日本のアニメの凄いところは、子どもだけでなく大人が見ても十分楽しめるクオリティの高さです。そのことは、世界中で日本のアニメが親しまれていることや、アニメがドラマや映画で実写化されるといったケースからも証明されています。
日本のアニメは、娯楽作品から小説のような題材を扱っているものまで、テーマの多様性には驚かされるばかりです。
今や日本だけでなく世界中に注目されているアニメですが、今回はそんな中から日本が世界に誇ることのできるとっておきのアニメ映画を5作品ご紹介します。
「ルパン三世 カリオストロの城」
作品解説
【ルパン三世 カリオストロの城】(1979) は、監督が【風の谷のナウシカ】(1984) で知られる宮崎駿、原作は同作品で有名な漫画家のモンキー・パンチです。
ルパン三世の映画はこれまで数多く撮られてきましたが、その中で最も評価が高いの作品が【ルパン三世 カリオストロの城】です。
この映画は、最初からラストまで内容の完成度の高さはさすがのひと言。
ただ、これは好みの問題でもあるのでしょうが、映画ではルパン三世が少しいい人物すぎて、本来のルパン三世のキャラとは少し違うのではないかという違和感はあります。
この作品の中のルパン三世は大泥棒というより、まるでお姫様を救う王子様のように見えます(実際にはそういうストーリーです)
ルパン三世といえば、女性にだらしなくて少し軽いといった、ちょっといい加減だけども憎めないキャラというのが魅力なのですが、この映画ではそうしたキャラは封印されているかのようです。
また、今回の映画では峰不二子の出番が少なく、お色気もほとんど見られないことから、峰不二子ファンにとっては少しがっかりかもしれませんね。
基本情報
公開・製作国:1979年 日本
キャスト:山田康雄、小林清志、井上真樹夫、増山江威子、納谷悟朗
配給:東宝
原作:モンキー・パンチ ©TMS
Rotten Tomatos
批評家の評価|95%
オーディエンス評価|88%
「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」
作品解説
【うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー】(1984) の監督は、【GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊】(1995) などを手がけた押井守、原作が漫画家の高橋留美子です。
この映画の最大の魅力は、もともとスラップスティック色の強いギャグと恋愛がミックスされたストーリーに、シュールな映像を盛り込んだことです。
こうした夢落ちともいえるシュールな映像というのは、使い方を間違えるとやや嫌味に映ることもあるのですが、作品全体のストーリーと違和感なく挿入する押井守のセンスはさすがです。
そういう意味では、【うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー】(1984) がアニメ映画に与えた影響力というのは小さくなく、この映画のおかげで後のアニメが表現の幅を拡げたともいえます。
また、今回の映画のもう一つの魅力は、脇役のキャラがいつにもまして存在感を表していることです。
中でも脇役の一人であるメガネがシュールな世界について語っている存在感は特筆すべきです。
基本情報
公開・製作国:1984年 日本
キャスト:古川登志夫、平野文、鷲尾真知子、藤岡琢也
配給:東宝
公式サイト:————–
©高橋留美子/小学館
Rotten Tomatos
批評家の評価|–%
オーディエンス評価|91%
「カウボーイビバップ 天国の扉」
作品解説
【カウボーイビバップ 天国の扉】(2001) は日本のSFアニメ作品で、監督はテレビ版も手がけた渡辺信一郎、音楽はテレビ版でのオープニングテーマが出世作となった菅野よう子です。
日本で【スターウォーズ】(1977) のような娯楽作品をなかなか作れないのは、予算やスケールの違いなどといった事情がありますが、アニメなら【スターウォーズ】 に負けず劣らない面白さといえるのが今回の作品です。
監督の渡辺信一郎がそれまでやれなかったことをこのアニメにぶち込んだと言う通り、【スターウォーズ】 や【ブレードランナー】(1982) 的な世界観を背景に、賞金稼ぎが主人公のSFをベースにしたハードボイルドアクションというだけあって、アニメにさほど興味を持たない人でも十分に楽しめる娯楽作品になっています。
また、タイトルからも分かるように、作品の中で使われている音楽のセンスはなかなかのものです。
テレビ版もそうですが、映像と音楽のセンスと恰好の良さはアニメの中でも群を抜いています。
なお、日本のアニメが海外で評価され実写版になることが近年よくありますが、この作品もハリウッドでドラマ実写化され、2021年秋にはNetflixでオンエアされるようです。
基本情報
公開・製作国:2001年 日本
キャスト:山寺宏一、石塚運昇、林原めぐみ、多田葵
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©サンライズ
Rotten Tomatos
批評家の評価|64%
オーディエンス評価|90%
「時をかける少女」
作品解説
【時をかける少女】(2006) は筒井康隆の同作品を、【サマーウォーズ】(2009) などで知られる細田守監督が手がけた作品です。
日本のアニメ作品の独特なジャンルに学園ものがありますが、学園ものにSFやミステリーなど様々な要素をミックスさせてきたというのも、日本のアニメが幅広く支持されてきた要因の一つです。
【時をかける少女】(2006) もタイムリープというSF的な題材と、17歳の多感な高校生の日常生活をうまくミックスさせることで、単なるSFものではなく学園ものとしてもよくできた作品になっています。
また、この作品は細田守監督の描く風景の美しさも素晴らしいものがあり、色彩の美しさと主人公である高校生の紺野真琴の多感に揺れる心象が見事にマッチしています。
アニメの作品が一般の人にも見られるようになるには、どこか共感できる部分が必要なのですが、この作品は普段アニメを見ない人でも十分共感できますし、主人公と同じ青春真っ盛りの人や、かってそうだった人が見ても楽しめる作品です。
基本情報
公開・製作国:2006年 日本
キャスト:仲里依紗、石田卓也、板倉光隆、原沙知絵
配給:角川ヘラルド映画
公式サイト:https://tokikake-4dx.com/
©「時をかける少女」製作委員会2006
Rotten Tomatos
批評家の評価|83%
オーディエンス評価|90%
「この世界の片隅に」
作品解説
【この世界の片隅に】(2016) は、原作が漫画家のこうの史代、監督は【マイマイ新子と千年の魔法】(2009) の片渕須直です。
【この世界の片隅に】(2016)は、当初ミニシアターで上映された作品でしたが、注目されるや日本だけでなく世界の60以上の国や地域で上映されるという、まさに日本が世界に誇れる作品です。
戦争を描くというのはなかなか難しいことで、イデオロギー的な視点から描かれる危険性が常にありますし、そういう視点で戦争を描こうとすると、どうしても抜け落ちてしまう部分があります。
この映画を観て素晴らしいのは、戦争中も普通に暮らしている市井の人々の日常が淡々と描かれていることです。
戦時中であっても生活者としての視点が最後までぶれていないというのが、この作品の最大の魅力です。
戦争や軍隊をメインにした映画を見ると、この時代は特殊だったのではないかという気がしてならないのですが、この映画を見ると、その日その日をたくましく生きる普通の人達の考え方や暮らしというのは、今も昔も変わらないということを痛感させられます。
基本情報
公開・製作国:2016年 日本
キャスト:のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞
配給:東京テアトル
公式サイト:https://konosekai.jp/
©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
Rotten Tomatos
批評家の評価|–%
オーディエンス評価|89%