映画【ビッグ・ウェンズデー】ネタバレ。
水曜日にやってくるという伝説の大波ビッグウェンズデーを求めて、たくさんのサーファーが海に集まる。
しかし「それ」は、いつ来るか分からない予測不能の伝説の大波だった。
サーファーたちは毎日浜に通い、その大波が来るのを待ち続けている。
そして、キングと呼ばれたマット、ジャック、リロイの3人も同じ思いだった……。
彼ら3人を中心に、マットとジャックの苦悩や友情、挫折、そして別れまでを描いた不朽の名作『ビッグウェンズデー』。
2019年2月に死去したマット・ジョンソン役のジャン=マイケル・ヴィンセントを忍びながら、本作を完全ネタバレでお届けします。
『ビッグ ウェンズデー』ネタバレ「南のうねり」
マット・ジョンソン
南のうねり 1962年夏
あのころ風が谷を吹き抜けていった
”サンタナ”という南風で暖かな香りを運んだ
夜明け前ポイントで風が吹く
僕らは車で寝て海風に起こされた
毎朝思った”今日は特別な日だ”
映画『ビッグ・ウェンズデー』から引用
これは、マット・ジョンソンやジャックたちの友情や愛、苦悩、挫折、別れを描いた不朽の名作である。
ジャック(ウィリアム・カット)とリロイ(ゲイリー・ビリー)は、飲み過ぎて足元がフラついているマット(ジャン=マイケル・ヴィンセント)を支えながら海にやってきました。
マットはまだ酒が抜けずに、まともに歩くことは出来ません。
やっとの思いで浜にたどり着いたマットに、リロイはサーフボードを持っていた若者にサーブボードを貸してほしいと頼みます。
「マゾヒストのリロイだ。友達が死にかけてる。水につけりゃ生き返るから貸してくれ。」
しかし若者は「待てよ。悪いが人には貸せない」と拒否します。
リロイは、マットを差しながら「貸したくない気持ちは分かる 彼はマット・ジョンソンだ。水に入れてやらないと。頼むよ 必ず返すから」と引き下がりませんでしたが、若者の方も貸さないという意志を曲げません。
怒ったリロイは若者の胸倉を掴んで無言でゆすって威嚇しました。
すると、一緒にいた少年が「自分のを使っていい」と、ボードを貸し出します。
2人はどうやら、マットをただの酔っ払いだと思っていたようでした。
リロイはボードをマットに渡すと、3人で海に入って行きましたが、マットはボードに座るのがやっとの状態。
ジャックとリロイは、俺達に頼るなと先にいってしまいます。
そこに大きい波がやってきました。
「あんな波無理だ。あのままでは死んでしまう」
若者と少年は動揺するもその瞬間、マットは華麗に波に乗りボードを思うがままに操ったのです。
「本物のマット・ジョンソンだ。マットが僕のボードに乗ってる」
2人は彼が本物のマット・ジョンソンであるとわかったのです。
後日、海にはいつものようにたくさんのサーファーが波乗りを楽しんでいました。
朝の静かな波に乗って疲れると、桟橋にあるベアーの店へ。彼はボードを作りいろんな話をしてくれた。波乗りの先輩として尊敬してたんだ。
映画『ビッグ・ウェンズデー』から引用
ジャックとサリーの出会い
マットたちは波乗りを終えると、いつも行くダイナーがありました。
若者が集まるその店に到着すると、誰かがジャックに「今夜パーティがあるんだって?」と声を掛けてきます。
どうやら、マットとリロイが”ジャックの家でパーティをする”と、勝手に広めたようでした。
店に入ると、「今夜はパーティだって?」と女性オーナーからも言われるほど話は広がっていましたが、ジャックは「何の話か分からない」と答えます。
しかし、その横でマットとリロイが笑っていました。どうやら、彼ら2人の仕業に間違いないようです。
ジャックは、ダイナーで働き始めたというサリー(パティ・ダーバンヴィル)という女性に一目惚れしたようで彼女との話に夢中。
その一方で、マットとリロイが食べ物をぶつけ合ってふざけ始めます。
2人は、怒ったオーナーにつまみ出され、ジャックまでとばっちりを食って締め出されてしまいました。
そして閉店後にジャックはダイナーを訪れ、彼女をパーティに誘ったのです。
パーティには、ワクサー(ダレル・フェティ)を初めとする大勢の仲間が集まりましたが、ほとんどがジャックの知らない人たちばかり。
音楽やダンスやらで大騒ぎをしていると、数人の”押しかけ”がやってきました。
押しかけとはパーティ荒らしのこと
相手が威嚇してきたため、リロイが一発目に殴りかかったのを合図にパーティに来ていた仲間たちが応戦。
ジャックの家はメチャメチャになってしまいましたが、押しかけを追い出すことができました。
