アカデミー賞6部門にノミネートされ、賞レースを賑わせるNetflix配信作品【マリッジ・ストーリー】のネタバレあらすじと感想。
円満離婚を望んでいたはずの夫婦が、壮絶な離婚劇に陥ってしまう様子を描いたヒューマンドラマです。
第92回アカデミー賞では、作品賞・主演男優賞・主演女優賞など6部門にノミネート。
Netflixで限定配信されているほか、アップリング渋谷・吉祥寺などの数館で上映されています。
この記事では、【マリッジ・ストーリー】のネタバレを含むあらすじ、見どころ、感想をお伝えします。
【マリッジ・ストーリー】のあらすじ
女優のニコール(スカーレット・ヨハンソン)と、舞台監督のチャーリー(アダム・ドライバー)は、離婚を控えた夫婦です。
元々映画女優として活躍していたニコールは、チャーリーと出会い、彼が主宰する劇団の舞台女優へと転身。
そして2人は結婚してヘンリーという息子を授かり、幸せな生活を送っていたかに見えました。
しかし夫婦の関係はこじれ、今は離婚に至っての話し合いの最中。
まだ8歳のヘンリーのことを思い、2人とも円満離婚を望んでいました。
しかし、ニコールが離婚弁護士のノラと出会ったことで、事態は思わぬ方向へ。
外部の人間を巻き込んだことで事態は深刻化し、泥沼の離婚劇へと発展してしまうのです。
【マリッジ・ストーリー】の見どころ・ネタバレ
心の内に秘めていたニコールの不満
当初ニコールは、離婚調停員に多くを語ろうとはしていませんでした。
しかし、自身も離婚経験がある弁護士・ノラと出会ったことで、これまで心のうちに秘めていた不満やわだかまりが引き出され顕在化。
ずっと自分の気持ちに蓋をしていたことで、おそらくそれは本来のものから何倍にも増幅し、決壊したダムのように溢れ出ます。
ニコールがノラに語った、チャーリーに抱いていた不満・離婚の原因は下記のようなものでした。
・自分は夫の所有物、夫に支配されているだけと思った・夫は独立した人間として自分のことを見ていないと感じた・自分の居場所が欲しかった・LAのテレビ出演のオファーがきた話を夫にしたところ、からかわれ「出演料を劇団の資金に回せ」と言われた・夫は主宰する劇団の舞台主任・アンと浮気していた
泣きながらこれらを語るニコールに、ノラはチャーリーのことを“クソ野郎”と一蹴。
人に話すことで自分の気持ちを整理できればよかったのでしょうが、いかんせん、話した相手は離婚弁護士。
弁護士は依頼人に有利になるように事を進めるのが仕事ですから、円満とは真逆の離婚裁判へと進み、要はニコールからチャーリーへ”宣戦布告”をする形になってしまったのです。
良き夫・良き父であったはずのチャーリー
チャーリーは才能あふれる新進気鋭の舞台監督として劇団を支え、女優である妻も自身の劇団で活躍。
家庭においても、少々自由奔放でチャーミングな妻を支え、家事も率先して手伝い、息子のこともとびきり可愛がっています。
しかし、言葉の端々から 妻を自分の目の届くところにおいておきたい、妻の独立した活躍は認めたくないという気持ちも感じられます。
離婚自体も2人のすれ違いとは理解しつつ、やや投げやりで早く済ませたいという様子に見えなくもありません。
そこに、円満離婚の方向で合意していたはずの妻ニコールから裁判書類を渡されたわけですから、チャーリーにとっては晴天の霹靂であり、妻からの裏切りとも受け取れるでしょう。
ちょうど劇団がブロードウェイに進出するという多忙の時期に、親権を得るためにニューヨークとLAを行き来し、時間を作っては息子と遊び、弁護士探しに奔走する日々。
しかし、現状では親権を得ることは難しいということがわかり、チャーリーは日に日に疲弊し、追い込まれて苛立っていきます。
追い込まれた2人の、言葉による壮絶の殴り合い
弁護士の介入により事が大きくこじれたため、2人は改めて話し合うことにします。
しかし、話し合いの糸口すらうまく見つからず、相手の言動の小さなほころびをつついて責め立てた結果、怒鳴り合いの壮絶な口論になってしまいます。
相手の死まで願うような暴言を吐き、そんな言葉を投げた自分に傷つき、自分を深く責めて泣き崩れるチャーリー。
2人はもう後戻りできないところまで到達してしまいました。
この口論のあと、ニコールが父としてふさわしいかどうかを調べに、調査員がニコールの家を訪れます。
そこでも父子の良い関係を見せられなかったニコールは、ひどく疲れ落ち込むのでした。
【マリッジ・ストーリー】の感想・評価
靴紐が表す2人の関係と未来に涙する
結局、ニコールは息子ヘンリーとともにLAに移り住むことが認められ、チャーリーがLAに滞在している間の親権はほぼ同等になりました。
離婚後、ニコールは監督としてエミー賞にノミネートされます。
複雑な心境で受け止めるチャーリーですが、離婚後の2人には穏やかな空気が流れているように見えました。
ラストシーン、ニコールがチャーリーの靴紐がほどけていることに気づき、ごく自然な仕草で結び直します。
この自然さが2人の結びつきの強さを表しており、さらに ”靴紐を結ぶ”という行動が、2人のこれからの関係を結び直しているようにも思えました。
2人は、夫婦としては終わったけれど、目に見えない強い絆で今もつながっている“同志”のような存在であるように感じます。
これからも2人は夫婦とは異なる”愛”の形で結ばれ続け、そして息子ヘンリーの両親として関係を保ち続けるのでしょう。
圧倒的な演技力と巧妙なプロットは脱帽モノ
本作には長台詞、長回しのシーンが多数登場します。
特に、感情を高ぶらせたニコールとチャーリーが言い争いになる終盤のシーン。
まさに2人の演技合戦といった具合で、スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーでなければ、この映画は成立しなかったと言ってもいいほどです。
本作は全体を通して過剰な演出はほとんどなく、会話劇メインでストーリーが進んでいくのですが、この2人の口論のシーンは思わず息をのんでしまうほどの迫力とリアルさが感じられ、見ていて苦しくなるほどのものでした。
離婚や結婚の経験はないとしても、ちょっとしたボタンの掛け違いから事態がどんどん悪化し、思ってもいなかった言葉を相手に吐き後悔する、という経験を持つ人は多いのではないでしょうか。
この作品は、 俳優陣の圧倒的な演技力と巧妙なプロットのもと、長回しと長台詞を駆使した会話劇によって、人間関係のリアルを見事に表現しているのです。
第92回アカデミー賞で、作品賞、主演男優賞、主演女優賞、助演女優賞(弁護士ノラ役のローラ・ダン)、脚本賞、アカデミー作曲賞の6部門にノミネートされているのも頷けます。
近年良作を多数生み出しているNetflix作品の受賞は一体どうなるのか、賞レースの行方が気になるところです。
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