【活きる】ネタバレと解説。激動の中国に翻弄された家族の運命は?

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【活きる】ネタバレと解説。本国では上映禁止とされるも、カンヌ映画祭でグランプリを受賞した珠玉の名作。中国毛沢東の波乱の時代背景をわかりやすく解説。

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【活きる】あらすじ

1940年代、資産家の放蕩息子、福貴(フークイ/グォ・ヨウ)は賭博に明け暮れていた。

妻の家珍(チアチェン/コン・リー)の再三の説得にも耳を貸さず、ついに全財産をすってしまう。

賭博相手の龍二(ロンアル/ニー・ダーホン)が家屋敷を没収しにくると、父はショックで悶死し母は寝込んでしまった。

福貴は賭博をやめ龍二に借金を頼むが、龍二は金の代わりに自分が今まで生業としていた影絵芝居の道具を渡す。

福貴は家族を置いて、影絵芝居の巡業に旅立つが……。

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【活きる】登場人物

福貴(フークイ/グォ・ヨウ)

資産家の息子で賭博クセがあった。

影絵芝居はもともと趣味でもあり、特技でもあった。

家珍(チアチェン/コン・リー)

福貴の妻。

福貴が賭博をやめないので、一時期子供を連れ実家に帰っていたが、福貴の苦境を知り戻る。

龍二(ロンアル/ニー・ダーホン)

福貴の賭博仲間だが、身分は下で福貴に媚びていた。

福貴から屋敷を没収すると、立場は逆転する。

春生(チュンション/グオ・タオ)

福貴の影絵芝居の相棒。

車の運転に興味がある。

鳳霞(フォンシア)

福貴と家珍の娘。

高熱のため言葉を発することが出来なくなる。

有慶(ヨウチン)

福貴と家珍の息子。

いじめっ子をから姉を守る勇敢な男の子。

二喜(アルシー/ジアン・ウー)

足が不自由だが優しい鳳霞の夫。

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【活きる】国共内戦時代(1940年代)

徴兵

ある町で影絵芝居をやっていると、突然国民党軍がやってきた。

福貴と相棒の春生はその場で徴兵され、大砲を引く毎日を送ることになる。

家に帰りたい福貴だが、同郷の老兵が「脱走すれば殺される」と忠告してくれる。

その後、ある野営地で大勢の負傷兵が捨てられ、寒さで凍死していくのを見て恐ろしくなるが、逆に生きたいという気持ちが強くなる

翌朝目を覚ますと国民党軍は逃げていて、老兵は人民解放軍に殺される。

福貴と春生も囲まれるが、影絵芝居が出来るとアピールし、生き延びることができる。

帰郷

春生は人民解放軍の運転手として残ったが、福貴は解放された。

故郷に戻ると、家族は困窮にあえいでいて母はすでに死んでいた。

娘の鳳霞は高熱のため命は助かったものの、言葉を発することが出来なくなっていた。

それでも家族が再び会えたことを喜び、何とか生活を送っていたある日、かつて福貴から屋敷を取り上げた龍二が地主だからと人民裁判にかけられたことを知る。

間もなく龍二は銃殺され、福貴は「屋敷を取り上げられなければ自分が殺されていいた」と胸を撫でおろすのだった。

国共内戦
1946年から1949年にわたる中国国民党(中華民国)中国共産党(人民解放軍)の内戦。
1949年に人民解放軍が勝利し、指導者毛沢東中華人民共和国を樹立する。
敗れた国民党・蒋介石は台湾に逃れ、中華民国を存続させた。
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【活きる】大躍進(1950年代)

大躍進政策の一環として、鉄鋼生産量をあげるために、国民は家庭の鉄を提供し、町内単位で粗鋼を生産することが義務付けられていた。

子供も大人も製鉄の仕事をする中、福貴は影絵を上演し、人々を和ませていた。

喧嘩はするものの家族仲睦まじく暮らしていたが、ある日新任の区長が運転を誤って学校の壁に激突させ、その下敷きになった有慶が死んでしまう。

嘆き悲しむ福貴の一家のもとに、区長が謝罪に訪れるが、それはかつての福貴と苦楽を共にした春生だった。

春生は激しく後悔し、福貴と家珍に償いを申し出るが追い返される。

大躍進 イギリス、アメリカを追い越すため毛沢東が掲げた農工業の大増産政策。
町内あげての生産を課していたため、子供も学校で働かされた
有慶たちがゆっくり眠れなかったのはそのため。
春生が事故を起こした原因は、責任者たちにも無理なノルマが課せられていたための寝不足によるものと思われる。
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【活きる】文化大革命(1960年代)

