【幸せなひとりぼっち】ふれあいの大切さ、薄れゆくものにフォーカスを。

幸せなひとりぼっち
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映画【幸せなひとりぼっち】あらすじと感想。近年「ご近所付き合い」というものが都会は特に少なくなってきているかと思います。そんな現代にちょっぴり考えさせられる作品が本作【幸せなひとりぼっち】(2016)。第89回アカデミー賞でもノミネートされた、心温まる交流をぜひ今、この時期に。

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【幸せなひとりぼっち】のあらすじ

がんこで口うるさいオーヴェ(ロルフ・ラッスゴード)は、最愛の妻ソーニャ(イーダ・エングヴォル)を亡くしたことにもショックを受けていました。

それにプラスして、43年勤めていた鉄道会社をクビになってしまったことから生きる希望を失ってしまい、首をつって死のうとします。

しかし、向かいに引っ越してきたイラン人女性パルヴァネ( バハール・パルス)をはじめとした、家族のやかましさに邪魔されて自殺は失敗に終わります。

その後も、あれやこれや自殺を試すもののパルヴァネの容赦ない言動に失敗続き。

オーヴェは鬱陶しく思うものの、パルヴァネらと接するうちに徐々に心境の変化が……。

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【幸せなひとりぼっち】の見どころ・ネタバレ

スウェーデン国内で社会現象にまでなった話題作!

スウェーデンの人気作、フレドリック・バックマンのデビュー作である原作を映画化した本作。

当時スウェーデン国内では【スター・ウォーズ/フォースの覚醒】(2015)が上映していましたが、スウェーデン国内では国民の約5人に1人が足を運び、興行ランキング首位を勝ち取るくらいに人気で話題を呼びました(日本版ポスターにもキャッチコピーとして書かれています)。

それだけ人気だったこともあり、スウェーデンのアカデミー賞ともいわれるゴールデンビートル賞にて主人公・オーヴェを演じたロルフ・ラスゴードは主演男優賞・観客賞を受賞しました。

冒頭で申し上げた通り、第89回アカデミー賞にも外国映画賞とメイクアップ&ヘアスタイル賞にノミネートされたほど、国外での注目度も高かったのです。

薄れゆくものにフォーカスを。

【屁理屈おじさんが実は過去に暗くてつらい記憶を抱えていて、なにかきっかけがあって徐々に明るく元気になっていく】というストーリーで、主人公がおじさんと言うことは さほど珍しくありません。

それでも、本作はどちらかといえば「おじさんとご近所付き合い」にフォーカスが置かれている作品だと思います。

もちろん、如何にしてオーヴェが屁理屈おじさん(正確にいうと不器用おじさん)になっていったのかも、ホロリと切ない過去編で観客たちは理解するのですが、イラン人女性・パルヴァネ含めた一家が彼の向かいに引っ越してきて、ご近所付き合いをイヤイヤせざるを得なくなったからこそオーヴェの気持ちに変化が現れました。

島国であまり同国出身者以外の人が近くに住むということが少ない日本ですから、宗教上の問題など異なるルーツ・文化を持つであろう他の国の人とコミュニケーションをとってご近所付き合いをしていくということはお互いのリスペクトあってこそ成り立ち、仲良くなればより強い刺激が受けらるのかもしれません。

死ぬのが下手な理由は?

「おじさんとご近所付き合い」にフォーカスが置かれている、と書きましたが、もうひとつのテーマは孤独・自殺だと思います。

日本でも「孤独死」が問題になっていますが、オーヴェもまたその可能性がある歳にさしかかっている人物と言えるでしょう。

また、日本は自殺大国と言われてしまうほどにこのテーマも深刻な問題のひとつです。

しかし、彼の場合は生き延びてしまいますし、そもそも孤独にさせてもらえなくなってしまいました。

本編で何度も試みているオーヴェですが、首吊りをはじめに一酸化炭素中毒・列車飛び込み・拳銃自殺などいろいろな方法を試そうとしていますが、ことごとく失敗してしまう理由は彼自身がなんだかんだおせっかいでやさしいからかもしれません。

「ケガしたから病院に連れてってほしい」というお願いや、行く当てのない少年を適当にあしらってそのまま死ぬことだってできたはず。

それにも関わらず、渋々ではありますが彼は他人の力になるため自殺をわざわざ中断し、相手の頼みを聞くことを優先しています。

生きる気力・希望を失い、ふさぎ込んで孤独と天国へ行ってしまったソーニャの後を追うことを願っていたオーヴェを留まらせたのは、彼の今までの行いと性格、そしてパルヴァネを含むご近所さんの生きるパワーだったというわけです。

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【幸せなひとりぼっち】のまとめ

最初はいけすかない・すぐ文句を言う面倒なおじさんと思っていましたが、見続けていくうちにオーヴェの気持ちや変化に気づいていき、ラスト中盤にて「白シャツ」相手に痛快な気持ちにさせてくれつつもドキッとさせられてホッとする羽目になります。

そして、ラストでは驚きつつもご近所の方々がオーヴェをどう思っていたのかがよくわかる、悲しくはありますが心がじんわり温かくなるような映画だと思います(オーヴェは最後まで頑固ではありましたが)

また、同じ屋根が並ぶ住宅街、スウェーデン車・サーブなど、「スウェーデンらしいもの」がシーンによく映るためぜ、ひその点にも注目していただきたいと思います。

なお、トム・ハンクス主演でハリウッドリメイクも進行中とのことなので、スクリーンでまたオーヴェにお目にかかれる日は近いかも!?

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