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【マトリックス レザレクションズ】解説。あの世界で繰り広げられる新しい戦争。

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映画【マトリックス レザレクションズ】は、2021年に公開されたアメリカ合衆国のSFアクション映画。【マトリックス】(1999)、【マトリックス リローデッド】(2003)、【マトリックス レボリューションズ】(2003)に続く4作目で、60年後の物語。人類の為に覚醒したネオが、更に進歩した仮想現実で機械と繰り広げる新しい戦争を描いています。

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あらすじ

ある日、トリニティーと同じ服装をした女性がエージェントに追われている姿を、マトリックスのモーダルに侵入したムネモシュネ号の船長バッグス(ジェシカ・ヘンウィック)が雑居ビルの一室から見ていました。

しかし、それは罠であって自分がエージェントに追われる羽目になってしまいましたが、一人のエージェントによって救われます。

そのエージェントは、モーフィアス(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世)と名乗るプログラム。

モーフィアスとバッグスはネオを直接見たという共通点があり、モーフィアスはバックスから受け取った赤い薬を飲んで覚醒し、2人はエージェントから逃げ切ります。

その頃、トーマス・A・アンダーソン(キアヌ・リーヴス)は、”マトリックス”3部作のゲームデザイナーとして、サンフランシスコにあるゲーム会社”デウス·マキナ”社で働いていました。

ボスであるスミス社長(ジョナサン・グロフ)に呼び出されたトーマスは、対話の中で過去の宿敵であったスミスの姿が見えてきくるようになり、「親会社のワーナー・ブラザースから、マトリックス4本を出すよう依頼されている」とスミス社長が言った瞬間、彼の口がくっついてしまいます。

エージェント・スミスの姿がフラッシュバックし異変を感じたトーマスは、いつも飲んでいる青い薬を手にしましたが、次々と起こる現象に恐怖を感じ薬を放り投げてしまいました。

事実、トーマスは現実と創作の区別がつかず、自分が作ったゲームが実際の記憶であるような精神錯乱を起こし、自殺を図ろうとした過去がありました。

このような症状を抑えるため、カウンセラーのアナリスト(ニール・パトリック・ハリス)の元、青い薬での投与治療を受けていたのです。

ある日、トーマスはSIMULATTE(シミュラテ)というカフェでティファニーと名乗る女性(キャリー=アン・モス)に同僚が下心ありきで話しかけました。

トーマスも同僚から紹介され握手。彼女は既に結婚しており3人の子を持つ母親でした。

ある日また同じカフェでティファニーで出会ったトーマスはお茶をすることに。

何でもゲーム「マトリックス」に登場するトリニティというキャラクターの影響を受けてバイクを乗り始めたそう。

その後、職場に戻って仕事をしているとゲームのアップデートを恨む少年から犯罪予告が届き、やって来たテロ部隊が会社の人員を全員避難させる中で、なぜかトーマスのスマートフォンにはビルの一角にあるトイレに向かうよう指示が。

トーマスは、その指示に従って警察から避けるように社内のトイレに向かうと、そこには自分が作ったプログラムであり、「マトリックス」のキャラクターであるモーフィアスがいました。

赤いピルを見せながらネオとして現実に帰ろうと言うモーフィアスに混乱状態のトーマス。

トーマスにとってはゲームの中に入ってくれと言われているようなものなので、幻覚が再発したと思っているところに、トイレに警察が押しかけ、モーフィアスが応戦する中で、トーマスの頭に銃を付けて来たのはボスでした。

スミス社長はエージェント・スミスだったのです。

絶体絶命のピンチに追い込まれたトーマスは、自らの死を覚悟した瞬間、アナリストの部屋で目を覚まします。

どうやら案の定幻覚を見ていた模様。

その後、精神的疲労困憊となり酒に酔ったトーマスは、建物の屋上から飛び降りようとしましたが、バッグスに助けられます。バッグスから赤い薬を飲まされたトーマスは、鏡に突然アナリストが現れて「これは現実ではない」と言って妨害されたりしましたが、紆余曲折の末に辛うじて脱出し、大きな部屋に出ました。

そこには、過去の自分やモーフィアスが映し出されて、懐かしさを覚えたトーマス。

20年間、捜し続けていたトーマスの中に隠れていたネオを、遂に見つけたモーフィアスは、「真実を知りたいなら”赤い薬”、元の生活に戻りたければ”青い薬”、どちらかを選べ」 と赤と青の2つの薬を差し出しました。

