映画【インセプション】あらすじと解説。9月に公開予定の【TENET テネット】に期待が高まる中、クリストファー・ノーラン作品が続々とリバイバル上映をしています。今回はその第3弾となる、第83回アカデミー賞にて4部門を受賞し、トム・ハーディを世界的に知らしめた作品ともいえる【インセプション】についてご紹介です。
【インセプション】のあらすじ
コブ(レオナルド・ディカプリオ)は、煌びやかな和室にて相棒のアーサー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)とともにサイトー(渡辺謙)の夢の中に入り込み、ターゲットから情報を盗み出す産業スパイ「エクストラクト」について話していました。
心を開いてくれればサイトーを守るというコブの提案は却下されてしまいますが、本当の目的はサイトーの機密情報を抜き出すことでした。
金庫から情報の書かれた封筒を盗み出すコブですが、「ここが夢の中である」と理解しているサイトーと、謎の女性に阻まれアーサーが人質になってしまいます。
女性に足を撃たれ痛がるアーサーの頭を撃ち抜いたコブは、夢の主であるアーサーが消えたことにより途端に不安定になる屋敷の中を情報を持って逃げ回ります。
暴動が迫る街の一室にて目覚めたコブ・アーサー、仲間のナッシュ(ルーカス・ハース)はサイトーから情報を得るために脅すものの、なんとその場所も夢の中だと気づかれ失敗。
日本の新幹線でエクストラクトを実行していたのでした。
依頼は失敗。
コブは、依頼主であるコボル社から逃げようとブエノスアイレスへ向かうため、ホテル屋上のヘリポートからアーサーと共にヘリに乗ろうとすると、中に乗っていたのはサイトーで……。
【インセプション】の見どころ・ネタバレ
複雑かつ魅惑の世界へ
ホルヘ・ルイス・ボルヘス著の【伝奇集】から着想を得て、ノーランが構想期間約20年・脚本に8年を費やした映画【インセプション】。
インセプションの依頼主である日本人・サイトーは、日本が世界に誇る俳優 渡辺謙が演じました。
新幹線や東京の街並みがシーンに出てくることもあり、日本でもノーラン作品といえば本作を挙げる方も多いかと思います。
構想・脚本ともに期間が長いことからもわかるように、大変複雑な内容となっており、インセプション時の夢は第4階層までになっています。
そのため、いろいろな場面がカットバック(同時進行のシーンを交互につなぐこと、【ダンケルク】(2017)なども同様)で描かれているので内容に引き込まれ、のめり込むこと間違いなしの映画です。
超難関ミッション「インセプション」とトリビアたち
これはターゲットの夢の深くへ潜らなければならず、潜れば潜るほど夢の世界が不安定になること、仮に植え付けたとしてもアイディアが育たず失敗に終わることも多いことから不可能なミッションだと言われているもの。
本編に登場する人物たちの名前にも色々な意味やオマージュがありそうで、主人公であるコブはノーラン監督のデビュー作【フォロウィング】(1998)の中に登場する泥棒・コブを引き継いだのではないかと言われています。
また、サンスクリット語では「夢」を意味し、キリスト教を踏まえるとヤコブに由来するのではと考えられています。
彼の妻であるモルことモリー(マリオン・コティヤール)はギリシャ神話の夢を司る神・モルペウスが由来ではないかなど、かなり宗教にまつわる由来が多そうです。
ちなみに主要人物たちの頭文字をつなげると「DREAMS(夢)」という言葉になるのは有名な話。
ノーラン監督のきめ細やかさが現れていますね!
コマは止まるのか?
いろいろな意見が飛び交うのがラストシーン。
子どもたちとの再会を果たしたコブは、夢か現実かを見極める道具「トーテム」(コブのトーテムはコマ)をテーブルの上で回します。
夢の中ならコマは回り続け、現実なら止まってしまうというものですが、回っているシーンのまま本編は終わってしまいます。
果たしてまだ誰かの夢の中なのか現実なのか?という結末は視聴者に委ねられるわけですが、マイルズ教授役を演じているかのサー・マイケル・ケインはBBCラジオにて「コマは最後に倒れるよ。夢に1度も出ていない私が最後に登場しているということは、あれは現実だということだ。」と発言していました。
そもそもコマは妻・モルのものであり、以前から夢に潜っていたコブのトーテムは別で、それは結婚指輪なのではないかなどいろいろな考察があります。
ノーラン監督はというと「最も重要なことは、あのシーンでコブがコマを見ていないということだ。あの時彼は、コマではなく子供たちを見つめていた。コブはコマを捨てた、ということなんだ。」との発言をしていることから、夢や居場所に囚われず、”自分が何をしたいのか”という欲求が大切である、というメッセージが伺えます。
しかし気になるラスト。
答えを知っているのはノーラン監督だけ。
【インセプション】まとめ
複雑怪奇ではあるものの、あまりの斬新さに目を疑いますが、なんとこの映画は2010年公開ということで2020年の今年で10周年を迎えます。
CGを好まないノーラン監督が、大掛かりなセットを実際に回転させながら第2階層のアーサーが敵と戦うシーンの撮影を行っているなど、リアリティを追求した方法を取っています。
深い階層にてかかる印象的な音楽については、夢から現実に戻る合図に使用していエディット・ピアフの「水に流して」を低速度で逆回転させた音とのこと。
スタッフロール時にも流れるため、わたしたち視聴者側も「夢から醒めろ」と言われているような耳に残るBGMだと思います。
ちなみに第4階層の虚無ですが、単語としてはキリスト教用語の「Limbo(辺獄)」というもので、「洗礼を受けていない人間が死後、永遠の地獄に定められず行き着く場所」とのこと。
ダンテの「神曲」では地獄の第4層目に当てはまることから本作でも第4階層目が割り振られているのかもしれません……。
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