カーマン家の謎: 殺人、相続と失踪事件(Netflix)実際に起きた事件を解説。「家族の死」が相続・失踪・疑惑というキーワードとともに語られるとき、私たちはそれを“悲劇”として受け止める。でも、その裏にあるのは、もしかすると“誰かの意図”というものかもしれない。今回の作品「カーマン家の謎」は、そんな重くて複雑なテーマを浮かび上がらせる。主人公の若い男性が海上で救助されたがその母親は失踪。さらにその背後には莫大な資産・相続・家族間の確執が絡んでいた――という実際に起きた事件を整理する。
作品情報
カーマン家事件
事件のあらまし

舞台は米国ニューヨーク州近くおよびロードアイランド沖。ネイサン・カーマン(当時22歳)は、2016年9月17日、母親の リンダ・カーマン(54歳)とともに、釣り船「Chicken Pox」で出航した。
しかし、翌日までに帰港せず、救助が開始された。そして8日後、ネイサンだけが救助された(ライフラフトで漂流していた)一方、母親のリンダの姿もボートも発見されなかった。
ネイサンは「船が浸水し(事故で)沈んだ」と説明したが、捜査当局や家族・保険会社側は疑問を抱える。さらに、この家族にはもうひとつの“死”があった。
ネイサンの母リンダの父親、 ジョン・チャカロス(87歳)は、2013年12月20日に自宅で射殺された。この事件と母親の失踪事件・相続問題が絡み合って、「家族の死=事故か故意か」「誰が得をしたか」という疑念が浮上する。
相続・財産が鍵
なぜこの事件がただの“事故”や“遭難”で終わらなかったか。その背景には、チャカロス家の莫大な資産が関わっている。ジョン・チャカロスは資産家であり、その遺産は4000万ドル以上とも言われている。
リンダはその資産を娘として継承する立場にあり、さらにネイサンも恩恵を受けうるポジションにあった。
実際、検察側は「ネイサンが母と祖父を殺害することで、家族の財産を手にしようとしたのではないか」として捜査を進めていた。
ボート事故とされるリンダの失踪後、ネイサンが保険金請求を試みたことや、ボートの改造・浸水の疑いなども取りざたされている。
これらが、“単なる海難事故”で終わらなかった背景であり、ドラマにおいても「家族/財産/裏切り」という構図を際立たせている。
疑惑・捜査の流れ

捜査では、いくつもの疑問点が浮上した。例えば、ネイサンが救助された際の漂流状況や装備・供給物資の量が、彼の説明と整合しないという専門家の見解があった。
また、祖父ジョン殺害事件ではネイサンは起訴されなかったものの、家族間の怒りや疑念がくすぶっていた。さらに、ネイサンは2022年5月に母の失踪・死亡に関して連邦レベルで詐欺および殺人の起訴を受けた。
しかし、2023年6月に拘置中に死亡(自殺とみられている)し、裁判での決着を迎えることなく幕を引いた。こうした展開も含めて、作品が“未解決の疑惑”という含みを持って描かれているのだ。
ドキュメンタリー映画における見どころ
視点
- 「海上での漂流」というサバイバル的ドラマ+“何かを隠している”感
- 家族の内情、相続・信託・資産管理という現実
- 犯罪か事故かの二択ではなく、その間にあるグレーゾーン
- 被害者/容疑者という極端な立場だけでは語れない「関係者全員が置かれた状況」
- この事件の“崩壊した家族世界” “信頼の瓦解” “財産を巡る闇”という要素
ポイント
- 「漂流と失踪」:ボート沈没→母親行方不明→息子だけ救助という流れ。その海―孤立/無力感という終末感。
- 「相続という毒」:財産が持つ光と影。資産があればこそ、「殺人」「失踪」が選択肢として浮かび上がるという皮肉。
- 「裏切りの家庭劇」:祖父殺害疑惑、母との関係、兄弟姉妹/伯母たちの視点。血縁関係が崩れるさま。
- 「真実はどこに?」:裁判不成立・容疑者死亡という結末「答えなき物語」。
「カーマン家の謎」は、”一見すると海難事故”、”一見すると相続トラブル”に見えるものの、その背後には“誰かが何かを仕掛けた”可能性を孕む、深く重い事件だ。普通の家族が、資産と運命と疑惑に巻き込まれて崩壊していく様は、まさに終末的なドラマとも言える。
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「カーマン家の謎:殺人、相続と失踪事件」(c)Netflix
紹介している作品は、2025年10月時点の情報です。現在は配信終了している場合もありますので、詳細は各公式ホームページにてご確認ください。
