公開から30年以上たった今でも多くの人に愛されている【となりのトトロ】。好きなジブリ映画やこどもにみせたい映画でも上位にランクされる「トトロ」の魅力をあらためてご紹介。
【となりのトトロ】作品概要
1988年(昭和63年)に公開された【となりのトトロ】。
当時は宮崎駿監督の盟友、高畑勲監督の【火垂るの墓】(1988)と2本立てでの公開でした。
物語の舞台は昭和30年頃の埼玉県所沢市で、トトロという名前も”ところざわ”から来ています。
そのほか、ネコバスやまっくろくろすけなど個性的なキャラクターが登場し、いまも高い人気を誇っています。
テレビではほぼ2年ごとに放送され、視聴率20%超えが10回。
近年の2回も14%を超えています。
【となりのトトロ】あらすじ
サツキとメイの姉妹はお父さんといっしょに郊外の農村に引っ越してきました。
サツキたちの住む家は古く、ススワタリという真っ黒い妖怪たちが住んでいましが、元気なサツキたちにびっくりして近くの大木へと移っていってしまいます。
田植え休みの日、サツキとメイはお父さんといっしょに入院中のお母さんのお見舞いに行きます。
いつもはしっかり者のサツキも、お母さんの前ではめずらしく甘えた顔を見せるのでした。
ある日、ひとりで遊んでいたメイはモフモフした不思議な生き物を見つけます。
追いかけているうちに森の中へと入ってしまったメイは、そこで大きなトトロに出会います。
トトロのおなかの上で眠ってしまったメイが目覚めると、もうトトロはいませんでした。
お父さんはメイの話を信じ、「いつでも会えるわけじゃないんだよ」と話してくれました。
お父さんが仕事で出かけた日、傘を持たずにでかけたお父さんを迎えに、サツキとメイは雨の中、森のバス停へ向かいます。
するとサツキのとなりにトトロが……。
サツキはずぶぬれのトトロにお父さんの傘を貸してあげます。
そこへ今度はネコバスがやってきました。
トトロは傘を持ったまま乗り込み、そのまま去ってしまいます。
代わりにサツキの手には笹の葉にくるまれた木の実がありました。
その出来事をサツキはうれしそうに手紙に書きます。
あて先はもちろんお母さん。
一方メイは、庭に植えた木の実から芽がでるのを今か今かと待っています。
*
ある夜、木の実を植えたあたりでトトロが踊っていました。
サツキとメイがいっしょに踊り始めると、土から芽が出てあっという間に大きな木になりました。
トトロにつかまって空に舞い上がるサツキとメイ。
翌朝目覚めると、木はなかったけれどちいさな芽が顔をだしていました。
*
夏休みのある日、サツキとメイはとなりのおばあちゃんの農作業を手伝い、メイはトウモロコシを1本もらいます。
週末に一時帰宅するお母さんにあげるんだと上機嫌のメイ。
でもお母さんの体調が悪く、帰宅は延期になってしまいます。
ショックで何も手につかないサツキは、なぐさめてくれたおばあちゃんに泣きついてしまいます。
その姿を見たメイは、トウモロコシを病院のお母さんに届けようとひとり走り出してしまうのです。
【となりのトトロ】ネタバレ
メイがいなくなったことに気づいたサツキは、おばあちゃんやその孫のカンタに協力してもらいメイをさがし始めます。
お母さんのもとへ向かったと考えたサツキは病院のある七国山方面へ走っていきますが、メイを目撃した人は誰もいません。
そこへカンタが、池で女の子のサンダルが見つかったと報告にきます。
サツキは急いで戻りますが、幸いサンダルはメイのものではありませんでした。
村人が総出でさがす中、サツキはトトロのいる大クスノキを目指します。
泣きながらメイを捜してほしいと訴えるサツキの前にトトロが現れ、ネコバスを呼んでくれました。
サツキが乗り込むとネコバスの行き先表示は「めい」になり、風のように走って迷子のメイのもとへと運んでくれました。
メイが、お母さんにトウモロコシを渡したい一心だったことを知り、ネコバスは行き先を七国山病院へと変更。
ふたりは病室の外の松の木の上で、お父さんと笑いながら話しているお母さんの姿をみて安心するのでした。
そして、“おかあさんへ”と彫ったトウモロコシを窓の外側に置くと、ふたたびネコバスに乗っておばあちゃんとカンタの待つ村へと帰って行ったのです。
病室でお母さんは、サツキとメイがそこで笑っているのが見えたと微笑みます。
お父さんは置いてあったトウモロコシを拾い上げ、案外そうかもしれないよと言うのでした。
【となりのトトロ】ここがみどころ
ノスタルジックな風景・みずみずしい世界
公開当時、すでに30年前の物語だった【となりのトトロ】は、大人にとっては懐かしく、子供にとっては初めてみる新鮮な昔話でした。
あざやかであふれんばかりの緑。
様々な表情を見せる空と雲。
そこで暮らす愛らしい生き物たち。
そして、不便だけど人と人との温かな繋がりがありました。
そんな当たり前のかつての日常が、この映画の中には息づいています。
“全肯定”の子育て・理想的な家族
面倒見が良くしっかりしたサツキと好奇心旺盛で行動力のあるメイ。
大人の視点で考えると、とてもバランスの良い姉妹です。
もちろん、サツキだってお母さんに甘えたい。
メイだって、できるって認めてほしい。
そんな子供たちの気持ちをお父さんとお母さんがちゃんとわかってるのです。
それは意外に結構むずかしいことですが、この両親は子供たちを理解しようとしています。
なかでも特に魅力的なのは、お父さんの子育てです。
否定しない。バカにしない。必要以上に深刻にならない。
そして何よりも、子供たちといっしょに楽しむ姿が素敵です。
このお父さんだからサツキはやさしくて芯のしっかりした子で、メイは自由奔放に育ったのだと思います。
エンドロールでは、お母さんが退院してサツキとメイと横になって絵本を読んでいるシーンがあります。
空気の良いこの土地で家族四人、笑ったりはしゃいだり楽しく暮らしているのでしょう。
お父さんの声を担当したのは?
スタジオジブリ作品といえば、プロの声優ではない方をよく使うことでも知られています。
この作品でサツキとメイのお父さん、草壁タツオを演じたのはコピーライターの糸井重里さんです。
飄々として、どこか温かみのある朴訥とした感じの声ですよね。
1980年代サブカルチャーの中心的存在だった糸井さんですが、女優 樋口可南子さんの夫といった方がわかりやすいかもしれません。
糸井さんはこの出演をきっかけに、このあと10本以上ものジブリ作品のキャッチコピーを担当することになります。
【となりのトトロ】/【火垂るの墓】忘れものを、届けに来ました。
【魔女の宅急便】おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。
【紅の豚】カッコイイとは、こういうことさ。
【もののけ姫】生きろ。
【千と千尋の神隠し】トンネルのむこうは、不思議の町でした。
これらのキャッチコピーはすべて糸井さんによるものです。
【となりのトトロ】まとめ
【となりのトトロ】は、【風の谷のナウシカ】(1984)【天空の城ラピュタ】(1986)に続くスタジオジブリ3作目の作品でした。
ファンタジー色の強かった前2作に比べて地味だということで企画は難航したそうです。
結局、【火垂るの墓】との2本立てで公開にこぎつけたといいます。
いま考えるとすごく濃い2本立てですよね。
子供向けの作品で、合計3時間近い映画はちょっと難しかったかもしれません。
今はテレビやDVDなどでそれぞれ観ることができますので、この機会にぜひ ご家族でジブリの名作をお楽しみください。
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© 1988 Studio Ghibli