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【ミッドサマー】徹底解説。手に負えない心理的拷問、口説かれる恐怖を誘うパフォーマンス。

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映画【ミッドサマー】は、2019年に公開されたアメリカのホラー映画。90年に一度、ハッジ祭りが開かれる”ホルガ”というスウェーデンの小さな村を舞台に9日間続く真夏のミッドサマーフェスティバルで繰り広げられる様を描いています。体中が震えるほど奇妙な出来事から目を反らすことはできない……。

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あらすじ

ある日の夜、うつ病の妹テリー(クラウディア・シャニ)が謎のメッセージを残し、連絡が途絶えてしまいました。

心配した姉ダニー(フローレンス・フュー)は、両親(ゾルト・ボジャリ、ガブリエラ・フォン)に留守番電話を残し、恋人クリスチャン(ジャック・レイナー)に電話をかけます。

クリスチャンは、友人のマーク(ウィル・ポールター)、ジョシュ(ウィリアム・ジャクソン・ハーパー)、ペレ(ヴィルヘルム・ブロムグレン)と一緒にお酒を楽しんでおり、「これまでも同じような事があったから、心配しなくて良い」とダニーを安心させて電話を切りました。

ダニー自身も情緒不安定で精神安定剤を服用していたため、クリスチャンはずっとダニーと別れたがっており、ジョシュとマークからも別れるよう勧められていました。

すると、再びダニーから電話がかかって来ます。

クリスチャンは暫くためらったあと電話に出ると、電話口から大声で泣き叫ぶダニーの声が……。

テリーが自分の口と自動車の排気管をホースで繋ぎ、別のホースを両親の部屋にも繋いでテープで密閉したため、家族全員が中毒死したと言うのです。

数日後、家族を失ったダニーは落ち込みながらも参加したクリスチャンたちのパーティで、ペレの故郷であるホルガ村で90年に1回、9日間開かれるミッドサマーにクリスチャンが行く事を知って激怒し、自分も同行することに。

ペレはダニーに白い服と木の葉で作った冠を被った人々が写っている写真を見せながら、”5月の女王”を選ぶ伝統もあると話しました。

そして旅行当日、彼らは都心から車で4時間離れたホルガ村に向かったのです。

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監督と出演者

アリ・アスター監督

Photo by Giffoni_ Experience / https://www.flickr.com/photos/giffonifilmfestival/44087017634/

”アリ・アスター監督”について:監督兼脚本家のアリ・アスター監督は、1986年7月15日アメリカ/ニューヨーク市出身。音楽家の父親と詩人の母親との間に、2人兄弟の兄として生まれました。

幼少時代に、人気コミック”ディック・トレイシー”の実写映画化【ディック・トレイシー】(1990)を観てホラー映画に夢中になり、地元のビデオ店のホラーコーナーを全て制覇しました。

2004年、ニューメキシコ州サンタフェのサンタフェ大学で映画を学びました。

代表作:短編映画監督デビュー【Tale of Two Tims】、【TDF Really Works】(2011)、【The Strange Thing About the Johnsons】(2011)。【ヘレディタリー/継承】(2018)で長編映画監督デビュー。

【ミッドサマー】で、第29回ゴッサム独立映画賞で最優秀脚本賞にノミネートされ、2020年6月にはホアキン・フェニックス主演のホラーコメディ映画【Disappointment Blvd.】の製作を発表しました。

ダニー・アーサー

Photo byEnzer’s World (E.W.) / https://www.flickr.com/photos/192538196@N02/51117977559/

登場人物:大学で心理学を学ぶ学生で、躁うつ病を患う妹テリーによる家族無理心中に大きな傷を負います。

恋人のクリスチャンに依存しているうえ、情緒不安定のためクリスチャンに負担を掛けています。

キャストフローレンス・ピュー

出演作:【フォーリング少女たちのめざめ】(2014)、【レディー・マクベス】(2016)、【アンソニー・ホプキンスのリア王】(2018)、【アウトロー・キング スコットランドの英雄】(2018)、【リトル・ドラマー・ガール 愛を演じるスパイ】(2018)、【ファイティング・ファミリー】(2019)、【ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語】(2019)、【ブラック・ウィドウ】(2021)など。

