映画【ロマンスドール】ネタバレとレビュー。
高橋一生と蒼井優が19年ぶりの共演でおくる純愛ストーリー【ロマンスドール】。
2009年に書籍化されたタナダユキの同名小説を、自身が監督を務め実写映画化しました。
タナダユキ監督×蒼井優は、2008年の【百万円と苦虫女】以来のタッグとなります。
この記事では、【ロマンスドール】のネタバレを含むあらすじや見どころをお伝えします。
【ロマンスドール】のあらすじ
北村哲雄(高橋一生)は、美大の先輩の紹介により、ラブドール製作会社で働き始めます。
美術モデルとしてやってきた北村園子(蒼井優)に一目ぼれした哲雄は、気持ちを抑えられずにその日のうちに告白。
2人は交際をスタートさせます。
しかし、医療用の人工乳房製作と偽って乳房の型取りをした園子に、哲雄はラブドール職人であることを打ち明けられません。
本当の職業を隠したまま、2人は結婚します。
しかし、園子もまた、ある秘密を抱えていたことがわかります。
【ロマンスドール】のネタバレ
哲雄の嘘
仕事に追われる哲雄の職場は、怒涛の出来事に襲われます。
ドールの新素材の開発中に、ドール造形士の師匠・相川(きたろう)が急逝。
さらには同業他社のスパイが新入社員として潜り込み、新素材のデータを盗まれてしまいます。
疲弊した哲雄は、園子が健気に夕食の支度をして待っていることに耐えられなくなり、寄り道をして帰るようになります。
そして哲雄は、独身OL・ひろ子(三浦透子)と浮気をしてしまいます。
“ドール職人であること”を隠していたのは、妻を愛するがゆえの嘘、妻を失いたくないからこその嘘でした。
しかし、仕事で追い詰められた哲雄は、浮気という隠しごとをしてしまうのです。
それは裏切り行為以外の何物でもありませんでした。
園子の秘密
誰が見ても良い妻であったはずの園子が嘘をついて外泊し、さらには寂しさからつい1度だけ浮気をしてしまったことを告白します。
「どうせ私たち、離婚でしょ」とうなだれる園子。
哲雄に問い詰められ、ようやく自分が抱えていた秘密を打ち明けます。
園子は胃がんを患っていました。大好きな哲雄の子どもが産めないからと、頑なに離婚を主張していたのです。
「園子と一緒にいたい」と、自分の気持ちを再確認する哲雄。
1度離れかけた2人の気持ちは、ここで再び寄り添うことになりました。
しかし、やがてがんの転移が発覚。
その頃もまだ新しいラブドール開発に難航していた哲雄に、最初の乳房の型取りのように自分を使ってほしい、そして「私を作って」と園子は頼みます。
おそらく園子は、 自分の余命がわずかであることを悟っていたのでしょう。
2人は久しぶりに体を重ね、その後何度も何度も愛を交わします。
やせ細った園子はそれでも哲雄を何度も求め、そしてある日、園子は哲雄の体の上で死を迎えるのです。
現実と向き合う
園子の死後、茫然自失の日々を過ごしていた哲雄は、ある日から取りつかれたように園子のラブドール作りに没頭します。
完成したラブドールを前に、 いくら園子を思って作ったラブドールだとしても、それは園子ではない、ということを実感した哲雄は、園子を思い、激しく泣き崩れるのでした。
”性愛”を純真無垢な愛にみせる演技の見事さ
【ロマンスドール】は、哲雄と園子が体を重ねるシーンが度々登場しますが、不思議なほどいやらしさがありません。
特に、園子が命の終わりを知ってからの夫婦の営みは、切なさから涙があふれてしまうほどです。
おそらくこれは 蒼井優の演技力と表現力のたまもので、哲雄への心からの愛を全身全霊で表現しているから、性愛までもが純粋な愛にみえるのではないでしょうか。
フードコーディネーターは、料理家・なかしましほ
園子は料理上手で、作品内には園子の手料理やお弁当がたびたび登場します。
料理をするシーン自体はあまり出てきませんが、新婚当初はメインのほとんどを園子が作り、サラダのレタスを哲雄がちぎる……というエピソードが登場していました。
フードコーディネーターを手掛けたのは、ナチュラルな料理やお菓子のレシピを多数生み出している人気の料理家・なかしましほ。
料理に関しては、台本から園子の人物像を紐解いて、料理自体はシンプルだけれど味付けに工夫を凝らしたようなものを考案したそうです。
作品内に出てくるのは、 鳥の塩麴焼き、生姜焼き、ピーマンの肉詰め、きのこのさっぱりごはんなど。
忙しい哲雄の体を考えて園子が作った“きのこのさっぱりごはん”は、デリッシュキッチンとのタイアップでレシピ動画が公開されています。
料理は、その人の生活や性格、その時の心情がにじみ出るもの。
作品内の食事や料理に注目してみると、少し違う角度から物語を楽しむことができるかもしれません。
主題歌・劇中歌はnever young beachが担当
出典:www.amazon.co.jp
主題歌「やさしいままで」、劇中歌「ららら」を手掛けたのは、4人組ロックバンドのnever young beach。
高橋一生の弟であるボーカル・ギターの安部勇磨が、作詞・作曲を手掛けました。
タナダユキ監督のオファーを受けて書き下ろされた「やさしいままで」は、バンド初の映画主題歌となりました。
浮遊感のあるメロディに乗せて、優しさと切なさが入り混じった歌詞が歌い上げられています。
【ロマンスドール】の感想
ラブドールという少々ニッチなものを扱いながら、 夫婦のすれ違いの痛みや、愛の再確認と再構築など、夫婦の愛の軌跡を丁寧に描いたピュアなラブストーリーに仕上がっていました。
そして、哲雄が園子を失ったときの「永遠」の使い方が、とても苦しいです。
「永遠に続く」ことなどない。
「もう永遠に起こらない」という使い方が正しい。
つまり「僕が園子を抱くことは、もう永遠にない」という使い方が正しいのだ、と哲雄は悟るのです。
永遠に続くものなどないからこそ、今目の前にある大切な人やものを、真剣に大事にしなければならない……と考えてしまう映画でした。
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©2019「ロマンスドール」製作委員会