー】が公開され、2年後の2016年には3作目となる【パージ:大統領令】、2018年には4作目となる【パージ:エクスペリメント】が公開。
シリーズ5作目にして最終作となる本作について、脚本・共同制作を担当したジェームズ・デモナコ(1,2,3作は監督・脚本)は、「このシリーズのクールなエンディング」と語っています。
*なお【パージ:フォーエバー】は、2016年の映画【パージ:大統領令】の続編に当たります。
監督と出演者
監督
【パージ:フォーエバー】でメガホンを取ったのは、エベラルド・ゴウト監督。
エベラルド・ゴウトは、プロデューサー兼監督。
【クライム・シティ】(2011)、ドラマ【マーズ 火星移住計画】(2016-2018)でも監督を務めました。
ジョシュ・ルーカス
裕福な農場主の息子ディラン役を演じたのは、アメリカ合衆国アーカンソー州出身の俳優ジョシュ・ルーカス。
【生きてこそ】(1993)で映画デビューし、代表作は【アメリカン・サイコ】(1994)、【ハルク】(1997)、【ポセイドン】(2000)、【フォードvsフェラーリ】(2009)。
ドラマシリーズ【ママさん刑事ローラ・ダイヤモンド】(2014-2016)では、NY市警の警部補ジェイク・ブロデリックを演じ、現在もなお個性派俳優として幅広いジャンルで活躍しています。
アナ・デ・ラ・レゲラ
メキシコ人ヒロインのアデラ役を演じたのは、メキシコ・ベラクルス州出身の女優アナ・デ・ラ・レゲラ。
メキシコ国内で名を馳せた後、【ナチョ・リブレ】(2006)でハリウッドデビューし、【コップ・アウト~刑事した奴ら~】(2010)、【カウボーイズ&エイリアン】(2011)、【アーミー・オブ・ザ・デッド】(2021)に出演。
現在では、メキシコとアメリカの両国で活躍する国際女優となりました。
予想を超えるアクションシーン!
映画開始10分以内に”パージ法”について簡単な説明がなされるため、本作でパージデビューする方でも比較的理解しやすいかもしれません。
【パージ】シリーズは、毎年1日だけ12時間のみ全ての犯罪が許可されるという設定ですが、賛同する人々が犯罪を犯す裏で、法と葛藤する人々の姿も描かれています。
また、犯罪行為の場面の多くは間接的な描写なので、グロテスクなシーンが苦手な方でも安心してご覧いただけると思います。
更に、本作では犯罪の範囲が広がっていること、人間味が加わっていること、そして貧富の格差問題や人種差別にアメリカンドリームの虚像まで加えているのです。
時間も法で決められたはずの12時間を超え、映画の後半部はホラージャンルと言うより、アクションジャンルと西部劇が入り混じったような流れだったことが印象的でした。
特に、予想をはるかに超えたアクションシーンは、緊張感と迫力感はもちろんのこと想像以上の快感を得られること間違いなしです。
社会的問題点の指摘
本作は、メキシコで自衛隊を追放され、アメリカに渡ったアデラとフアン夫婦が物語の中心ですが、アデラがアメリカという国について、「全てを受け入れ、その中で良い事だけを捉えて一つにして生きていく国。その為、自分達が生きるのに最も良い国だと信じる。」と話してる場面があります。
しかし、作中ではこのアメリカンドリームがいつからか人種差別と嫌悪に覆われ、極悪的なパージ法という制度を作り出す結果となりました。
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そして現代、嫌悪な犯罪が多発しているのはアメリカだけではありません。
実際に、アメリカでは街頭犯罪や侵入犯罪の急増、凶悪な少年犯罪の多発、外国人犯罪の凶悪化や組織化と全国への拡散等が、治安水準の悪化を後押ししているのです。
また、外国人による犯罪も増加し、その背後に犯罪組織が暗躍するなど組織犯罪の脅威も増大しています。
本作では、加速する格差社会、人種差別問題から起こるありとあらゆる問題を、パージ法成立の背景とすることで訴え掛けているのです。
思いやりの大切さ
映画で登場したメキシコ人夫婦とアメリカ人の家族は、お互いに助け合いながら困難を切り抜けています。
メキシコ人のフアンは、アメリカ人は自分がメキシコ人だから嫌われていると思っていましたが、対話を通じて”嫌い”なのは国ではなく個人に対する感情であり、特定人種を意味するものではない事が明らかになりました。(メキシコ人だから嫌いと言う訳ではない。どこの国の人であろうと自分と合わなければ嫌い、合えば好きという感情の問題)
人は、〇〇国の人だから嫌いだと思い、偏見の目で見ることが少なからずあるでしょう。
だからこそ会話をして、お互いを知っていくのが一番の近道だと思います。
フアンとディランは、妻と家族を大切に思っているという共通点を通じて助け合い、無事に国境を越えて安全地帯に移動することができました。
お互いに理解し助け合っていくことは、生きていく上で非常に重要で、憎悪と怒りをぶつけるだけでは問題解決に至りません。
パージ法という制度は不快ですが、その極悪犯罪によって、私たちどのような方向に進むべきかを振り返らせ、人に対しての思いやりや助け合うことの大切さを表現しているのです。
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