映画【セルラー】は、2005年に公開されたクライムスリラー。犯罪に巻き込まれて誘拐された高校教師と、彼女から電話を受けた青年が、携帯電話の通話だけを頼りに事件を解決していく姿を描いています。
あらすじ
高校で科学を教えている教師ジェシカ・マーティン(キム・ベイシンガー)の平和な人生は、正体不明の5人の不審者によって連れ去られた日から崩れ落ちました。
ジェシカは、危機を脱する為 壊れた電話機を使って無作為に電話をかけている途中、失業者の青年ライアン(クリス・エヴァンス)と繋がります。
ライアンは、ジェシカを助ける為に孤軍奮闘を始めるのですが……。
監督とキャスト
監督
【セルラー】のメガホンを取ったのは、【デッドコースター】(2003)の故デヴィッド・R・エリス監督。
【デッドコースター】以降は【スネーク・フライト】(2006)や【ファイナル・デッドサーキット 3D】(2009)がありますが、本人のフィルモグラフィの中で最も目立つ作品が、まさにこの映画【セルラー】です。
クリス・エヴァンス
誘拐されたジェシカ一家救出に奔走するライアン役を演じたのは、アメリカ・マサチューセッツ州の出身で、MCUシリーズの「キャプテン・アメリカ」で知られるクリス・エヴァンス。
本作では撮影が始まる前にロサンゼルスのスタントスクールで5週間の訓練を受け、自らスタントをこなしています。
キム・ベイシンガー
【セルラー】で、悲劇のヒロイン・ジェシカ役を演じたのは、アメリカ・ジョージア州出身の女優キム・ベイシンガー。
1977年の映画【女刑事J・Jケーン】でデビューし、以降【バットマン】(1989)、【あの日、欲望の大地で】(2008)、【フィフティ・シェイズ・ダーカー】(2017)などに出演。
また、1997年の映画【L.A.コンフィデンシャル】では、アカデミー助演女優賞を受賞しました。
ジェイソン・ステイサム
本作で、ジェシカを誘拐したグループのリーダー・イーサン役を演じたのは、イングランドダービーシャー州出身のジェイソン・ステイサム。
代表作は【トランスポーター】(2002)シリーズ、【エクスペンダブルズ】(2010)シリーズ、【メカニック】(2010)シリーズ、【ワイルド・スピード】シリーズ(2013~)など。
本作でステイサムは悪役を演じており、これまで彼が演じてきた誰かの為に闘うヒーローというイメージを覆す役どころとなっています。
ガラケーで犯人を追え!
電話(ガラケー)だけで犯人を捜し出して捕まえるという、ありがちながらも新鮮で目が離せなくなります。
また、映画公開から十数年経過しているにも関わらず、構成も映像技術も現代と引けを取らず、テンポも良く中だるみもありません。
手に汗握るスリル感はもとより、さらなる緊迫感を煽るBGM。
自己中心的な若者、動揺して狂気じみた母親、引退間近のベテラン警察官、そして警察という肩書きの悪党達。
冒頭からラストまでド派手なアクションは止まる事なく、特に敵との対決シーンは刺激的かつ圧倒的で、深く印象に残ります。
クリス・エヴァンスの魅力
MCUのヒーローシリーズによって、世界中の誰しもが知るハリウッドスターとなったクリス・エヴァンス。
映画【セルラー】が公開された2004年はクリス・エヴァンスという俳優の知名度は低かったものの、ジェシカ一家を救うため悪党に立ち向かっていく姿は、まさにキャプテン・アメリカをほうふつさせるもので、後にヒーローとなる姿が垣間見られるのも本作の見どころのひとつとなっています。
彼にとって現実的な英雄談を繰り広げた作品がまさにこの映画で、恐ろしい状況下に緊迫さを増幅させる演技は圧巻です。
映画で登場したポルシェ
映画【セルラー】では、様々な車が登場していますが、中でも印象に残るのが”危機状況である事を知らずに主人公をからかった弁護士が自分の愛車を奪われた”場面です。
このシーンに登場したのは、ポルシェ911のラインナップモデルで、正確には”ポルシェ911カレラカブリオレ996“。
ポルシェ996系911は”901″の名で誕生し、以後34年にわたって生産された空冷911の後継車であり、初の完全フルモデルチェンジ車として1997年秋にデビューしました。