縁談

文化大革命が始まり、福貴は町長に影絵を燃やすよう勧められる。

文化的価値があると共に、影絵の登場人物が旧体制を象徴しているからであった。

町長はそれと同時に鳳霞に縁談を持ってくる。

二喜という足が不自由だが優しい男で、労働者階級の造反派の隊長を勤めていた。

二人の縁談はすぐにまとまり、久し振りに福貴たち家族に幸せが訪れた。

二人の祝言の日、区長の春生が訪れる。

彼はあの事件以降、福貴に良い職を紹介しようとしたり、何かと気にかけていた。

福貴は許す気持ちになっていたが、家珍は相変わらず拒否していた。

失脚

そんな中、福貴は春生が走資派のレッテルを貼られ失脚したことを知る。

それから間もなく、春生が福貴のもとを訪れた。

彼は今まで有慶の償いのために貯めていた貯金を、福貴に渡すために来たのだった。

春生の妻は自殺し、彼もすぐに拘束されることになっており、春生は生きる希望を失っていた。

福貴は春生に通帳を返し、生きて戻って金を返すよう告げる。

ずっと春生を拒絶していた家珍も出てきて「借りは返してもらってないからね。必ず生きるのよ」と伝える。

出産

妊婦だった鳳霞が産気づいたとの知らせを聞き、福貴と家珍は病院に向かう。

しかし医師はいなく、高慢な女学生しかいない病院に夫婦は不安を抱く。

医師は全てつるし上げにあっていた。

二喜が何とか産科長の王医師を連れてくるが、彼は三日三晩飲まず食わずで晒されていて、ぐったりしていた。

間もなく鳳霞に無事男の子が生まれ、喜ぶ福貴たちだったが、産後の出血が止まらず、女学生たちは悲鳴を上げる。

しかし肝心の医師は動けず、家珍の悲痛な願いもむなしく鳳霞は死んでしまう。

数年後、福貴と家珍、二喜はマントウと名付けられた孫と共に鳳霞と有慶の墓参りい訪れる。

道中で買ってやったひよこのおうちが欲しいと、マントウにせがまれ、福貴はかつて影絵が入っていた箱にひよこを入れるのだった。

走資派
資本主義の道を進む実権派の意。
大躍進での失策により餓死者が増え、経済を大混乱に陥れた毛沢東の後、次期主席の劉少奇らが回復させようと、資本主義的な政策で経済を回復させようとした。(実際経済は回復しつつあった)
これに反発した毛沢東が「社会主義のふりをして資本主義を回復するもの」と表現するために使用した言葉。
春生や町長が走資派のレッテルを貼られるが、イチャモンのようなものである。
文化大革命
毛沢東が復権するための大規模な権力闘争。
国内の主要な文化の破壊、教師や医師など知識人を始め多くの人が投獄、殺害された。
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【活きる】感想

主人公の福貴はお坊ちゃま育ちのわりには順応が早く、すぐに貧乏を受け入れることが出来た。

実はこれが彼が生き延びた秘訣ともいえる。

内戦、大躍進、文革という波乱の世の中で、幸も不幸も全て受け入れ達観している様は、まさに中国人。

一番感動したのは、家珍がずっと拒絶してきた春生に対して激を飛ばした形で、春生の謝罪を受け入れたところ。

何とも自然な形で家珍の感情の流れを表している。

わざとらしさや押しつけがましさなどなく、じわじわと心に染み入る素晴らしい作品だと思った。

この映画は中国では上映禁止だそうだ。

あからさまな政治批判はなく、ただ事実をたんたんと庶民の目線から描かれているだけなのだが。

この国が真実を受け入れる日は来るのだろうか。

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