【オールド】ネタバレ。M・ナイト・シャマラン最新作、1日で一生を終える恐怖と謎。

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映画【オールド】は、2011年に出版されたフランス作家のピエール・オスカル・レヴィーとイラストレーターのフレデリック・ペーターズによるグラフィック・ノベルが原作のホラー映画。海辺へ旅行に行った人々が、そこで不思議な出来事に遭遇する姿を描いています。自分達の時間が急速に流れていることを悟った事から、彼らの全ての人生はたった一日で変わってしまう非現実ながらもリアリティある恐怖を伝えます。

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あらすじ

離婚を決心したガイ(ガエル・ガルシア・ベルナル)とプリスカ(ヴィッキー・クリープス)夫婦は、家族との最後の思い出を作ろうと夏休みに、息子と娘と一緒にリゾート地へ家族旅行に行く事になりました。

休暇2日目に、リゾートのマネージャー(グスタフ・ハマーステン)から、数人だけに紹介したプライベートな海辺に行く事を勧められ、別の家族4人と一緒に海辺へ遊びに行きます。

その途中でまた別のカップルが合流して過ごす事になりましたが、行った先の海辺で女性の死体が発見。

さらに、そこでは子供たちが急激に成長していったのです。

彼らは海辺を離れようとするも、そうはいかない状況に置かれている事に気付きます。

崖に隠れた神秘的な雰囲気が漂う孤立された海辺、時間の流れが急速に流れる中で、彼らはひとつ、そしてふたつ目の死を迎える事になるのです。

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驚くべき斬新で独創的な素材

【シックス・センス】(1999)など独創的な世界観、ホラー映画としての特徴的な要素と斬新なアイデアを基にしたストーリー、そして最後の衝撃を与えるどんでん返しで愛されて来た M・ナイト・シャマラン監督が、今回注力したのは時間というテーマです。

人生を生きていく上で、最も重要な時間をテーマに、斬新な作品を作り上げました。

超自然的現象、ホラー、スーパーヒーロー作品などあらゆる分野で観客にプレッシャーを与え、緊張感を極大化させていくのがM・ナイト・シャマラン監督の得意技です。

主人公たちが訪れた海辺では、1秒は通常の5日間に相当、30分は1年、1時間は2年、1日は50年という急速な時間の流れがあるという設定。

こういったタイムホラースリラーというジャンル映画では、まず【ベンジャミン・バトン 数奇な人生】(2009)が連想されます。

【ベンジャミン・バトン】は、デヴィッド・フィンチャー監督・2009年に公開された作品。

【ベンジャミン・バトン】は、80歳ほどに相当する体で生まれた赤ちゃんが歳を重ねるごとに若返り、最後は普通の赤ちゃんに戻る数奇な運命を背負った主人公の生涯を描いた物語。

ドラマチックかつ、これまでにないストーリーは世界に衝撃を与えました。

2作品は違うジャンルながらも、どちらも若さと老い、そして”死”と言うものを奇異に扱っている点は同じ。

【ベンジャミン・バトン 数奇な人生】では、静かに生涯の幕を閉じていくというのに対し、【オールド】は急激に死に近づくことへの不安と恐怖を表現したスリラー作品ではあるものの、どちらも人生を歩む人々の視点で人生とは何かというメッセージを伝えているのです。

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監督と出演者

M・ナイト・シャマラン

Me on the set of ⁦@oldthemovie⁩. This is my face when I’m trying to solve a problem. pic.twitter.com/GhvnCK3TIv

— M. Night Shyamalan ⌛ (@MNightShyamalan) August 11, 2021


【オールド】のメガホンを取ったのは、インド系アメリカ人監督のM・ナイト・シャマラン。

1999年、ブルース・ウィリス主演の【シックス・センス】で監督・脚本を担当し、反転の演出で世界的な話題を呼び、以降”反転の帝王”と呼ばれるようになりました。

代表作は【ヴィジット】(2015)、【アンブレイカブル】(2000)、【スプリット】(2017)と【ミスター・ガラス】(2019)【サイン】(2002)、【ハプニング】(2008)、【エアベンダー】(2010)。