トーマスは、赤い薬を選んでネオに覚醒し、マトリックスの世界に出る事になり….。

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監督と出演者

ラナ・ウォシャウスキー監督

”ラナ・ウォシャウスキー監督”について:アメリカ合衆国の映画監督、脚本家、プロデューサー。

シカゴで1965年6月21日に、ポーランド系のビジネスマンの父親ロン・ワチョウスキーと看護師で画家だった母親リン・ネ・ラッキンビルの間に、ローレンス・ウォシャウスキーとして生まれました。

ウォシャウスキー監督の妹リリー・ウォシャウスキーも映画監督、脚本家、プロデューサーであり、かつてはラリー&アンディ・ウォシャウスキー姉妹と呼ばれていましたが、性別適合手術を受けた後はラナ&リリー・ウォシャウスキー姉妹として呼ばれています。

また、プロデューサー兼俳優のローレンス・ラッキンビルは叔父にあたります。

シカゴ在住の時に執筆した【暗殺者】がリチャード・ドナー監督により1995年に映画化され、【バウンド】(1996)では脚本を務めると共に、監督デビュー作となりました。

映画【マトリックス】(1999)は、ワーナー・ブラザースにとって決定的かつ商業的な大ヒット作となり、Best Visual Effectsを含む4つのアカデミー賞とサターン監督賞を受賞し、ハリウッドのアクション映画に大きな影響を与えました。

漫画好きとしても知られているウォシャウスキー監督は、想像上の世界のアイデアを探求する事でも知られており、特にスタンリー・キューブリック監督の【2001年宇宙の旅】(1968)からインスピレーションを得ているとのこと。

2012年には、トランスジェンダー女性としての経験について語り、「アイデンティティ、自己像、変身のテーマは【マトリックス】(1999)にはっきりと反映している」と述べています。

代表作:【Vフォー・ヴェンデッタ】(2005)、【インベージョン】(2007)、【スピード・レーサー】(2008)、【クラウド アトラス】(2012)、【ジュピター】(2015)、【センス8】(2015)、【センス8 完結編】(2018)など。

トーマス・A・アンダーソン/ネオ

登場人物:ゲームデザイナーで、”マトリックス”3部作のゲーム開発者。過去のマトリックス世界での記憶はリセットされていたものの、ネオは彼の中で眠っています。過去に人類を救い、銃弾をかわす能力がある上、倍以上の戦闘能力も蓄えています。

キャストキアヌ・リーヴス

出演作:【ビルとテッドの地獄旅行】(1991)、【恋愛適齢期】(2003)、【コンスタンティン】(2005)【イルマーレ】(2006)、【47RONIN】(2013)【ジョン・ウィック】(2014)【ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!】(2020)など。

”キアヌ・リーヴス”について:1964年9月2日レバノンのベイルート出身、カナダ・トロント育ち。

アメリカ人の継父を通じ、アメリカ永住者カードを取得した3年後にロサンゼルスに移住し、【ヤングブラッド】(1986)で長編映画デビューを飾りました。

映画【スピード】(1994)で主演を務め、国際的アクションヒーローとしての地位を確立したのち、【マトリックス】(1999)での演技が評価されスターへと上り詰めました。

その4年後には、続編【マトリックス リローデッド】(2003)や【マトリックス レボリューションズ】(2003)も公開され、【コンスタンティン】(2005)では悪魔祓い役、【地球が静止した日】(2008)では謎の生命体役、【ジョン・ウィック】(2014)では伝説の殺し屋役として名を馳せました。

なお、【ジョン・ウィック】シリーズは第3作までシリーズ化されており、2020年現在、第4作と第5作の製作も決定しています。

2020年には、【ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!】(2020)が約30年ぶりに公開され、2021年に出版予定のコミック”BRZRKR”に基づいた映画がNetflixで公開予定となっています。

ティファニー/トリニティー

登場人物:3人の子供を持つ母親。マトリックスの世界から脱出した過去の記憶はリセットされていたものの、トリニティーは自分の中で眠っています。トリニティーとして、コンピューター以外にもマトリックス内外の車両操作、武術に長けています。

キャストキャリー=アン・モス

出演作:【メメント】(2000)、【サイレントヒル: リベレーション3D】(2012)、【ポンペイ】(2014)、【彼女が目覚めるその日まで】(2016)ほか。

”キャリー=アン・モス”について:1967年8月21日ブリティッシュコロンビア州バーナビー出身。

幼少時代はカナダのバンクーバーで育ち、20歳の時にモデルとしてのキャリアを積むためヨーロッパに移住しました。

スペイン在住の時、ドラマシリーズ【Dark Justice】(1991-1993)でテレビ初出演し、映画【マトリックス】(1999)のトリニティー役で知名度を上げます。