後日、マット、ジャック、リロイ、サリー、ジャックの恋人ペギー(リー・パーセル)の5人が浜辺で楽しんでいる時、ペギーから妊娠したとの報告を受け、みんなは彼女とマットを祝福しました。
一方でベアーは、桟橋に立てた小屋でサーフボードを作っていましたが、どうやら今までいなかった監視員を導入するためか、立ち退きを命ぜられたのでしょう。
ボードも作れなくなり、「ポイントを乗っ取られる」と、酒を飲んで荒れていたのです。
陸の人間として暮らすことに抵抗があるようでしたが、ベアーはすぐに街中に「ベアーの店」というサーフショップを開店しました。
『ビッグ・ウェンズデー』西のうねり
変化
西のうねり 1965年 秋
過ぎ去った夏 もう覚えていない
秋と冬の足音
水は冷たくなり 西のうねりの季節だ
変化の波 一人だけで乗る
映画『ビッグ・ウェンズデー』から引用
浜に監視小屋が設置されると、ジャックはすぐに監視員として職を得たものの、手には”召集令状”を広げていたのです。
この頃、ベトナム戦争の真っただ中で、召集令状が届いたのはジャックだけではありません。
2日前には、マットのところにも届いていたのです。
召集令状を見ながら、難しい顔をするジャック。
その時、浮浪者が浜で寝ているのを見つけ拡声器で声を掛けました。
「ヘイ、壁の所にいるやつ。野宿は禁止されてる、さっさと…マ、マット!?」
マットがあまりにも酷い格好をしていたため、ジャックはすぐに男がマットだとは気づかなかったのです。
マットに近寄って声を掛けますが、マットはジャックを拒否して、ふらりと道路の方へ向かってしまいました。
相変わらず彼は浴びるほど酒を飲んでいる様子で、フラフラしながら走り来る車に毛布で闘牛士のマネをしていたのです。
ところが、毛布がクルマのフロントガラスに掛かってしまい、視界を失った車が別の車にぶつかり、また別の車が巻き込まれ……と、大事故に発展してしまいました。
ジャックは、落ち込むマットを1発殴り「浜から出て行け」と、彼を追い出したのです。
それ以来、マットとジャックは疎遠になってしまいましたが、何かあった時こそ、友人の支えが必要だというベアーの結婚式当日に和解しました。
召集令状
マットやリロイ、ワクサーたちは何とか兵役を逃れようと、それぞれがある計画を実行しました。
マット:足を杖で殴って骨の形を変形させ”生まれつきの形成”だということにしました。杖がなくては歩けないと、兵役を逃れました。
リロイ:マゾヒストのリロイと呼ばれているのを利用して、精神状態が不安定だとアピール。兵役は免れたものの、精神病院に入れられてしまいます。
ワクサー:自分はゲイだから、戦争には行きたくないわ!とゴネたものの、戦場には男がいっぱいいるから好都合だろうと、逆に海兵隊に入れられてしまったのです。
ジャック:誰にも告げずに、自ら志願しました。
そして、ジャックの入隊前日。
仲間たちは、次の日の朝までジャックと一緒の時間を過ごし、それぞれが惜しみながらジャックを見送ったのです。
しかし、サリーは相談もせずに志願したことを納得できなかったのか、ジャックを見送ることなく姿を消してしまいました。
『ビッグ・ウェンズデー』北のうねり
時代の流れ
北のうねり 1968年 冬
北のうねりは冷たく寂しく危険だ
冬の終わりに激しく打ち寄せる
学校をサボってはポイントへ見にいった
干潮の午後には遠くに明かりが
冷たく澄んだ水と岩
すべてが過去の話だ
浜や岩や波は変わらない
人が変わる
結婚したり陸に上がったりポイントを変えたり
死んだ者も
映画『ビッグ・ウェンズデー』から引用
ジャックたちが戦場に行ってから数年。
マットは、ワクサーの葬儀に訪れていました。
仲間は誰ひとりとして出席していなかたことに、マットは納得がいかずに苛立ちを隠せません。
そんな彼をなだめるのが妻ペギーの役目でもありました。
かつてダイナーだった場所は、香が漂う”宇宙カフェ”を化し、年月の移り変わりを伺えます。
マットは宇宙カフェでペギーと待ち合わせして、ワクサーの葬儀の話と「波のドリーム」の試写会の招待状が届いた話をしました。
この試写会では、”かつての名サーファーの紹介”でマットの映像も流れると言うことで、子供に父親の雄姿を見せたいを見せたいと親子3人で行くことにしたのです。
ところが、時代はマットを求めてはいなかったのか、劇場では彼の映像にブーイングする者もいました。
もう自分は時代を外れた……と、打ち付けられたのでした。
ジャック
ある日、ペギーが娘を浜辺で遊ばせていた時、兵役を終えたジャックが3年ぶりに戻ってきました。
ジャックは、家にも帰らずサリーの元へも行かずに、一番に海にやってきたのです。
