映画【死霊館 悪魔のせいなら、無罪。】は、2021年10月1日に公開されたホラー映画です。歴代の洋画ホラー映画興行第1位の座を9年間守り続けている【死霊館】シリーズの3番目の物語で超常現象を研究するウォーレン夫妻の事件ファイルの中でも最も信じられないほど恐ろしい実話を描いた作品です。
悪霊に憑依されたアルネ・ジョンソンが犯した殺人事件の原因が悪霊である事を証明する為に、奮闘するウォーレン夫妻のストーリーを描き出しています。
あらすじ
1981年、アメリカ合衆国コネチカット州ブルックフィールド村に住んでいたグレッチェル家にて、当時11歳だった末息子デヴィッド・グレッチェル(ジュリアン・ヒリアード)の周辺で、怪奇現象が起きるようになりました。
心配になったデヴィッドの両親は、心霊研究家のウォーレン夫妻(パトリック・ウィルソン/ヴェラ・ファーミガ)にエクソシズムの依頼をします。
しかし、11歳のデヴィッドに憑りついていた悪魔は強力過ぎて、ウォーレン夫妻の手に負えませんでした。
ウォーレン夫妻は、すぐにカトリック教会に助けを求めると、教会は直ちに神父(スティーヴ・コールター)を送り込みます。
ウォーレン夫妻と神父はエクソシズムを実行しますが、デヴィッドに憑依した悪霊は近くにいたデヴィッドの姉の恋人アルネ・ジョンソン(ルアイリ・オコナー)に乗り移っていました。
それを目撃したエドはアルネを助け出そうとしますが、悪霊に攻撃され気を失い入院してしまいます。
ロレインやデヴィッドの家族はデヴィッドが元通りになったことで全てが終わったと思っていましたが、一方で、アルネは悪霊に苛まれてた丁が悪化し、仕事を続けられなくなりました。
家に帰ったアルネは、恋人の同僚であるブルーノ(ロニー・ジーン・ブレヴィンス)が悪霊に見えはじめ、恋人を守る為にブルーノをナイフで22回刺して殺害してしまいます。
そして、入院していたエドは意識を取り戻した直後、ロレインに「悪魔は消えていない」と伝えたのです。
【死霊館】ユニバース
ホラー映画のジャンルの歴史を変えた【死霊館】(2013)は、【死霊館】ユニバースの最初の映画であり、心霊をテーマにした実話映画です。
幽霊ホラーは昔からよく作られてきたテーマで、1979年アミティビル邸の恐怖を扱った映画【悪魔の棲む家】以降、心霊系の映画は増えていきました。
その後、実在の人物である心霊研究家ウォーレン夫妻の視点で描かれた【死霊館】(2013)が誕生しました。
*【死霊館】はジェームズ・ワン監督
エド・ウォーレンは聖書でエクソシズムを行う退魔師であり、妻のロレイン・ウォーレンは霊感が強く幽霊が見えます。
*以下、ウォーレン夫妻の体験談を基に製作された【死霊館】ユニバース。
・【アナベル 死霊館の人形】(2014)
・【死霊館 エンフィールド事件】(2016)
・【アナベル 死霊人形の誕生】(2017)
・【死霊館のシスター】(2018)
・【アナベル 死霊博物館】(2019) *いずれも実話。
ウォーレン夫妻の経験談を基に作られた映画という点で、単なる幽霊ホラー物語とは異なった【死霊館】ユニバースは、世界観を凝集させたアイデアとジャンル的な完成度で興行を成功させ、ホラー映画の新紀元を切り開きました。
全シリーズが北米歴代ホラー映画の興行20位内に入っているという記録があり、興行収益は総計20億ドルで平均制作費の17倍となり、全世界での人気を実感させています。
監督と出演者
マイケル・チャベス監督
マイケル・チャベスは監督兼脚本家であり、スクリームフェスト映画祭で最優秀超短編ホラー映画賞を受賞した【The Maiden】(2016)を含め、複数の短編映画を撮影してきました。
また、テレビシリーズ【Chase Champion】(2015)では全てのエピソードを制作しています。
