映画【ブライトバーン/恐怖の拡散者】は、2019年に公開されたアメリカのホラー映画。【ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー】(2014)シリーズを、世界的大ヒットに導いたジェームス・ガン監督がホラー・SF・サスペンス・ドラマと、全く新しいジャンルミックス作品を誕生させた本作は、スーパーマンのようなヒーローの能力を持った少年が、邪悪な悪役になったら??という問いから始まった作品です。異世界から来た特別な能力を持つ少年が、邪悪な存在として育てられた事で、起こる事件を描いています。
【ブライトバーン/恐怖の拡散者】あらすじ
子供が出来ず、ずっと苦しんできたトリ(エリザベス・バンクス)は、母親になる日を夢見ていました。
ある日、森の中に捨てられていた男の赤ちゃんを見つけたトリは、その子をブランドンと名付け自分の子として育てることに。
ブランドンは聡明で才能に溢れ、好奇心旺盛な子供に育ち、トリと夫のカイル(デヴィッド・デンマン)にとってかけがえのない存在となりました。
しかし、12歳になったブランドン(ジャクソン・A・ダン)の中に強烈な闇が現れ、トリは息子に恐ろしい疑いを抱き始めます。
やがてブランドンは、普通の人々が持つ事のない異常な力を発揮し始め、カンザス州ブライトバーンをとてつもない恐怖に陥れていくのです。
DC初のスーパーヒーローホラー
【ブライトバーン/恐怖の拡散者】は、ヒーロー物を恐怖物に変えた最初のスーパーヒーローホラー映画で、ブランドンは異世界から来た赤ちゃんです。
ホラー映画として誕生した【ブライトバーン/恐怖の拡散者】は、ブランドンを中心に 超人的な能力と邪悪な本性が出会った時に起こりうる恐ろしい状況を描いています。
特別な能力を持った主人公は、正義のキャラクターとして描かれている通常のヒーロー映画と違い、人類を怯えさせる犯罪を通じ、今まで見たことのない新しい恐怖を見せてくれます。
この映画の一番ポイントは、宇宙から来た子供が地球や人々を守る英雄ではなく、地球を支配しに来た悪役だったら…。をテーマに、スーパーマンを悪役にねじ曲げた点。
スーパーマンが悪役主人公という目新しい要素、緊張感を高める演出とアクション、600万ドルという低予算でこれ程のクオリティーのある映画を作ったという事だけでも、本作を観る価値が十分にあります。
監督と出演者
監督・製作総指揮
【ブライトバーン/恐怖の拡散者】の監督を務めたのはデヴィッド・ヤロヴェスキー。
プロデューサーは【ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー】シリーズ【アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー】、【アベンジャーズ/エンドゲーム】で製作総指揮を務めたジェームズ・ガン。
エリザベス・バンクス
ブランドンの母親トリ役を演じたのは、【スリザー】(2006)、【崖っぷちの男】(2012)、【ハンガー・ゲーム】(2012)シリーズ、【LEGO ムービー】シリーズで知られるエリザベス・バンクス。
米国マサチューセッツ州西部バークシャーの小さな都市ピッツフィールド出身のエリザベス・バンクスは、【Surrender Dorothy】(1998)で映画デビューしました。
サム・ライミ監督の【スパイダーマン】(2002)で演じた意地悪な秘書ベティ・ブラント役で注目を浴びた名バイプレイヤー。
魅力的なオーラを放つエリザベス・バンクスは、ハリウッド映画界でも注目を集め【恋するポルノ・グラフィティ】(2008)、【ブッシュ】(2008)の伝記映画で主演を務めました。
2010年には【30 ROCK/サーティー·ロック】(2010-2012)シーズン4でアレック·ボールドウィンの恋人役に抜擢され、当初4話の出演予定が2シーズン連続で再発キャラクターとして復帰しています。
ジャクソン・A・ダン
邪悪な能力を持つ少年ブランドン役を演じたのは、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴ郡サンディエゴ生まれのジャクソン・A・ダン。
【The Scent of Rain & Lightning】(2017)や【Gone Are The Days】(2018)にも出演するなど期待が寄せられている若手俳優です。
【アベンジャーズ/エンドゲーム】(2019)では12歳のスコット役で出演し、本作が初主演となります。
新たなホラーキャラクターの恐ろしい能力
【ブライトバーン/恐怖の拡散者】は、英雄の起源を覆す破格的な設定で、想像を絶する能力を持ったホラーキャラクターを作りだすことで恐怖を表現しています。
また、異世界から来たブランドンを通じて、ホラー映画史上最強の能力を持つホラーキャラクターを見せてくれます。
両目以外を赤い覆面で覆ったブランドンの存在は、そのビジュアルだけで恐怖を煽ります。
ブランドンの持つ能力は、人間の力では傷付けられない鋼鉄の身体、骨を砕く強力なパワー、そして光のように速い”超高速飛行能力”といったスーパーヒーローに匹敵する絶対的な力で、敵に回せば勝ち目はないと言えるでしょう。
ブランドンは、徐々に自分が平凡な存在ではないと悟り始め、その超人的な力を確認した瞬間に隠されていた邪悪な本性を現し始めます。
ブランドンが強力なパワーを誇示し始めると、父カイルはブランドンを恐怖に感じ”息子”であることも否定し始めました。
このように破壊的な能力と邪悪な本能で、ホラー映画史上最も恐ろしく独歩的な存在感を発揮するブランドンは、歴代級ホラーキャラクターとして名声を博し、新しい存在としての地位を確立するでしょう。
スーパーマンとの違い
本作は、元祖ストーリーである「宇宙船に乗って来た子供の”スーパーマン”」とほぼ類似した設定の作品です。
“スーパーマン”の物語は、宇宙人が地球に来た時に起こり得る状況の中で最も理想的なケースであり、”スーパーマン”は極めて人間的な宇宙人です。
超人的な能力を持っていますが、普通の人間が感じる感情をそのまま感じているので、育ててくれた両親を愛し、女性と恋に落ち、人に対する愛と憐れみを持って人間を救うスーパーヒーローです。
一方で、ブランドンは能力を利用して殺人を繰り返します。
自分を優越的な存在と考え、行く手を阻む者は誰であれ無慈悲に殺します。
共感能力が全くないサイコパス殺人鬼にとって、人間の命は大切ではないのです。
ただ、赤ちゃんの時から両親からの愛情を受け、成長した子供という設定は”スーパーマン”と同じであり、”スーパーマン”が持つ一部の能力を持っています。
しかし、実の両親と養父母の愛が溢れる家庭で育てられた”スーパーマン”は、愛という感情をよく学び、自分が持った能力を社会に献身しています。
ブランドンも両親から愛されて育ったものの、愛の感情をよく学ぶことができないまま、内面に隠されたサイコパスの本性が覚醒してしまいました。
正義ではなく悪の道へ進む
この映画は、DCのヒーロー達の中でも、最高能力値を誇るスーパーマンの<S>希望バージョンを、<B>災難バージョンに変え、ヒーローでありながら悪というジャンルを作りだしました。
なぜ、少年は悪の道へ進むことを選んだのか。
いや、そうではありません。
ブランドンはこの世に誕生した瞬間から、そしてあるきっかけで隠れていた悪しき本性を現わし、悪の道へ進む宿命となっていたのです。
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