【レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語】ハッピーエンドは存在しない。ジム・キャリーの怪演が光る豪華ファンタジックコメディ!

レモニースケットの世にも不幸せな物語
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【レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語】ネタバレと見どころ、考察。大人気児童小説シリーズを原作に、ジム・キャリーが悪役を演じ、アカデミー賞ノミネート・受賞したファンタジックコメディ。孤児になった兄妹を襲う不幸の数々に目が離せない!

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【レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語】あらすじ

物語の主人公は、ボードレール家の3人兄妹のヴァイオレット(エミリー・ブラウニング)、クラウス(リアム・エイケン)、サニー(カラ・ホフマン/シェルビー・ホフマン)。

長女のヴァイオレットは発明家で、髪をリボンで結ったときは発明に夢中になっているとき。

長男のクラウスは大変な読書家で、数えきれない本を読んでは暗記までしている。

そして、末っ子のサニーはまだ幼いが噛むことに関しては、右に出る者はいないくらい何でも強力な歯で噛み砕くことが出来た。

そんな個性的な兄妹は、優しい両親と共に幸せに暮らしていた――あの悲劇が訪れるまでは。

ボードレール兄妹が浜辺に遊びに出かけた日、謎の火事によって自宅が全焼し、両親が亡くなってしまったのだ。

孤児となった3人は、身元引受人のオラフ伯爵(ジム・キャリー)の元へと向かうが、オラフ伯爵は立派な保護者と呼ぶには程遠く、子どもたちを召使いのように扱うのだった。

さらには、ボードレール家の遺産目当てで兄妹3人の殺害を企てる始末!

命からがら逃げだした3人は新しい身元引受人の元を転々とすることになるが、恐ろしいオラフ伯爵はあの手この手で執拗に追いかけて来るのだった……。

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【レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語】ネタバレ

次々と起こる不幸

オラフ伯爵から逃げ出した3人が次に訪れたのは、モンティおじさん(ビリー・コノリー)の家だった。

モンティおじさんは珍獣マニアで、家には様々な生き物が住んでいる。

同じく家族を火事で亡くしたモンティおじさんはとても優しく理解があり、3人はやっと幸せな生活が出来ると安堵したが、その幸せは長くは続かなかった。

変装したオラフ伯爵がやって来て、ヘビに噛まれたことによる事故死に見せかけてモンティおじさんを殺害したのだ。

機転を利かせてオラフ伯爵の企てを見抜いた3人だったが、オラフ伯爵は逃亡。

またもや保護者を失った兄妹は、次の身元引受人であるジョセフィーンおばさん(メリル・ストリープ)を訪ねることに。

崖沿いの古い家に住むジョセフィーンおばさんは、夫を亡くしたことから情緒不安定になっており、家の中は陰気な雰囲気に包まれていた。

暮らしやすい環境とは言えないものの前向きに生活する3人の前に、義足の漁師に扮したオラフ伯爵が再び現れる。

ジョセフィーンおばさんに男がオラフ伯爵だと訴える兄妹だが、オラフ伯爵に言いくるめられたジョセフィーンおばさんは彼に恋をしてしまう。

何とかオラフ伯爵の悪だくみを阻止しようと奮闘する兄妹だったが、ジョセフィーンおばさんは遺書を残して姿を消してしまった。

しかし、悲しむヴァイオレットの横で、遺書の文法間違いに気が付いたクラウスは遺書に隠されたメッセージを読み解く。

ジョセフィーンおばさんがオラフ伯爵の魔の手を逃れ、洞窟で身を隠していることを知った3人は急いで彼女の元へ向かい、怯えたジョセフィーンおばさんを助け出した。

そこで彼女から、彼女の夫やモンティおじさんの家族、3人の両親が昔、謎の火事の真相を追っており、その後全員が死んでいることを知らされる。

奇妙な共通点に気が付いた彼らの前にオラフ伯爵が現れ、彼に騙されたジョセフィーンおばさんは、血を吸うヒルが住み着く❝泣きべそ湖❞の奥深くに沈んでいってしまった。

両親の死の真相

周囲を上手く騙したオラフ伯爵は、再び兄弟の後見人となる。

しかし、遺産を継ぐためには兄妹のひとりと婚姻関係を結ぶことが必要と知り、芝居に見立ててヴァイオレットとの結婚式を画策するのだった。

妹のサニーを人質としてとられたヴァイオレットは絶望の中、オラフ伯爵との結婚に臨む。

あくまで芝居として繰り広げられる舞台は、着々とヴァイオレットとの結婚シーンに向かって進んでいき、その裏ではクラウスが必死に打開策を探っていた。

人質として塔に捕まっていたサニーを助け出したクラウスは、そこで奇妙な窓に気が付く。

その窓は奇妙な目の形をしており、天窓から入った太陽の光が目玉に集まってくるように設計されていた。

窓を覗いたクラウスは、虫眼鏡のように作られたその窓の先に、火事で焼失したボードレール邸が位置していることに気が付く。

兄妹の両親が亡くなった謎の火事は、オラフ伯爵が故意に起こしたものだったのだ。

クラウスは瞬時に機転を利かせ、その窓を使ってオラフ伯爵とヴァイオレットの婚姻契約書を燃やし、観客にオラフ伯爵の悪事の数々を暴露した。

逮捕されて罪に問われたオラフ伯爵だったが、陪審員を買収して判決を覆し、あっという間に姿をくらましてしまった。

そして、再び孤児となった兄妹は、次の後見人の元へと向かうのだった。

消えないオラフ伯爵の影と、新しく残された両親の謎と、わずかな希望を抱いて――。

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【レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語】見どころと考察