【メメント】(2000)ではインディペンデント・スピリット賞助演女優賞、【スノーケーキを君に】(2006)ではジェミニ賞助演女優賞を受賞。

Marvelが製作したNetfilx向けのテレビシリーズ【ジェシカ・ジョーンズ】(2015-2019)では、ジェリ・ホガース役で出演しています。

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【マトリックス】とは

【マトリックス】シリーズは、斬新な視覚効果と撮影技法、中国武術の影響が強く感じられる新しいスタイルと、緑のトーンの画面に繰り広げられる秀麗でスピーディーなアクションシーン、世紀末の感性を投影したBGMが全世界的なシンドロームを巻き起こし、制作費6300万ドルの7倍を超える収入を得て、3部作の総興行収入は全世界で16億ドルに達しました。

10年以上の最高興行収入を記録したこの映画は、2012年にアメリカ国立フィルム登録簿に選ばれました。

アメリカ国立フィルム登録簿とは、アメリカ合衆国の”国立フィルム保存委員会”が、半永久的な保存を推奨している映画·動画作品のリスト。

美学と深みのある哲学を貫くしっかりした世界観、ここに受け継がれていく緊迫した物語、起承転結の完全無欠さまで、サイバーパンク傑作の歴史に”マトリックス”という言葉を刻み込みました。

“ブリットタイム”(Bullet Time)を活用したシグネチャーアクションを始め、世紀末的なファッション流行スタイルなど、革命と言われるほど文化界全般に大きな反響を呼び起こし、巨大な影響を及ぼしました。

“ブリットタイム”とは、飛んで来る弾丸を避け、空中に飛び上がるアクションを、まるで時間を止めたように、360度回転する画面の中に盛り込んだ革新的な撮影技法。

【マトリックス レザレクションズ】も、より巨大なスケールと圧倒的なアクションスタイルを披露し、タイトルにもあるように”レザレクションズ(Resurrections)”は、”復活、復興”という意味で、20年以上のSFジャンルの歴史の復活と新時代の復活を予告します。

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マトリックス・トリロジー

機械文明が人間をエネルギー源として使う為に仮想世界を作り、人類を統制といった唯一無二の独特な世界観で、1999年に初めて登場した【マトリックス】シリーズは、歴史上最も成功したSF映画であり、最も完成度の高い3部作と評価しても過言ではないほど圧倒的な名作です。

【マトリックス】(1999)

“マトリックス”という仮想空間を、潜り抜ける物語でした。

銃弾を避けるネオを360度回転するカメラで捉えた場面、トリニティーの立体的な格闘シーンは数多くのジャンルでパロディーされるなど、社会全般に影響を及ぼし、更に本当の人生に覚醒する赤い薬とマトリックス世界に安住する青い薬は、映画の強力な象徴になりました。

【マトリックス リローデッド】(2003)

人類の最後の拠点ザイオンが、マトリックスを支配している機械に突き止められた危機に陥る物語です。

無数に飛んで来る弾丸を避けたネオの姿や、スミスの分身と戦うアクション場面が代表的でした。

【マトリックス レボリューションズ】(2003)

マトリックスと機械の世界の境界にある地下鉄の駅で捕らえられていた意識不明のネオが、オラクルに行って世界を救う物語です。

機械の世界に入ったネオは目に怪我をする事になり、トリニティーは命を失ってしまいました。

【マトリックス レザレクションズ】

全ての記憶を失い、リセットされたネオとトリニティーが復活します。

前編で人類を救い、壮烈に最期を迎えたネオとトリニティーを蘇らせたアイデアが興味深く、ネオの全ての過去の活躍が、マトリックスというゲームの中の状況だったという事が更に驚きでした。

【マトリックス レザレクションズ】には、【マトリックス】シリーズをオマージュした場面が何度も見られ、【マトリックス】(1999)、【マトリックス リローデッド】(2003)、【マトリックス レボリューションズ】(2003)を観た事がある方なら本作はより充実して楽しめると思います。

