製作国:アメリカ合衆国、イギリス
監督:
クリストファー・ノーラン
ジャンル:アクション
原題:The Dark Knight
キャスト:
クリスチャン・ベール
、ヒース・レジャー、マイケル・ケインVOD:[U-NEXT] [hulu] [Netflix][Prime Video]
バッドマンのシリーズだけでなく、数ある映画の中でも史上最強の悪役といわれるのが、映画「ダークナイト」に登場するジョーカーです。
この映画を面白いものにしているのは、単にヒーローが悪者をやっつけるだけの映画ではないということですが、観る者にそのことを強烈に印象付けるのは、ジョーカーの存在といってもいいでしょう。
そこで今回は、ジョーカーとは一体何者だったのか、そして何がしたかったのかということをメインに解説します。
あらすじ
道化師のマスクを被った男たちが銀行を襲撃しましたが、仲間同士の撃ち合いから最後に残ったジョーカーがマフィアの資金を奪って逃走しました。
一方で、ゴッサム・シティのジム・ゴードン警部補は、バッドマンと共に犯罪組織の撲滅を行ってきましたが、ここに新任の地方検事ハービー・デントが協力を申し出ます。
ハービーこそ真のヒーローだと考えた、バッドマンこと大富豪のブルース・ウェインは、彼の選挙支援を行おうとしますが、ハービーはブルースが思いを寄せているるレイチェル・ドーズと付き合っていることを知って複雑な心境になるのでした。
その後、銀行強盗から自分たちの資金源が露見したマフィアは会合を開きますが、そこに当事者であるジョーカーが現れ、残ったお金を半分渡すのならバットマンを殺すと提案します。
そのことに腹を立てたマフィアのボスの一人は、懸賞金を賭けてジョーカーを殺害しようとするのですが、逆に返り討ちに合っただけでなく、バッドマンによってマフィアの多くが逮捕されたことから、残ったマフィアはジョーカーの提案を受け入れるのでした。
ジョーカーは、バッドマンが正体を明かすまでは市民を殺し続けると宣言し実行に移します。そしてその危険がレイチェルにまで迫ったとき、ブルースは正体を明かそうとするのですが、翌日の記者会見でハービーは自分こそがバッドマンだと宣言するのでした・・・
ジョーカーとは何者なのか?
史上最強の悪意ともいわれるジョーカーですが、彼がそれまでの悪役と異なるのはどういったところでしょうか?
まず、今回の映画でジョーカーを演じているのは、映画「ブロークバック・マウンテン」にイニス・デルマー役として出演したヒース・レジャーです。
ヒース・レジャーは、ピストルズのシド・ビシャスといったキャラを参考にして、ジョーカー独特の声や笑い方を作り上げるために1か月間、ロンドンのホテルに一人きりで閉じこもっていたそうです。映画の中で観ることのできるジョーカーの狂気というのも、こうした役作りから生まれたといってもいいでしょう。
また、トランプのカードのジョーカーは、通常のゲームでは無用の存在であるばかりか、ババ抜きでは最悪のカードになりますが、その一方でポーカーでは最強のワイルドカードにもなります。
そして、ジョーカーのカードには道化師が描かれていることが多いですが、道化師というのは人から笑いものの対象になる反面、社会の秩序から外れた存在ともいわれています。
映画「ダークナイト」に現れるジョーカーは、現代の道化師ともいえるピエロのメイクに扮し、指紋やDNAの情報がデータベースにないという謎の存在です。
それだけでなく、自分から手を下すだけでなく、人の心を揺さぶって闇の世界へと引きずる冷酷な犯罪者というのも、カードのジョーカーのように一筋縄ではいかないダークな存在といえるでしょう。
ジョーカーは何がしたかったのか?
映画「ダークナイト」で、ジョーカーがこれほど冷酷な犯罪を行う理由というのは何かということも、この映画を観るポイントの1つです。
ジョーカーが犯罪を行うのは、お金目的でもなく、誰かに恨みをいだいたからというのでもありません。
そんなジョーカーにバットマンやゴードンは、最後まで翻弄されているかのようです。映画を観ていると、常にジョーカーの方が彼らの一歩先を進んで犯罪を行っているかのようにも見えます。
こうしたジョーカーの予測不可能な犯罪に振り回されてしまうのは、まさにジョーカーの目的が何なのかということが見えてこないということがあるでしょう。
そして、常に正義を翻弄するジョーカーですが、正義のヒーローと思われたハービー・デントをそそのかして、悪のトゥーフェイスとして操ることに成功します。
こうしたジョーカーの姿を見ていると、正義の側にいるバッドマンや警察に揺さぶりをかけ混乱に陥れるのを楽しんでいるかのような、狂気をはらんだ劇場型の知能犯のようです。
ですが、バッドマンとジョーカーの関係というのは、映画の中でハービーがしばし行うコイントスの、コインの表と裏の関係のようなものでしょう。
ジョーカーが映画で「バットマンがいないと俺は完成しない」と述べていますが、バットマンという正義がいるからこそ、自分の悪もまた強烈なインパクトを与えるのだという、単なる悪の姿だけでなく、正義の持つパラドックスも描いたのがこの映画の最大の魅力といえるかもしれません。