”フローレンス・ピュー”について:1996年1月3日、イングランド/オックスフォードシャー州オックスフォード出身。

俳優兼ミュージシャンのセバスチャン・ピュー(トビー・セバスチャン)、女優のアラベラ・ギビンズ、ラファエラ・ラフィー・ピューの3人兄妹。

2019年公開の映画【ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語】でエミリー役を演じ、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされました。

クリスチャン・ヒューズ

Photo by Michael Bay / https://www.flickr.com/photos/michaelbay/14481227535/

登場人物:精神的に不安定なダニーの面倒を見ている恋人であり、マークやジョシュ、ペレと同じ大学の人類学科の男子学生。

ダニーと別れたがっていますが、なかなか切り出せないでいます。

キャストジャック・レイナー

出演作:【Country】(2000)、【Dollhouse】(2012)、【リチャードの秘密】(2012)、【Glassland】(2014)、【シング・ストリート未来へのうた】(2016)、【Strange Angel】(2018-2019)、【フリー・ファイヤー】(2016)、【デトロイト】(2017)、【ビリーブ未来への大逆転】(2018)、【トランスフォーマー/ロストエイジ】(2014)、【CHERRY】(2021)など。

”ジャック・レイナー”について:1992年1月23日、アメリカ/コロラド州ロングモント出身。

2010年に俳優として本格的にデビューし【リチャードの秘密】(2012)で主演に抜擢されました。

第10回アイルランド映画&テレビ賞で主演男優賞を受賞したのち、【トランスフォーマー/ロストエイジ】(2014)で主要キャストとして出演しました。

ダン

登場人物:アッテストゥパンで、最初に飛び降りた老人。

キャストビョルン・アンドレセン

出演作:【純愛日記】(1970)、【ベニスに死す】(1971)、【Bluff Stop】(1977)、【Gentlemen & Gangsters】(2016)など。

”ビョルン・アンドレセン”について:1955年1月26日、スウェーデン・ストックホルム出身の俳優兼音楽家。

アニメーション【ベルサイユのばら】の、オスカル・フランソワのモデルとして知られていました。

若き頃のアンドレセンは、その美しさで世界中の女性を虜にした美少年俳優でした。

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ミッドサマーについて

ミッドサマーは、スウェーデン語で”真夏(Mid Summer)”という意味であり、”スウェーデンで毎年6月中旬に行われる世界最大規模の夏至祝祭”を意味します。

スウェーデン語式表記は”ミィドソンマル”だが、英文式発音に従ったものと思われる。

ミッドサマー祭りは、毎年6月19日から6月25日の間に挟まれた金曜日を”ミィドソンマルイブ(前日)”として、その後5週間ほど休みになるというスウェーデンの名節に入ります。

都市に住んでいた人々がミィドソンマルを基点に故郷に帰り、夏至に生える新鮮な収穫物で豊かな食卓を整え、夜は村人が集まってダンスをするなどして連休を過ごします。

陽気が最も良い農作物の収穫シーズン以降に休むという点では、日本では夏季に行われるお盆、1ヵ月ほどの長い休暇期間で帰郷するという点では中国の春節と似ています。

現実のミィドソンマルも、作中と同じくメイポールを指して周囲を回りながら踊ったり、ジャガイモを主原料としたアクアビットという蒸留酒や、スナップスというファンコールやアニスなどの香草で風味付けがされた白い蒸留酒を飲む風習もあります。

また、スウェーデンのミィドソンマルの時期はジャガイモが旬なので、茹でたばかりの新ジャガイモを食べ、夏に収穫したばかりのイチゴをたっぷり入れたケーキを楽しんだりもします。

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映画に隠された図形の意図

映画冒頭で、ダニー達がホルガ村に入る直前に道路を走行する場面で構図を上下反転し、車がホルガ村に入って来ると元の構図に戻すという場面がありますが、これは映画のプロットを説明しています。

