【古の儀式】メキシコの退魔儀式を描く快作。その伝統文化がすさまじい。

映画【古の儀式】は、2020年に公開されたアメリカのNetfilxホラー映画。取材のため故郷に向かった記者が身体に悪霊が宿っているとして監禁されてしまいました。過酷な状況下で、巫女とその息子が繰り広げる退魔儀式を通じ、悪魔と闘う物語を描いています。低予算独立映画とは言え既存のエクソシズム物語を現代と伝統を混ぜ合わせた躍動感のある新しい悪魔に再創造しています。2020年スペインのシッチェス・カタロニア国際映画祭で初演し、予想外の秀作として誕生しました。

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あらすじ

メキシコの部族文化について記事を書くため、20年ぶりに生まれ故郷メキシコのベラクルスに戻ったクリスティーナ(ブリジット・カリ・カナレス)。

彼女は親友のミランダ(アンドレア・コルテス)の警告を無視し、呪われた洞窟ラ・ボカに入ってしまい、そのまま気絶してしまいました。

彼女が目を覚ますと、巫女ルース(ジュリア・ベラ)とその息子ハービー(サル・ロペス)が住む家の中で鎖に縛られており、逃げる事が出来ない状態になっていました。

ルースはクリスティーナの中に「悪魔が入っている」と主張しますが、悪魔を信じないクリスティーナはもがき続けます。

クリスティーナは、自分の上司であるカーソンに電話をかけて助けを求めたり、鎖を切る為に大きな石で殴ったりと何とか逃げようとしましたが、いずれも成果はありませんでした。

すると、ミランダがルースの家にやってきます。

クリスティーナはミランダに退魔儀式を受けるように説得され、仕方なく退魔儀式を受ける事に。

ルースはクリスティーナの腹から悪魔の痕跡を取り出し、クリスティーナは徐々に悪魔の存在を認めるようになりました。

その時、見えない悪魔がクリスティーナが縛られている部屋に現れ、ろうそくを消したり、ネズミを潰したりする行動をするなど、彼女に恐怖を与え始めます。

果たして、クリスティーナは悪魔から逃げ切ることが出来るのでしょうか……。

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監督と出演者

クリストファー・アレンダー監督

1977年8月18日、アメリカ合衆国カリフォルニア州で生まれたクリストファー・アレンダー監督は、監督兼プロデューサーです。

ジェフリー・ラッシュ主演の【The Eye of the Storm】(2011)や、Disney+配信のインターネットテレビ番組【マペット大集合!!】(2020)で知られています。

クリスティーナ

登場人物紹介:取材のために帰郷し、体内に悪魔いると言われて監禁された記者。

キャスト名:ブリジット・カリ・カナレス

出演作:テレビドラマ【フィアー・ザ・ウォーキング・デッド】(2015)シリーズ、レナ・ヘディ出演の映画【Thumper】(2017)、【ベイビー・ドライバー】(2017)、Disney+配信のテレビアニメ【スター・ウォーズ:バッド・バッチ】(2021)ほか

巫女ルーシー

登場人物紹介:クリスティーナを監禁して退魔儀式を行う巫女

キャスト名:ジュリア・ベラ

出演作:ジョニー・デップ主演の【ブロウ】(2001)や、【リディキュラス・シックス】(2015)ほか

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観る者によって異なる解釈

本作は、悪魔を信じない主人公の意思とは関係なく、強制的に退魔儀式を行う巫女ルースの姿は人間でありながらもとても奇怪でした。

本作は、最後までクリスティーナに憑依した悪魔を追い払うストーリーで進行され、悪魔の姿と退魔の過程は次第に露わになり緊張感と恐怖感を高めます

それでも、実は悪魔の正体やクリスティーナが憑依された理由、映画の結末の意味も明らかになっていない為、観る者に様々な解釈を求めるものとなっています。

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メキシコの退魔儀式

【古の儀式】は、悪魔を追い払うエクソシズム映画で、原題である”The Old Ways”の意味は、”昔の方式”ですが、”古い退魔儀式、聖水を撒いて聖書を使わない退魔儀式”と捉える事が出来ます。

【死霊館】(2013)シリーズや【インシディアス】(2011)シリーズのようなエクソシズムの映画はアメリカが主流であることから、退魔儀式のイメージもアメリカ風というのが印象にあると思います。

しかし、本作はメキシコ文化に伴いメキシコ流の退魔儀式にホラー要素を加えたことで、退魔儀式の強度が一層激しいものとなり、より大きな危険に陥るようになりました。

神父が聖水を撒いて聖書を読み叫びながら悪魔を追い払うものとは違い、巫女が腹の中を切って素手で探って悪魔を引き出したり、複数の蛇をクリスティーナに巻きつけるなどの場面が見られた。

この映画は、メキシコの退魔儀式を代表しているわけではありませんが、ひとつの映画のテーマとして描かれた面では新鮮でした。

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巫女

悪魔払いというと神父が一般的ですが、本作では巫女が他人を治癒するまでの過程を限られた一つの空間で見せています。

巫女の視覚的外見は、北米インディアンや北東アジア一帯の衣装と巫女に似ています。

また、1万4千年前にベーリング海を渡った北東アジア北方民の旧習と痕跡が見られ、特に鈴と羽の飾りはインディアンの姿とも似ていますが、北東アジアのエヴェン族の巫女を連想させました。

エヴェン族とは、ツングース系民族の一つで、主にロシア国内の東シベリア北部地域(マガダン州、カムチャッカ州北部、中部及びオホーツク海周辺、北アジアのヤクート地方、チュクチ半島の一部)に居住する先住民。
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心の病

本作は、エクソシズムをテーマに製作されましたが【エクソシスト】(1973)のような恐ろしいホラーオカルトではありません。

クリスティーナが巫女に、こう話す場面がありました。

「苦しむ人達を見抜く目、苦しむ人達……」

この言葉から、現代人にも心の病が多いというメッセージ性を感じ取り、外見は健康そうに見える現代人も心の中では苦しみ、それを誰にも明かせず一人で耐える為に努力する。

そのような姿は、人間の内面に潜められている悪魔のようで、悪霊よりも人間を蝕む心の病の方が恐ろしいと言えるでしょう。

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恐怖感とスリル感

退魔儀式の行う場面はもちろん刺激的な場面も多く、終始恐怖感とスリル感を与えてくれます。

ホラー映画ですが、残酷なシーンやジャンプスケア、おぞましい心霊系などのようなホラー感は全くない穏やかなホラーでした。

再び故郷を訪れたクリスティーナの本心が何なのかを考えれば考える程、ゾッとする恐怖と共に、何よりも不慣れな文化から来る恐怖が、大いに感じられた映画です。

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