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命を懸けたアクションシーン

【マトリックス リザレクション】の格闘シーンには、中国の伝統武術が導入されました。

キアヌ・リーヴス曰く、格闘シーンでは東洋式と西洋式の接近法を取り入れながら訓練したようです。

また、映像技術も感覚的な画面、リアルなアクションシーンを作る為に様々な工夫が見られました。

特に自然光の使用が目立ち、圧倒的なスケールを誇るシーンの一つであるカーチェイスシーンの撮影シーンでは、壮大なリアリティ感がありました。

撮影当時は、サンフランシスコの12のブロックを全て統制しており、43階建てビルから落下するシーンなどでは2人の主人公がスタントマンを使わず、カリフォルニアの訓練所で撮影現場と同様に作った構造物を使い、1ヵ月間訓練を行ったのです。

最初に、2.7メートルの高さで練習した後、9メートル、15メートルと構造物の高さを上げます。

彼らが実際に飛び降りたサンフランシスコ・モンゴメリーストリートにある建物の高さは、なんと172メートルでした。

このように、アクションへのこだわりは時代の流れを反映して一層成熟しており、映画の随所で21世紀的な価値を見つける事が出来ます。

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マトリックスの現実

【マトリックス】シリーズが登場した1990年代末はインターネットが普遍化した時期で、機械文明が人間をエネルギー源として使う為に仮想世界を作り、人類を統制している世界観に映画ファンは熱狂しました。

「マトリックスが、様々な宗教観と多様な哲学的含意を盛り込んでいる」という主張も、映画への関心を高めています。

また、ヒーローの登場や同じ世界が繰り返されるという設定は、キリスト教とヒンドゥー教の思想が重なって見えるという意見が多く見られ、【マトリックス】(1999)で登場したフランスの哲学者ジャン・ボードリヤールの著書”シミュレーション”では、”現実”という私達の認識が、どれほど無意味なのかを間接的に見せてくれます。

このように、人類が仮想世界で暮らすマトリックスの設定は今も示唆するところが大きく、メタバースでこの世界観が現実化しているのです。

メタバースとは、コンピューターやコンピューターネットワークの中に構築された現実世界とは異なる、3次元の仮想空間やそのサービスのこと。
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現代社会を照らす

【マトリックス】シリーズには、人類の闘争に焦点を当てているように見えますが、美しい愛の物語と人生の意味も込められています。

3部作が機械と人間の対決構図だとしたら、本作は人類と手を組むようになった人工知能などを打ち出して理解と共感を強調していました。

私達が生きている現実世界だと、コロナウィルスによる喪失と理念・宗教の葛藤によって分裂している現代社会を慰め、和解しようとする意図とも解釈されます。

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愛をテーマにしたSF

本作では20年という歳月が流れ、システムがネオとトリニティーの出会いを啓示したかのように、彼らは運命的な再会をします。

すぐ近くにいても、お互いを知らずに暮らさなければならないようにさせた機械世界をあざ笑うように、ネオとトリニティーは永遠の別れではなく再会のキスをしました。

二度死んでも二度生まれ変わっても永遠に記憶され続けるこの愛は、時空間を超えて再びお互いをときめかせます。

システムを麻痺させ、デジタルコードを無力化させ、数多くの銃弾を防ぎ、空を自由に飛べるようにさせました。

人類文明を支配した機械の前でも堂々と光を放って全てのものを破壊し、また人を生き返らせる事が出来る力を蓄えさせたのは何よりも愛なのです。

SF映画ながらも、固く強い絆で結ばれたロマンチックな愛の物語は、ネオとトリニティーから生まれたのでしょう。

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マトリックスの世界

実際、我々が生きる世界では機械が占領し、機械は人間を生体バッテリーとして使用します。

ところが、バッテリーが長く生きている為には引き続き夢を見なければなりませんでした。

この夢の中の世界がマトリックスです。

「今、私が生きている現実もマトリックスなのか」という質問が、誰にでも不自然ではないという点にあります。

それだけ昨今の現実をはるかにリードしている創造的で未来志向的な想像でした。

人間が人工知能AIの支配下に置かれており、人間が生きる世の中は全てAIが作った偽物という破格の設定の中に、人間の選択と自由意志、愛、実在と幻想の境界など重い哲学的メッセージが映画から伝わります。

モーフィアスが選択の瞬間を迎える序盤から人間の自由意志を強調する一方、安定した日常に満足したままどう生きていくのか、意味を失った人生に警戒心を呼び起こすメッセージも強烈でした。

もし、一つしかないこの世界にマトリックスの世界があれば、どうしますか。

機械に支配された自分を生きるのか、自分が自分らしく生きるのか。

自分たちが今生きている人生の大切さを見出す機会をマトリックスの世界が見せてくれたのです。

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