久しぶりに触れたサーフボードと馴染みのある海水。
そして隣には、マットの姿もありました。
久々に波乗りを楽しんでいると、かつての仲間から「ベアーが全財産失って、妻にも出ていかれて飲んだくれている」という話に、「ベアーのことはいつも考えていた」と、心配する様子を見せていました。
海から上がったジャックは、サリーへのプレゼントとして鳥かごと小鳥1羽を持って彼女の家を訪れます。
対応に出てきたのは、髭を生やした男性でした。
男性はすぐにジャックだと分かった上で、サリーは自分の妻だといいます。
そして「会いたい」というジャックに、「今はやめた方がいい」と門前払いをしたのです。
ジャックの恋は終わってしまいました。
彼女は、自分に相談もなく志願したこと、ジャックは戻らないと諦めてしまったのか、彼の帰りを待つことなく再婚していたようです。
夜になると、マットとジャック、ハワイから帰ってきたリロイの3人でワクサーが眠っている墓地に行き、彼が好きだった酒を片手に、昔話をしながら彼を忍びました。
まさかワクサーが死ぬとは……。
そんな悲しみを抱えながら、3人は墓地を後にしたのです。
『ビッグ・ウェンズデー』大きなうねり
ベアー
大きなうねり 1974年 春
風はどこから 神の息か 何が雲を作るのか
大きなうねりはどこから 何のために
長い間 待ち続けた時がきた
映画『ビッグ・ウェンズデー』から引用
その日は突然やってきたのです。
マットは正式にペギーと結婚し、ジャックは帰還後、海の監視員を続けていました。
大波が来ていると知らせるため、マットはジャックの家を訪れましたが、彼はあちこち移動しているようで連絡が取れなかったのです。
そして夜になるとマットは、かつてベアーの作業場があった桟橋に向かいました。
真っ暗な桟橋には、ホームレス状態の酔ったベアーがいたのです。
マットは心配して自分の家に来るよういいますが、ベアーは「放っておいてくれ!」と、頑として聞きません。
それどころか、いつか大波が来ることを考え、マットのために作ったという新品のサーフボードを渡したのです。
全財産を失っても、それだけは決して手放さなかったというベアー。
マットへの愛と、海への敬意と愛情が伝わってきます。
翌日には、並みは15フィートもある巨大波と化していました。
ビッグ・ウェンズデー
監視室から海に入るのは危険だと、監視員に警告するよう言いますが「どんなに危険でも連中は海に入る」と、監視員も様子を見るにとどまります。
まさにその通りで、次々とチャレンジーするサーファーたちが海に入って行きました。
しかし、自然の脅威には抗えず怪我人が続出し、救急車を呼ぶ事態に……。
そんな中、マットはひとりベアーに渡されたボードを持って海に向かいます。
そして、石段を下りていくとそこには、ジャックとリロイの姿が……。
彼らはマットが来るのを待っていたのです。
3人は並んで海に向かい、待ちに待ったビッグ・ウェンズデーに挑みます。
ゴーッと凄まじい音を立てて荒れ狂う波に立ち向かう海のキングたち。
その様子をベアーもしっかり見ていました。
リロイが先に行き、続いてジャック。
最後にマットが見事なパイプラインを披露したものの、最後は大波に飲み込まれてしまいました。
すると、ジャックとリロイが海に飛び込みマットを救出。
マットは足に怪我を負っただけで助かりました。
浜に上がったマットは、ボードを拾ってくれたという若者に、「また大波が来たら乗れ」とボードを渡したのです。
そしてその様子を嬉しそうに見守るベアー。
こうして彼らは、時代に終わりを告げたのです。
『ビッグ・ウェンズデー』を観た感想
『ビッグ・ウェンズデー』は、何度、何十回と観ても飽きない名作です。
サーフィンをやらない方でもサーフィンを知らない方でも、誰もが経験する”変化”に共感し、心揺さぶられるはず。
3人が並んで浜を歩く姿は、鳥肌が立つほどカッコイイの一言で、マットがパイプラインをくぐった瞬間は、息が止まるほど素晴らしく美しいシーンでした。
映画の舞台はカリフォルニアですが、ビッグ・ウェンズデーのシーンはハワイで撮影されたので、作中に登場する海の景色よりも鮮やかに感じられることでしょう。
またマットのモデルとなているのは、ランス・カーソン。ベアーのモデルとなっているのはハッシュ・ジェイコブス。
ハッシュ・ジェイコブスは、60年代に活躍したカリフォルニアのサーファーであり、サーフボード製作の先駆者で、ランス・カーソンは、カリフォルニア州でトップクラスのサーファーのひとりでした。
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