996シリーズは、従来の空冷エンジンから水冷エンジンに変わったのが大きな特徴であり、初代ボクスターと多くの部品を共有しています。
歴代911シリーズの中でも、不人気車というレッテルを貼られたものの、長年ポルシェ一筋で愛して来たエンスージアストや、クラシック・ポルシェに関わるディーラーなど、”ポルシェ識者”とも呼ぶべき諸氏の間では、<996シリーズこそ次世代の注目モデル>という見方がされています。
日本で”涙目”、英語圏では”Fried Egg”などと呼ばれ、敬遠されがちだった初代ボクスターと共通のフェイスについても、誕生から四半世紀以上を経た今となっては、”ヤングタイマー・クラシック”と呼ばれる1980-1990年代の高揚感を体現した独自の個性として評価されつつあります。
最も、996シリーズで何より注目すべきなのは、ポルシェ911としての矜持がドライブフィールにも体現されている点。
また、997後期以降に搭載される直噴フラット6のエキゾーストノートが、野太さや迫力を強調したものとなったのに対し、996のポート吸気フラット6は往年のレーシング・ポルシェを連想させるような甲高いサウンドを響かせています。
4世代まで維持されていた既存の空冷式方式から水冷式に転換し、革新を成し遂げたモデルですが、急変したエクステリアデザインの為、良い評価を受けられなかった悲運のモデルでもあるのです。
996シリーズの開発当時、水冷化によって「ポルシェらしさが失われた」と、批判が殺到する事を恐れたポルシェ技術陣は、第6世代である2004年型からは少々やり過ぎとも感じられる程”ポルシェらしさ”や“911らしさ”にこだわったようです。
携帯電話の重要性
映画の題名である【セルラー(Cellular)】とは、無線電話機、携帯電話を指し、携帯電話を通じて、事件を解決するという意味。
セルラーの核心は携帯電話であり、携帯電話を素晴らしいメリット(緊急使用、携帯性、デジタル写真など)と、迷惑なデメリット(不適切な時間に鳴るもの、クロスコネクト、信号消失、バッテリー切れなど)を全てリストアップして、両方の性能をストーリーに取り入れています。
「俺の携帯は履歴が50件残る」「最新の携帯だから動画機能がある」と言ったライアンの台詞から、時代を感じさせる場面があります。
そのような台詞から、映画の中での時代の携帯は物語の鍵となるのに、丁度良い”アナログ”だと考えさせられました。
更に、アナログの携帯電話という低機能だからこそ、ライアンの奮励と機転が際立ったのでしょう。
あくまでも、主役はライアンの起こした行動であり、携帯電話はアシスタント要因であるという明確な役割を果たしています。
もしこれが現代のスマートホンであったならば、頭脳戦の応酬によりスマートホンがメインとなり、ライアンが起こした努力は目立たなかったと言えるでしょう。
この映画で、重要なアイテムであるライアンの携帯電話。
そして、登場するのはスマートホンではなくガラケーです。
小さな画面で動画を撮影し「最近の携帯電話って凄い」と絶賛するシーンも見られ、あのコンパクトなサイズ、ボタンを押す度に聞こえるカチカチ音や、ワンセグ、メガピクセルカメラなど、時代の懐かしさを感じさせてくれます。
非現実的だからこその魅力
本作は、たった1本の着信から犯罪に巻き込まれるというスリラー映画です。
近年では技術も発達し、犯罪に使われることも多くなった”通信機”となりつつあるスマートフォン。
現代ではGPSを初めとする様々な機能が備わっており、犯罪を未然に防いだり犯罪者摘発にも役立っているかもしれません。
当時ガラケーは画期的な機器ではありますが、それが現代で通用するかどうか……。
セキュリティの面でも、誰かもわからない人からの声だけを聞いてその人を救うというのは、近年に見られる警戒心からも現実的には非常に難しいでしょう。
しかし、現代だからこそ感じる非現実的なストーリーには惹かれるものがあり、最後まで見届けたくなるのが本作。
特にスマートホン世代の方には知って頂きたい作品でもあります。
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