カメラを回転させ天地を逆さまにする演出は、ここからは、世界が反転する。つまり、既存の一般常識が通用しない物語が始まることを表現しているのです。

そして、次に注目したのは、三角形、円、四角形の3種類の図形。

1.三角形=支配・洗脳。

一番目立った三角形はホルガ村の神殿でしょう。

ダニー達が神殿について尋ねた時、神聖視を理由に接近を禁じられましたが、この神殿はエンディングで燃えて無くなります。

よって、この三角形は支配と洗脳の象徴物と見ることが出来ます。

神殿とは、ある団体が共に仕える神を迎える為に建てた建築物で、ホルガ村の人々は盲目的に風習を受け継いでいるため、神殿を大事にするのは当然のこと。

その神殿を燃やしたということは、支配と洗脳から脱したという意味ではないでしょうか。

ただ、神殿が燃えたことによって支配と洗脳が消えたのは事実ですが、ホルガ村の人々が自由を手に入れたり、主人公が共同体から離れる可能性を表現した訳ではありません。

支配と洗脳は垂直の関係で現れる行為であり、燃えて消滅したという事は主人公が垂直の関係を脱して水平的な関係を成したという解釈がより正しいのです。

つまり、主人公はホルガ村の共同体に完全に溶け込んでいると考えた方がいいでしょう。

これらは主人公がホルガ村の人々から洗脳される立場ではなく、彼らと同じ線上に上っていることを意味しているのです。

2.円=新しい人生・スタート。

これは、5月の女王選抜大会で全てに不慣れだったダニーが、ホルガ村の人々と完璧に同化するという流れが収縮された場面でもあります。

垂直と水平、三角形、そしてその下に新しい始まりを象徴する円があります。

村の娘達だけが5月の女王選抜大会に参加するという事は、あの巨大な柱が男根を象徴するとも言える。実際、西洋哲学では三角形は男性性を象徴。

しかし作中では、円を見つけられる場面は多くありませんでした。

ダニー達が村に初めて入った時、その周りをまるで後光のように取り囲んでいた構造物と、老人2人が自ら飛び降りた崖の近くにあった石碑は印象に残ったと思います。

ホルガ村の人々にとって“死”とは次の人生を始めるためのスタートラインに過ぎず、高い崖から躊躇いもなく飛び降りたのもこのため。

生まれ変わってから人生を繋いでいくという確信があるからこそ、彼らにとって自らの死は難しいものではないのです。

そう考えると、ダニー達を迎えた巨大な構造物が円の形をしていることも辻褄が合います。

ダニー達は論文の研究の為にホルガ村に来ましたが、ホルガ村の人々の立場から見ると、新しい人生を始める為に訪れた部外者だと捉える事ができ、自分たちの文化を強制的に教え込もうとするのが伝わって来ます。

3.四角形=外面。

特に、映画の序盤に多く見られたのが四角形で、ダニーとクリスチャンが対立する場面や、ホルガ村の食卓などがその例です。

クリスチャンは、ダニーが精神的な病にかかっている事は知っていますが、彼女が自分に依存していることに疲れ彼女と正面から向き合うのを避けているのです。

スウェーデン行きの件でダニーと衝突した場面で、ダニーとクリスチャンをそれぞれ四角形の中に閉じ込めた演出があります。

クリスチャンは四角形の全身鏡の中に、ダニーは四角形のドアの中に閉じ込めたのは、そっぽを向くクリスチャンと、彼からの愛情を感じないダニーとの対立を象徴しています。

また、ホルガ村の食卓が四角形に配置された事も外面の意味を持っており、ホルガ村の人々がそっぽを向いているのは文明を指しています。

すなわち、文明の法と制度、倫理意識または文明の利器まで全て無視しているのです。

外面は自ら問題を自覚してこそ可能な行動で、ホルガ村の人々が野蛮な風習の問題を自覚しているという証拠は、かなり多く見られます。

村の共同体にいながら外部の法と制度をよく知っており、英語を使い、文明の物もしばしば見られました。

映画の前半部で麻薬を吸い込んだダニーは、取り囲んでいる人々が自分をあざ笑うような幻覚を目にする場面がありました。

最初は、麻薬の効果による幻覚だったかのように見せていましたが、ストーリーが進行するにつれてホルガ村の人々の奇怪な儀式が明らかになります。

これらは、被害者をからかう意図として感じられ、まさに苦痛と快楽を分かち合う儀式なのです。

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2つの奇妙なセリフの意味

ダニー達がホルガ村を訪れた際、オッド司祭の「自然は子宮同体だからです。」というセリフがありました。

このセリフは、ミッドサマーの真の儀式のヒントだったのです。

彼らは、全員が同じ子宮で生まれた1つの体であるという論理を持って生きています。

アッテストゥパンの日に飛び降りたものの即死出来なかった老人を見て一緒に苦しむ人々、クリスチャンとマヤが一つになるのを見守りながら一緒に嬌声を上げる女性陣、その姿を目撃したダニーと一緒に嗚咽する女性陣など、全ての行動が虚言に出た”子宮同体”という観念が考えられます。