そして、【ラ・ヨローナ~泣く女~】(2019)で長編映画監督デビューし、ビリー・アイリッシュのミュージックビデオ<Billie Eilish: Bury a Friend>の監督も務めています。
エド・ウォーレン役/パトリック・ウィルソン
エド・ウォーレン(1926-2006)は、カトリック教会が唯一公認した非聖職者の心霊研究家で実在した人物です。
“心霊研究家:ウォーレン夫妻”の名は世界中で知られていたものの、ゆえに個人情報はほとんど見当たりません。
エド・ウォーレン役は、【死霊館】(2013)や【死霊館エンフィールド事件】(2016)に引き続き、パトリック・ウィルソンが務めました。
パトリック・ウィルソンは1973年7月3日アメリカ合衆国バージニア州ノーフォークで生まれ、フロリダ州セントルイスピーターズバーグ育ち。
カーネギーメロン大学演劇科出身で演劇学士号を取得しており、1995年に大学を卒業後、舞台俳優としてキャリアをスタートさせ、【オクラホマ!】(2002)、【Fascinating Rhythm】や【Tenderloin】に出演し、2年連続でトニー賞にノミネートされました。
【My Sister’s Wedding】(2001)で映画デビューを飾り、【オペラ座の怪人】(2004)や【トレイン・ミッション】(2018)など様々な映画に出演。
主演作は【インシディアス】(2010)シリーズ、【死霊館】(2013)シリーズ。
ヴェラ・ファーミガ
ロレイン・ウォーレンは、エド・ウォーレンの妻であり、透視や霊視能力を持っている心霊研究家で、2019年4月 92歳でこの世を去りました。
ロレイン・ウォーレン役には、パトリック・ウィルソン同様【死霊館】(2013)や【死霊館エンフィールド事件】(2016)に引き続き、ヴェラ・ファーミガが演じています。
1973年8月6日、アメリカ合衆国ニュージャージー州クリフトン出身で、女優のタイサ・ファーミガは21歳離れた妹です。
ヒース・レジャー主演のドラマシリーズ【Roar】(1997)でTVデビュー、【リターン・トゥ・パラダイス】(1998)でスクリーンデビューを果たしました。
【Down to the Bone】(2004)では、サンダンス映画祭とロサンゼルス映画批評家協会で最優秀主演女優賞を受賞、2006年にアカデミー賞作品賞受賞の【ディパーテッド】で、世界にその名を知られるようになりました。
【マイレージ、マイライフ】(2009)でゴールデングローブ賞助演女優賞し、【ハイヤー・グラウンド】(2011)では、初監督兼主演を務めています。
信じられない実話
【死霊館 悪魔のせいなら、無罪。】は、ウォーレン夫妻に最も衝撃を与えた恐怖の実話を描いた作品です。
本作は、悪霊が宿った家や人形をテーマに描いたホラー映画とは異なり、史上最高のミステリー記録として残った殺人事件をモチーフに、舞台を法廷にまで広げました。
事件から40年が経った今も、裁判でそれを証明出来る方法は簡単なことではなく、むしろ難しいと言われています。
当時、ウォーレン夫妻が悪霊の存在についての証明資料を提出し、無罪を主張した事によって “裁判にどんな影響を与えたのか” という点も、見どころポイントです。
【死霊館】シリーズは、全て実話に基づいて制作されていますが、中でも実在の人物へのインタビューや、実際にエクソシズムを行っている写真や音声ファイル、存在している物品を見せるシーンは映画の信憑性をより高めています。
1981年に実際に起こった殺人事件の真実、そして新たなウォーレン夫妻の物語など見どころ満載になっています。
悪魔に憑依されたアルネ・ジョンソン
1981年、およそ40年間、真実が明らかにされなかったアメリカ史上初の悪魔憑依裁判として記録されている”アルネ・シャイアン・ジョンソン事件”。
当時19歳の青年であったアルネ・ジョンソンの恋人の11歳の弟のデヴィッド・グラツェルが、引っ越しした家の掃除をしていた時に悪霊に憑依されます。
