【ジョジョ・ラビット】あらすじと見どころ。
本作は【シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア】(2014)などを初めとするシュールかつコミカルな作品で注目され、【マイティ・ソー バトルロワイヤル】(2017)で一気に知名度を上げたタイカ・ワイティティ監督が作り出した逸品。
戦争の恐ろしさを子ども目線でコミカルかつ大胆に描いた本作は、第92回アカデミー賞でも6部門ノミネートされています。
この記事ではその注目作品【ジョジョ・ラビット】をご紹介いたします!
【ジョジョ・ラビット】のあらすじ
第二次世界大戦中のドイツ・フォルケンハイム。
10歳のジョジョは、念願だったヒトラー・ユーゲントの合宿に参加します。
2日目にしてうさぎを殺せなかったことからジョジョ・ラビットとあだ名をつけられ、臆病者とからかわれました。
森の中に逃げ出すものの、彼の空想の友人であるアドルフ・ヒトラーに元気づけられます。
そのテンションのまま手榴弾の投てき訓練に飛び込み、指導者であるクレンツェンドルフ大尉から手榴弾を奪い取い、自爆してしまったが故に顔に大ケガを追ってしまったのです。
【ジョジョ・ラビット】の見どころ・ネタバレ
レトロでポップ、しかし確かに戦争映画
主人公はヒトラーこそ偉大である!と思ってやまない10歳のジョジョ。
彼の部屋には、たくさんのナチス・ヒトラー関連のポスターが貼り付けられていました。
ユダヤ人は悪い悪魔であると思い込んでいる彼を、母ロージーはコミカルに「愛や寛容なこころが大切である」ことを教えていきます。
ビートルズの「抱きしめたい」や、デヴィッド・ボウイの「Helden(ヒーローズ」などのBGM(挙げた2曲ともあえてドイツ語版なのが素晴らしい)とともに、色鮮やかなシーンが多い本作。
しかし、確かにロージーが匿っているエルサをジョジョが見つけたり、ロージーが大変なことに巻き込まれたりと、話が進むにつれどんどんと戦争の足音は大きくなっていく様をとても巧みに描き出していると思います。
自分でちゃんと知るということ
「ユダヤ人は角が生えていてみにくい生き物が好きで……。」
そんな情報を「本当」だと思いこんでいるジョジョ。
ユダヤ人であるエルサを見つけても、自分もロージーも協力者として殺されてしまう可能性から、ユダヤ人撲滅のための本を書くことにして、エルサに色々質問したりリサーチを重ねます。
しかし、話していくうちにジョジョは彼女に惹かれていってしまうし、いやいやよく考えたらなんてことない普通の人間なのでは……?
そんな疑問を持ち始めていきます。
冒頭のヒトラーユーゲントの合宿へ参加する子どもたちにも言えますが、教え込まれている情報を鵜呑みにして「ヒトラーは偉大である」という洗脳じみた考え。
ジョジョは、エルサという女性を母ロージーを通じて自ら経験して学んでいくというシーンがちりばめられているところが、何とも特別であり本作の要ではないでしょうか。
自由を楽しんで前に進め!
ジョジョは、「辛いときにも明るい気持ちと愛を大切に」という言葉を人間にしたような母・ロージーのことを、時には考え方の違いで喧嘩をすることもありましたが、彼は母のことが大好きでした。
エルサも、自由になったらダンスをすると言っていましたし、まだこれからの世界に希望を抱いて諦めてはいません。
彼女たちの気持ちはラストに浮かぶ「絶望が最後ではない」という詩人・リルケの言葉を見事に一貫させた映画であると思います。
色々なことを知り学び、ヒトラーは英雄でも偉大でもなかったと気づいたジョジョの空想の友人アドルフに対するラストは、結構ひどいものですが……。
ジョジョも自ら思い込みであったことに気づき、自分で考え行動できるように自由を手に入れたひとりなのではないかと感じました。
【ジョジョ・ラビット】まとめ
タイカ・ワイティティ監督自身がマオリ系ユダヤ人ということもあって、迫害や差別など思うことがあったであろう今回の映画のテーマ。
理不尽なことがあっても諦めず、我慢してでも最後まで希望を持ち続ける、ということを辛く暗いイメージで描くのではなく、あくまでポップにパワフルに描いているところが”さすが監督”と思わずにはいられません。
また、クレンツェンドルフ大尉(キャプテンK)とその部下であるフィンケルの関係も、本編でも仄めかしてはいましたが、公式パンフレットを参照するとキャプテンKはゲイらしく、ナチスは同性愛者もユダヤ人同様迫害の対象でした。
秘密警察(ゲシュタポ)によるジョジョ宅の家宅捜査の緊迫シーン、ジョジョがナチスのジャケットを羽織っていたが故に連合軍に捕まってしまったシーンで、ジョジョを助けてくれた彼。
無知でありつつも素直なジョジョに対してある意味「異端」な存在であるキャプテンKだからこそ、エルサを匿うという危ない行為についてやジョジョを助けたことについてもなにか思うところがあったのかと考えると涙なしには観れません……。
アカデミー賞含め、まだまだ目が離せない作品です!
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