そして、ペレが連れて来た仲間を全員生贄にすると思われがちですが、そうではありませんでした。

ジョシュとマーク、クリスチャンは、最初から生贄として定められている一方で、ダニーに対しては初対面から自分の家族を話したりなどして、自分の味方にしようとする演出が多く見られました。

「ペレは人を見る目が良い」と言及された場面を見れば、”生贄として連れて来る人と村の一員として連れて来る人を把握した”と考えられます。

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“9”と”13”の意味

北米神話の基とした設定を数多く取り入れており、作中では“9”と”13″にまつわる数字が多く見られました。

  • ミッドサマーは90年毎に行われる。
  • ミッドサマーは9日間行われる。
  • 神殿に捧げる9人の生贄が必要である。
  • 72歳になると、アッテストゥパンの儀式によって自ら死ぬ。72歳は9の倍数で7+2=9。
  • 老人が飛び降りた崖の近くにある石碑に9つのルーン文字が書かれている。
  • 映画の原題”Midsommar”9つのアルファベットから成り上がっている。
  • 18歳までを少年、36歳までを青年、54歳までを中年、72歳までを老人と、年齢毎に9の倍数で分類されている。

北米神話では、巨大な木ユグドラシルを中心として、神々の世界や人間の世界等全世界を9つに分ける事が出来ると考えられており、こだわっていた”9″という数字から”13″という数字に支配され始めます。

  • クリスチャンとマヤが1つになる場面で、彼らの向こうに同じく全裸の12人の女性陣にマヤと合わせると合計13人。
  • ダニーを馬車に乗せて先導する女性陣も13人。

キリストを裏切った弟子のユダが13番目の弟子であり、イエスが処刑されたのが13日の金曜日だったという起源から、元々”13″はキリスト教では忌むべき数字として捉えていました。

キリスト教を信仰するアメリカやイギリスからやって来たダニー達にとって、ホルガ村は“悪魔”だという事を“13”が示していると言っても過言ではありません。

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オズの魔法使い

アリ・アスター監督の、「It’s a Wizard of Oz for perverts.」(【ミッドサマー】は、変態の為のオズの魔法使いだ。)という言葉から、美しい童話“オズの魔法使い”が本作と関連してることがわかります。

まず、クリスティアンのアパートで冷蔵庫の上に【オズの魔法使い】(1939)に登場しているカカシの写真が飾られていますが、カカシは藁で作られている為、火を恐れているという弱点があります。

まさに、本作のラストの伏線になっていました。

更に、ダニー、クリスチャン、ジョシュ、マークの4人に、【オズの魔法使い】(1939)のキャラクターを当てはめているのです。

  • 家へ帰りたいドロシー家族が欲しいダニー
  • 勇気がない臆病なライオンダニーに別れ話を切り出せないクリスチャン
  • 心を持たないブリキ男自己中で思いやりの心がないジョシュ
  • 知恵のないカカシ女性の事しか頭にないマーク

このように、双方の登場人物の性格が似通っている点も見どころポイントです。

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理解出来ない文化

ホルガ村の風習や妊娠文化など奇妙なことばかりで衝撃が走ります。

ダニー達と村の人々が食事をする場面で、クリスチャンだけ飲み物の色が違うのがありましたが、これはマヤが初対面でクリスチャンを気に入ったため自分の相手に、としたもの。

そして、ホルガ村で代々受け継がれて来た迷信を使ってクリスチャンを自分のものにしようとしました。

その迷信は、作中の垂れ幕のようなものに下記のような絵が出て来ます。

  1. 女性が男性に一目惚れで恋に落ちる
  2. 女性は自分の陰毛と月経を入れて食べ物を作る
  3. それを意中の男性に食べさせる
  4. 男性はその女性に夢中になる
  5. 2人は愛し合い子供が出来る
本作で見られる壁画のような絵は映画の一場面に繋がる。