ベテラン俳優が繰り広げる奇妙な物語

一風変わった雰囲気の本作では、有名ベテラン俳優たちの”同じく一風変わった演技”の数々を楽しむことが出来る。

まず、ボードレールの兄妹を執拗に追い掛け回すオラフ伯爵を演じたのは、『コメディアンと言えば?』で真っ先に思い浮かぶ俳優のひとりであろう、ジム・キャリー

彼の持ち技でもある多彩な顔芸を遺憾なく発揮しながら、邪悪で不気味、しかしどこか抜けていて滑稽で、不思議と惹きつけられてしまう独特な悪役を演じている。

兄妹に降りかかる数々の不幸を淡々と面白おかしく描く本作、ジム・キャリーが、物語の要であるオラフ伯爵を演じたことで、作品の奇妙な魅力を一段も二段も底上げしているのだ。

ジム・キャリーと言えば、【マスク】(1994)、【トゥルーマン・ショー】(1998)、【エターナル・サンシャイン】(2004)、【ソニック・ザ・ムービー】(2020)など、出演した映画を一瞬にして彼の色で一杯にさせてしまうような、ジム・キャリー以外の配役ではこの映画は有り得なかったと感じるほどに、作品を自分のものにしてしまう力がある。

もちろん、存在感によって映画を潰してしまうという意味ではなく、コメディ、ラブストーリー、ドラマ、ファンタジーなど、どんなジャンルでも違和感なく馴染み、かつ強烈な印象を観客に残していくのだ。

変幻自在に表れては消え、不気味な笑顔を貼り付けたまま、いとも簡単に人を騙して殺してしまうけれど、口達者で人生を存分に楽しんでいるオラフ伯爵。

ジム・キャリー演じた彼こそ、観た人が心を掴まれ、この映画が不思議な立ち位置で心に留まる大きな理由だろう。

他にも、夫を亡くして何事にも怯えながら暮らすジョセフィーンおばさんに、アカデミー賞俳優のメリル・ストリープ

悲しく謎に包まれた過去を持ち、オラフ伯爵とはまた別の意味で予想だにしない行動をとっては、兄妹を翻弄する女性を表情豊かに演じている。

物語の中盤からの登場となるが、彼女によって人間の弱さや複雑さ、したたかさが独特な作風の中でもバランスよく表現されており、映画の魅力層を増やしている。

火事の謎を兄妹に残すシーンは、数々の賞を受賞してきた実力派のメリル・ストリープだからこそ物語に上手く一石を投じ、クライマックスの盛り上がりへの期待感を上げることが出来た。

そして、物語の語り手であるレモニー・スニケットは名優ジュード・ロウが演じているのだから、隠れたところまで粋な作品と言わざるを得ない。

唯一無二の世界観

本作の最大かつ他に類を見ない魅力と言えば、主人公たちに降りかかる不幸せを生き生きと描いている点だろう。

冒頭からラストまで、兄妹を襲う不幸はノンストップでやって来ては物語に彩りを加える。

本作はその不幸を過度にピックアップすることなく、当たり前のように観客に届ける――まるで『これが人生だ』と言わんばかりに。

そのどこか冷たいストーリー展開に、個性的なキャラクター、コミカルな演出とファンタジックな雰囲気が加わることで、唯一無二の独特な世界観を作り上げている。

それはこの映画でしか感じられない感覚となり、その感覚を味わうために何度も再生ボタンを押してしまう、そんな中毒性も併せ持っている。

また、この独特な世界観は衣装やセットなどの美術による力も大きく、より観客が映画に引き込まれるように作られており、第77回アカデミー賞ではメイクアップ賞を受賞した。

ラスト、語り手であるレモニー・スニケットの言葉で締められる本作だが、タイトルにそぐわない希望溢れるナレーションとラストカットが、再び幕が上がることによって『❝人生❞とは簡単にハッピーエンドを迎えることなく、続いていくもの』というメッセージに打って変わる。

最初から最後のタイトルロールまで、一貫したテーマと世界観で紡がれる完成度の高い本作、ぜひこの奇妙な感覚を味わってほしい。

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【レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語】感想

十代の頃に観て、衝撃を受けたこの映画。

原作は児童文学であり、映画もファンタジックコメディとして製作されているが、終始、人生に対する冷ややかさを感じる。

しかし同時に、ハッピーエンドを望み続ける人間の可笑しさを笑いつつも、とても優しく描いている印象も受ける。

それこそ本作の真意なのではないかと思う。

現実においてハッピーエンドはほとんど存在しない、何故なら人生は良い事も悪い事も経験しながらずっと続いていくから。

そしてどんな最期を迎えようと、ハッピーエンドかバッドエンドかと判定するのも難しい――それまで生きてきた人生があるのだから。

人はハッピーエンドや幸せを望み続け、夢や絆や愛といった不確かなものの中に希望を見いだそうとする。

それは滑稽かもしれないが、すごく人間らしいとも思う。

「怪物はお前たちだ」

作中、正体を見破られ非難されたオラフ伯爵が、大人達に吐くこの言葉。

子ども達が助けを求めても耳を貸さなかったことを突いた一言だったが、私はこのシーンが大好きだ。

一見目立たないけれど確かに存在する❝小さな悪❞も、その存在に気付いていたオラフ伯爵も、映画の悪役や端役を超えてすごく人間らしく映るし、人は様々な面を兼ね備えているのだと思わされる。

子ども向け映画と侮るなかれ、凝り尽くされた世界観と美術に魅了され、実力派俳優陣による奇怪な演技を楽しみ、人生を冷静に見つめたテーマ性に驚き、そして数々のファンタジックな不幸を心ゆくまで楽しむことが出来る。

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