映画【ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出】あらすじと見どころ。第二次世界大戦が終結、英国王女であるエリザベスとマーガレットは、国民と一緒に終戦を祝うためにお忍びで外出した。この史実を基に、様々な経験を通して次期女王としての自覚が芽生えていくエリザベスの、生涯に一度、一夜の冒険を描く。
【ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出】あらすじ
1945年5月8日、6年の長きにも渡り多くの犠牲者を出した第二次世界大戦が終戦し、イギリスではヨーロッパ戦勝記念日を祝うため、街中がお祝いムードに包まれていた。
イギリス王室の王女エリザベス(サラ・ガドン)は、破天荒な妹のマーガレット(ベル・パウリー)の強い希望もあり、終戦記念日を国民と共に街で祝いたいと、父である国王ジョージ6世(ルパート・エヴェレット)に外出の許可を申し出る。
渋々ながら姉妹の外出を許したジョージ6世は、門限厳守かつ付き添い有りという条件付きで、2人を送り出すことに。
生まれて初めてお忍びでバッキンガム宮殿を出た2人は、終戦を喜びハメを外す街の様子に興味津々だったが、付き添い役が連れて行った先は退屈なパーティーだった。
飽き飽きしたマーガレットは隙を見て逃亡、慌てて追いかけたエリザベスも浮かれ騒ぐ人々の中で迷子になってしまった。
そんなエリザベスの前に現れたのは、戦場帰りの空軍兵ジャック(ジャック・レイナー)だった。
王女であることを隠しながら妹を探す道中で、何度もジャックに助けてもらうエリザベス。
マーガレットの行き先を追いながら、国民と共に国王の終戦演説を聞いたり、戦争によって傷を負った街や人々を近くで感じたりと、今まで知らなかった世界を知っていく。
行方不明の王女達を探し宮殿が大騒ぎとなっていることも露知らず、エリザベスは一生に一度の、生涯忘れることのない一夜を体験するのだった。
【ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出】見どころ
史実を基に作られた夢あふれる物語
本作は、後のイギリス女王となるエリザベスと妹のマーガレットの、王女時代の史実を基に作られている。
映画の大部分で描かれている宮殿の外での体験が実際どのようなものだったのかは不明だが、終戦記念日の夜、エリザベス王女とマーガレット王女がお忍びで外出し、国民と共に終戦を祝ったというのは本当だそう。
弱冠25歳にして女王となり、高齢となった今もなお公務を行っているエリザベス女王が19歳の少女だった頃の物語。
映画はあくまでフィクションとして描かれているが、宮殿外で終戦を祝ったという事実、若くして結婚し家庭を築き、優れた英国女王として国民に慕われている現在など、様々な背景を意識しながら観てみると映画をより楽しむことが出来る。
また、恋多きことで有名だったマーガレット王女も同行していたことから、オードリー・ヘップバーン主演の人気ロマンス映画【ローマの休日】(1953)も、この史実に着想を得て作られたのではないかと言われている。
映画を生き生きとさせるキャスト達
エリザベス役:サラ・ガドン
一国の王女という、演技力以外にも様々な要素が求められるエリザベス役を演じたのは、『世界で最も美しい顔100人』に6年連続でランクインしたサラ・ガドン。
その美しさは外見だけではなく、カナダ国立バレエ学校、舞台芸術を学ぶTring Park School for the Performing Artsに在籍していたなど、ダンスやバレエで培ってきた所作の美しさも兼ね備えている。
また、10歳頃から役者として活動を始め、テレビドラマを中心に映画、アニメの声優を多数務めるなど、着実に演技力を磨いていった。
本作ではそれらの経験を十分に活かし、王女らしい上品さ、聡明さや責任感、好奇心などを見事に体現している。
彼女の表情、立ち振る舞い、言葉……観客の目と耳に入る全てが、思わず本当の英国王女であると信じさせる力を持っていて、それが映画のクオリティを約束しているのだ。
ジャック・ホッジ役:ジャック・レイナー
正体を隠したエリザベスと偶然出会い、振り回されながらも妹探しを手助けするジャック・ホッジ空軍兵を演じたのは、アイルランド人俳優のジャック・レイナー。
無口で皮肉っぽく、どこか影を感じるジャックを魅力いっぱいに演じている。
一夜の冒険が終わった後、王女として、次期女王として生きていくエリザベスにとって、きっと生涯忘れられない人物になったであろうジャックだが、同時に私たち観客の心にもしっかりと刻まれる存在だ。
あくまで王女が主人公の物語の中でそれほどまでに印象を残すことが出来るのは、劇中様々なポイントで魅せる彼の瞳によるところが大きい。
戦争を憂う瞳、気怠そうに伏せる瞳、未来を夢見る瞳、優しく見つめ返す瞳、母親を想う瞳、そして、ラストシーンでエリザベスを見送る瞳……。
言葉は少なくとも、その時のジャックの感情や秘めた思い、人物像をしっかりと伝えてくれる。
素晴らしい瞳の演技があってこそ、キャラクターがより輝き、リアリティを持って存在出来るのだろう。
戦争の悲惨さと王女の成長を描く
映画の舞台は1945年のイギリス、ロンドン。
史上最大かつ最も破壊的な戦争と言われる第二次世界大戦が終わり、国中の人々が終戦を祝っていたが、幾年にも及ぶ戦争の傷跡はしっかりと残っていた。
自由奔放な妹を追って街を駆け巡る中、エリザベスは様々な人に出会い、様々な光景を目にする。
家族や友人を失った人、終戦に静かに涙する人、空襲により瓦礫の山と化した家々、国王の終戦スピーチに嫌悪を示す人……。
戦時中は名誉連隊長として公務に携わっていたものの、王女という立場上、国民や兵士の恐怖、被害、犠牲、不安、生き抜くことへの思いには明確に差が存在し、その差を、現実を知らなかった自分に気が付くのだ。
そして、王位継承者としての自覚と、目標と、志が生まれる。
本作は戦争の悲惨さや愚かさを描くと同時に、その現実に触れ、国民と近く触れ合うことにより、自らの立場を見つめ直す王女の成長を描いている。
また、本作が秀逸なのは王女としての成長だけではなく、❝19歳の少女❞としての素顔や、思い、夢があることを描いている部分。
映画の終盤で王女と兵士としてではなく、ただ偶然巡り合った少女と青年として未来を語り合うエリザベスとジャックのシーンは、とても印象深く、切なく映るだろう。
【ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出】感想
激動の時代が舞台ゆえ、戦争の愚かさや国を統べる者の在り方、国と国民の関係性など、改めて考えさせられる本作。
しかし、あくまでもロマンティックコメディ、とても観やすい作りになっている。
ポップなジャズを挿入曲に、愛らしいキャラクター達、コミカルな演出、華やかな社交界の様子やドレスなどの美術性等、エンタメ作品としても十分に楽しむことが出来る。
また、エリザベスと空軍兵ジャックの、身分を超えた絶妙な関係性にもぜひ注目してほしい!
冒頭、王女としてのエリザベスを見守り、映画が進んでいくごとにひとりの少女として親近感を持ち、そして最後にはまた、たった一夜の経験ではあるが確かに王女として成長した彼女に、明るい未来を見いだし、それは必ず実現すると信じたくなる。
ラストシーンでのエリザベスの表情は、この映画を締めくくるに最高のカット。
観終わった自分も、エリザベスと共に心の一部分が成長したと感じられる、爽やかで希望にあふれた作品だ。
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