【すばらしき世界】ネタバレと感想。「ゆれる」「永い言い訳」などの西川美和監督が、実在した人物をモデルにした小説「身分帳」を映画化した本作。舞台を昭和から現代にうつし、人生の大半を裏社会と刑務所で生きてきた男の再起物語です。主人公が社会で生きていこうと奮闘する姿が心に刺さる作品になっています。
あらすじ
殺人罪で13年の刑期を終えた三上正夫(役所広司)は、まっとうに生きることを決意して旭川刑務所を出所しました。
三上はまず、東京にいる弁護士の身元引き受け人(橋爪攻)の元へ向かいます。
後日、三上はテレビ局に母親を探してほしいと自分の「身分帳」を送ると、吉田(長澤まさみ)と津野田(仲野太賀)がネタとして面白おかしい番組にしようと近づいて来ました。
しかし、三上の壮絶な過去や社会に復帰しようと悪戦苦闘する姿に、津野田は番組とは別に三上のことを心から応援するようになります。
それを機に、三上を支えてくれる人が徐々に増えていきました。
三上は、彼らのためにも再起しようと奮闘していくのです。
キャスト情報
三上正夫/役所広司
■役所広司さんコメント
いつか西川監督作品に参加したいと思っていました。
三上という得体のしれない男の役を頂きました。面白さと難しさを感じました。▼コメント全文は▼https://t.co/ejrrMpLFBD#すばらしき世界 pic.twitter.com/N4zA96XoR9
— ワーナー ブラザース ジャパン (@warnerjp) July 8, 2020
見た目は怖いが心優しい本作の主人公。
殺人罪で13年間服役し、2度と刑務所に戻るまいと社会復帰を目指します。
三上を演じた役所広司は、仲代達矢主催の劇団「無名塾」出身の俳優です。
俳優になる前、役所に務めていたことと「役どころが広くなる」と祈念して仲代達矢が「役所」と命名しました。
主な出演作品は【Shall we ダンス?】(1996)、【シャブ極道】(1996)、【眠る男】(1996)、【十三人の刺客】(2010)、【わが母の記】(2012)、【三度目の殺人】(2017)、【孤狼の血】(2018)、【七つの会議】(2019)、【峠 最後のサムライ】(2021) など。
【Shall we ダンス?】で主演を務めた1996年から、7年連続で日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞した日本を代表する映画俳優です。
津野田龍太郎/仲野太賀
三上の社会復帰する姿を番組にしようと近付くテレビディレクター。
津野田役を演じたのは2006年に俳優デビューした仲野太賀です。
主な出演作品は【桐島、部活やめるってよ】(2012)、【アズミ・ハルコは行方不明】(2016)、【今日から俺は!!劇場版】(2020)、【泣く子はいねぇが】(2020)など。
父は俳優の中野英雄です。
井口久俊/北村有起哉
三上の社会復帰を手伝うケースワーカー。
井口を演じた北村有起哉は、舞台を中心に活躍していましたが近年はテレビドラマにも多く出演しています。
主な出演作品は、【桜田門外ノ変】(2010)、【太陽の蓋】(2016)、【新聞記者】(2019)、【浅田家!】(2020)、【ヤクザと家族 The Family】(2021)。
【すばらしき世界】見どころと解説。
三上の真っ直ぐな性格
三上は困っている人を放って置けない心優しい人物です。
三上のように、誰かがいじめられている姿を見過ごせない真っ直ぐな性格は、”空気を読む“ことが当たり前の今のご時世、生きていくのは難しいかもしれません。
庄司夫妻(役:橋爪功、梶芽衣子)曰く、いい加減なくらいがちょうどよく、もっといい加減に生きている方が人生を生き抜いていく上では大切。
真面目なことは悪いことではありませんが、頑張ってもどうにもならないことはあります。
”ちょうどいい諦め加減が肝心”と思うことが、自分を苦しめずにすむこともあるのです。
この世界の”あたたかさ”とは
白黒ハッキリつけるよりも、答えがグレーの方が良いこともたくさんあり、そしてきっと今の時代は殆どがグレーでいいのかもしれません。
ではどうやって折り合いをつければいいのか。
三上は温かく支えてくれた人たちの顔が思い浮かんだのだろうと思います。
彼らを裏切るようなことはできない、そして恩を返さなくてはいけない。
だから、「まだ死ぬわけにはいかない」のです。
結局、人は誰かのために生きていく、そして誰かに生かされていると感じました。
感想
凡そ半分の人が、刑務所を出所してもまた罪を犯し刑務所に戻ってしまうそうです。
本作では、社会復帰の難しさを考えさせられ、とても他人事ではないように感じました。
また、三上のように暴力を制御できない、自分を抑えることが出来ないのは、幼少期の親からの極端な虐待があった人に多く見られると言われています。
母親からの愛情というのはそれほど影響があるということを痛感し、簡単な事ではないですが、子どもをちゃんと育てていけるような仕組みがあれば、こういった問題も少しは解決に繋がるのかも、とも感じました。
登場人物の誰かに自分を重ね共感できるところもあり、セリフひとつひとつが胸に刺さるような作品でした。
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