創意的で印象に残る数多くの作品を世に送り出した奇才監督のひとりです。

ガエル・ガルシア・ベルナル

主人公ガイ役を演じたのは、メキシコハリスコ州出身のガエル・ガルシア・ベルナル。

6歳で子役でデビューし、14歳で【El abuelo y yo】(1992)の主演に抜擢されました。

その後、アカデミー短編映画賞にノミネートされた【De tripas, corazón】(1996)に出演し、【アモーレ・ペロス】(2000)で長編映画デビューを果たしました。

2001年公開の【天国の口、終りの楽園。】では、ヴェネツィア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞。

【チェ・ゲバラカストロ】(2002)と【モーターサイクル・ダイアリーズ】(2003)では、ベルナルが自ら尊敬するという人物、チェ・ゲバラ役を演じました。

トーマサイン・マッケンジー

ガイの娘マドックス役を演じたのは、トーマサイン・マッケンジー。

ニュージーランドウェリントンで生まれで、父は映画監督のスチュワート・マッケンジー、母親は女優のミランダ・ハーコート。

【ホビット 決戦のゆくえ】(2014)のアストリッド役でハリウッド進出し、【足跡はかき消して】(2018)では、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞のブレイクスルー演技賞を受賞。

2019年公開の映画【ジョジョ・ラビット】ではエルサ役で出演しています。

2021年10月公開の映画【ラストナイト・イン・ソーホー】ではアニャ・テイラー=ジョイと、Netflixオリジナル映画【The Power of the Dog】ではベネディクト・カンバーバッチと共演するなど、今後の活躍ぶりに期待です。

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若年~高齢までワンキャスト

【オールド】は、原作が持つ独創的なストーリーに加え、登場人物たちの心理変化に焦点を当てた作品。

6歳の子供を始め、30~40代の青年層、80代の高齢者まで様々な年齢層の人々が、制限された空間で急速な時間の流れで起こる身体の変化という恐怖を描いています。

体の変化はもちろん感情も追いついて行かないまま、ひとりまたひとりと様々な理由で殺害されたり、時には自然な死に向かっていきます。

見どころのひとつに、登場人物それぞれが若年から高齢までを同じキャストで演じていること(子供はキャストが変わることで対応)があげられます。

違う年代を演じたものの、それは想像以上に自然な仕上がりであり、それぞれの年齢に順応する彼らの演技も見事でした。

特に、トーマサイン・マッケンジーとアレックス・ウルフの自然な演技に注目です。

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記憶に残った映画の景色

【オールド】の撮影地は、ドミニカ共和国の”プラヤ・エル・リモン”という海辺です。

浜辺の左右と岩石、海を行き来しながら孤立した場所での躍動感あるカメラワークは見事でした。

メイキング映像によると、「撮影が殆ど地獄のようだった」と話した監督の言葉から、撮影がどれほど大変だったかを伺い知ることが出来ます。

やっとの思いで海辺に辿り着いたものの、ハリケーンなどの天候不順の為、ハードな撮影を強いられたようでした。

ビーチでは危険を冒しながらの撮影だったようですが、それだけに仕上がりへの期待は格別だったことでしょう。

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生と人生を扱ったスリラー真価

ガイとプリスカ夫婦は旅行前から喧嘩が続き、お互いに対しての嫌悪感や憎しみを持ったまま旅行に出掛けました。

それでも、実際に死の危機に直面した時は夫婦喧嘩がほんの些細な事に思えるようになり、最終的にはお互いを許して理解し合うようになります。

こういった様々な人間の心理変化を通じ、人生とは誰かと手を取り合うことに意味がある、誰かを犠牲にしてまで得た人生には価値は意味がないという監督の思いが強調されているのです。

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生老病死の恐怖

  • 子供はあっと言う間に育ち、老人はあっと言う間に病に倒れる。
  • 妊娠から出産まで30分もかからず、大概の傷はすぐに治る。
  • 今は健康だとしても、1時間後も健康であるという保障はない。
  • しわは増え行動は鈍くなり、視力が落ちて音もよく聞こえない。
  • 30分が1年に変わり、1日で人間の生涯が終わってしまう。

生老病死という苦痛はゆっくりと迫ってくるため受け入れられるものであって、その速度が速くなればなるほど恐怖が襲い掛かります。

人はなぜ時間の流れを恐れるのか。

もし、生きる時間があまり残っていないとしたらどうするのか。

本作は、困難の壁にぶつかった人間の行動をホラー要素としながら、人生について多くのことを考えさせてくれる作品でした。

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