家族は、デヴィッドの突然の奇妙な行動に恐怖心を抱き、20年以上の長い経歴を持つ心霊研究家のウォーレン夫妻に依頼して悪魔祓いを行ってもらいました。
悪魔祓いをする途中で、その悪霊がアルネ・ジョンソンに移ってしまい、悪霊に憑依された彼は家主を殺害してしまいました。
しかし、裁判でアルネ・ジョンソンは「デヴィッドに憑りついていた悪魔が私に憑りついた。家主を殺害した時、悪霊に操られていたから当時の自分には責任能力はない」と無罪を主張。
さらに、ウォーレン夫妻はアルネ・ジョンソンの裁判で、”悪霊の存在”を証言したそうです。
ウォーレン夫妻はアルネ・ジョンソンに3回のエクソシズムを行い、彼の身体にはおよそ43人の悪霊が入っていると結論を下しました。
アルネ・ジョンソンには、10~20年の刑を宣告されましたが、実際には5年しか服役していません。
前作と本作の差異点と共通点
【死霊館】(2013)と【死霊館 エンフィールド事件】(2016)では、【エクソシスト】(1973)のように悪霊に取り憑かれた被害者を特定の空間に閉じ込めて悪魔祓いをする反面、本作では悪魔崇拝者によって呪われた被害者を助け出すといったストーリーの違いが目立ちます。
また、エンディングでウォーレン夫妻は、悪魔祓いした時の道具が誰かの手に渡らないよう、家の倉庫に封印しておく場面が本作でも見られます。
こういった道具にも焦点を当て、これまで起こった物語があまりにも恐ろしい実話であることを強調していました。
心霊オカルトと演出
本作は典型的なオカルトのジャンルでありながら、ウォーレン夫妻が事件の真相を追う物語を中心に展開しています。
オープニングでは【エクソシスト】(1973)を連想させる悪魔祓いの場面から、オカルトジャンルの不気味な色合いを強調し、作中で窓が急に赤くなり全てが赤に変わるシーンは、命が危険な状況である事を示しています。
また、刑務所に収監されたアルネ・ジョンソンが悪霊に操られて自殺しようとするシーンでは、冷たく不気味な雰囲気を青い光で演出していました。
ウォーレン夫妻はアルネ・ジョンソンの裁判で、”悪霊に支配されたことによる殺人”という事実を、法廷で証明しなければなりませんでしたが、事件解決後は温かい色感を演出して平穏な感じを与えています。
このように、様々な状況を色で演出していたのがとても印象的で、ストーリーの伏線も巧妙に敷かれていました。
ウォーレン夫妻の愛の力
【死霊館】シリーズは、これまでのホラー映画ジャンルが追求してきた残酷なグロテスク映画や幽霊に遭遇しただけの映画とは違い、家族愛にも焦点を当てるなど緻密な構成で娯楽性を高めています。
ホラー映画ながらも、主人公らの愛の力で苦難や逆境を乗り越えたり、事情のある家族は家族愛で関係を克服する場面が見られました。
また、今まで語られる事のなかったウォーレン夫妻のラブストーリーも描かれており、17歳で初めて出会って恋に落ちたウォーレン夫妻の愛は、こんなにも強く結ばれているんだと改めて実感させられました。
バスシーバとヴァラクに続く悪霊
【死霊館】ユニバースには、様々な悪霊が登場しました。
これら【死霊館】ユニバースと呼ばれるスピンオフ映画も作り出し、大きな話題を集めました。
本作では、悪役と言われる対象が人間なのか悪魔なのかはとても重要な要素です。
また、実話に基づいているためか、目に見える悪霊が姿を現わさなくとも恐怖心と緊張感を煽り、特に2人の主演俳優の表情と演技が、映画の恐ろしい雰囲気に導いていると言っても過言ではありません。
今回は史上最高最強の悪魔が登場しましたが、今後そんな悪魔をメインに描くスピンオフ映画が登場するのか期待が高まります。
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