映画【デッド・ドント・ダイ】ネタバレと見どころ。
第72回カンヌ国際映画祭にてオープニングを飾った、なんともやる気のなさそうな、シュールな映画がついに日本にもお目見えです。
ビル・マーレイやアダム・ドライバーといった有名俳優を起用しつつ、ジム・ジャームッシュ監督が描くゾンビとは……?
【デッド・ドント・ダイ】の作品情報
製作
2019年 アメリカ・スウェーデン合作 R15
原題
The Dead Don’t Die
監督
ジム・ジャームッシュ
配給
ロングライド
キャスト
ビル・マーレイ、アダム・ドライバーティルダ・スウィントン、クロエ・セビニー、スティーブ・ブシェーミ、ダニー・グローバー、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ロージー・ペレス、イギー・ポップ、サラ・ドライバー、RZA、キャロル・ケイン、オースティン・バトラー、ルカ・サバト、セレーナ・ゴメス、トム・ウェイツ
記事内画像:公式サイト
【デッド・ドント・ダイ】のあらすじ
アメリカののどかな田舎町・センターヴィル。
町民たちは特に事件もなくゆったりとした生活を送っていましたが、色々なエリアで動物たちが異常行動を起こし始める事象が発生していました。
科学者などが調査するものの原因は掴めず仕舞いで、北欧でもないのに白夜のように夜が明るいなど天候も不安定に……。
そんな状況を、不思議かつ不安に駆られる人々の気持ち通り、ほどなくしてセンターヴィル唯一のダイナーにてウェイトレスの変死体が発見されます。
犯人を探すため、警察官のクリフとロニーが町をパトロールしていると、墓地にて何かが地中から這い出してきたような穴を発見。
それを見てゾンビの仕業に違いない、と確信めいて言うロニーの不吉な予感は見事的中し……。
【デッド・ドント・ダイ】の見どころ・ネタバレ
クラシック風現代ゾンビの登場!
ゾンビ映画、とひとくちに言っても今日たくさんのゾンビ映画・ドラマが存在します。
大人気【ウォーキング・デッド】(2010-)シリーズはもちろん、低予算ながら大ヒットになった【カメラを止めるな!】(2018)、ゲームも実写も人気の【バイオハザード】(1996-)シリーズなど巨大ジャンルの1つとなっています。
そんな中、本作はというとB級ゾンビ、コメディゾンビなどのジャンルにカテゴライズされるゾンビ映画。
いろいろなゾンビ像がある中で、本作のゾンビが今までになく新しい部分は「生前好きだったものを求めに行く」という部分。
コーヒー好きならコーヒーを、お菓子好きな子どもたちはお菓子を、電子機器命だった若者たちはWi-Fiを求めて彷徨う姿は新鮮かつ、なんとなく屍ではないはずの私たちにも見えてくるような行動を取ります。
また、現在のゾンビ映画の基本を作ったと言われるジョージ・A・ロメロ監督の【ナイト・オブ・ザ・リビングデッド】(米1968)への愛も強く感じられます。
というのも、シュールかつコメディなイメージを受けがちですが、よくよく観ていると社会風刺としてのゾンビ映画であることがお分かり頂けると思います。
豪華キャスト陣とオマージュと
【コーヒー&シガレッツ】(2003)に出演しているジム・マーレイ、【ブロークン・フラワーズ(2005)に出演しているクロエ・セヴィニー、ティルダ・ウィンストン、【スター・ウォーズ】(1997-)シリーズにて知名度を爆発的に上げ、【パターソン】(2016)にて監督とタッグを組んだことのあるアダム・ドライバーなどなど、豪華な顔ぶれが集まる本作。
他にもスティーヴ・ブシェミやトム・ウェイツなど、ジャームッシュ監督の常連たちがたくさん出演しているため、ファンにとってはとても嬉しく楽しいと思えるはず。
アダム・ドライバーは作中にて【スター・ウォーズ】に出演していた事に関する小ネタが入ったり、中性的故か、他作品にて人間ではない種族を演じることも多いティルダ・ウィンストンの、あまりにも不思議な役柄設定(葬儀屋の刀使いだけれど本当は……?)など、俳優に関する事柄やメタ発言を混ぜ込んでくるため、くすりと笑えるシーンが点々とあるのも本作の特徴と言えそうです。
現代社会へのメッセージとは?
さて、先程「社会風刺としてのゾンビ映画」と述べましたが、本作を観るにあたってふとしたときに感じる違和感とは、おそらく「他人に対しての無頓着さ」ではないかと思います。
例えば、たまたまセンターヴィルに泊まることになった若者3人組のうち、唯一の女性であるゾーイとガソリンスタンド屋のビルボことウィギンズは、ガソリン補給の際に接点がありました。
恋でも始まりそうなふわふわした効果が盛り込まれたシーン作りでしたが、いざゾンビが町を徘徊し始めた時、ウィキンズはヒーローさながら若者たちを助けに行くことなく、金物屋のダニーと籠城することを選択します。
また、終盤にて同僚警察官であるミンディがパトカーからゾンビの群れへと出ていってしまう際も、口では止めているものの、さほど強くは止めていない印象を受けます。
そんな中、現れる葬儀屋兼刀使いのゼルダの非現実的シーンにて、やっとこの状況から目を背けてはいけない、といった感覚を感じました。
人間ひとりでは生きていけないはずなのに、他人に無関心でいいのか?問題に向き合えば解決の糸口はあるのではないか?といったメッセージを感じられる作品ではないかと考えます。
【デッド・ドント・ダイ】まとめ
最近のゾンビ映画の中でもかなりシュールに描かれているイメージを持つ本作。
いきなりゾンビが現れたにも関わらず「頭を狙え!」と言って冷静にゾンビをバットで殴るロニーのキャスティングをアダム・ドライバーにしたのは、本当に適役であると実感されるかと思います。
また、スターギル・シンプソン描き下ろしの映画のテーマ曲かつタイトルと同じ「The Desd Don’t Die」が作中至るところで流されていますが、観終わってから改めて訳を見てみると、現代社会や私たちに対してのメッセージを感じるのではないかと思います。
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