死とはあまりにも悲しいものですが、この村では新しい生命の誕生と繋がった喜びの一瞬として見つめており、村での性行為は生命を生む一つの儀式として扱われています。

彼らは文化の多様性を尊重していましたが、結末で明らかになったのは風習という仮面を被った集団狂気に溺れた狂気者、それ以上でもそれ以下でもありません。

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ダニーは幸せか

映画の最後でクリスチャンや友人が燃やされる場面でダニーは微笑みました。

あの表情はどういう意味があるのか。

ダニーは、両親や妹が無理心中で死んでしまった上、クリスチャンとの関係も冷めてしまい精神崩壊直前でした。

ダニーはクリスチャンに嫌われないようにすることに必死になり過ぎて、その恐怖のあまり自分が置いて行かれる悪夢を見てしまいます。

そんな時、クリスチャンとマヤが見つめ合ったり2人が身体を重ねた場面に遭遇しました。

果たして、それはダニーの目にどのように映ったのか。

ダニーは、クリスチャンがホルガ村の人々に利用されている事を知らないので、ただ浮気を楽しんでいる汚い男に見えたのではないでしょうか。

あまりの悲しさにダニーが泣き叫ぶと、村の女性はダニーを慰めながら一緒に泣き叫んでいました。

おそらくここでダニーは、共感してくれる人々に心を開くようになったのでしょう。

ダニーが村の人々に同化した時点も、まさにこの時だと思われます。

そして9人の生贄を捧げるその日、5月の女王の権限を持つダニーは、最後の供え物としてクリスチャンを指しました。

家族も友達も全て失ったダニーの微笑みは、もはや狂っているようでした。

本作は、衝撃的な結末を通じて全てを失ったダニーが新しい共同体の中で同化し、権力を得るようになってから変化するカタルシスを表現しています。

本作は、公開の4年前から脚本を執筆いていたというアリー・アスター監督自身が経験した別れの辛さを反映したようで、喪失に対する痛み、そしてその痛みを昇華していく過程が上手く描かれています。

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似非団体が生んだ恐怖の復讐

この映画は恐怖を視覚的な部分に限らず、人間が感じる恐ろしさを拡張させた最も不気味な心理的ホラー映画で、ホルガ村の人々の観念を理解しようと試みる点が恐怖を引き出しています。

ホルガ村共同体は似非団体であり、平凡な人がどうやって似非宗教に陥るのかを見せてくれる映画でした。

しかし、似非団体を共同体と呼ぶ理由は何なのか。

これは多くの人々が誤った思想に陥っているためであり、共同体が野蛮な行為を徹底的に積み重ねて来た伝統と風習という名で協調した瞬間、文明の基準が霞んでしまうのです。

また、ホルガ村の人々は自分の所有物はひとつもありません。

皆で農業をして家畜を飼い、一緒に分けて食べて共同育児までしています。

一言で言うと、この小さな共同体自体が一つの大家族を成しているのです。

そして表面的には、【ミッドサマー】は不気味なホラー映画ですが、その内面は神聖な復讐物語でもあります。

ホルガ村の奇怪な儀式より、家族を失った喪失感と恋人の裏切りから生じた復讐を描くことによって、”家族になってくれたのは誰なのか”を示しているのです。

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囚われる真昼の地獄

一般的にホラー映画は、主に暗闇や人影のない所や陰惨な場所で起きると言うのが定番ですが、【ミッドサマー】は、従来のホラー映画とは異なり明るい雰囲気と鮮明なイメージが独特さを与えます。

映画の序盤、アメリカのシーンでは主に夜や日中の暗い室内を演出していましたが、スウェーデンのシーンでは明るく美しい背景が目立ちました(白夜のシーズンということで夜の時間帯でも太陽が昇っています)。

自然景観がとても美しい村で、人々が白い服を着て頭には花冠を巻き、叙情的な伝統民謡のような歌を歌い笑顔で親切にしてくれます。

本作では、運命論の観点から全てが緻密に統制されて細工された恐怖の世界、その世界から絶対に抜け出せないという絶望を上手く描いており、一言で言えば、奇怪さに身を震わせ囚われてしまう真昼の地獄

白夜の自然の中の美しい場面も印象的でとても美しいのに、全体的な物語、人物の心理や状況、村の風習とルールによって繰り広げられる残酷な世界は本当に身の毛がよだちます。

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