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【ライトハウス】灯台の光に魅入られた2人の男を狂気が蝕んで行くーー。

©2019 A24 Films LLC. All Rights Reserved.

Writer:すなくじら
Introduction

【ライトハウス】謎めいた孤島にやって来た“2人の灯台守”が外界から遮断され、徐々に狂気と幻想に侵されていく、人間の極限状態を恐ろしくも美しい映像で描いた作品。 北米ではA24の製作・配給で公開され、わずか8スクリーンでスタートしたミニシアター系の映画としては異例の興行収入1,000万ドル以上の大ヒットを記録したーー。

©2019 A24 Films LLC. All Rights Reserved.

Production

公開:2021年 アメリカ

原題:The Lighthouse

監督:ロバート・エガース

キャスト: ロバート・パティンソン、ウィレム・デフォー

関連作品

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灯台というメタファー

コロナウイルスによる公開延期が相次ぎ、日本では7月9日公開となった「ライトハウス」。

タイトル通り、海原にそびえたつ一本の灯台と、灯台に取り憑かれた男たちを描いた本作品。

灯台の本来の役割は船舶が安全かつ効率的に航行するためのサポートであり、船乗りをはじめとする海の男たちの希望の光、道標でもありました。

そんな灯台を舞台に、迫り来る恐怖と狂気を描いた本作品では、灯台がまるで一つの生き物のようにトーマス・ウェイク(ウィレム・デフォー)とイーフレイム・ウィンズロー(ロバート・パティンソン)の精神を蝕み、奈落の底へと突き落とします。

ニューイングランドの孤島にやってきた彼らには、この先4週間に渡って灯台と島の管理を行う仕事が任されていました。

灯台を愛するベテラン灯台主のトーマス・ウェイクと未経験の若者イーフレイム・ウィンズローは、そりが合わずに初日から衝突を繰り返します。

険悪な雰囲気の中、灯台は嵐にのみこまれ、救いを失った2人は島に孤立状態になってしまうのです。

灯台というメタファーが、男性性を表していることは、観ている人の中でも気がついた方もいるでしょう。

ウィンズローが仕事の一環として灯台へペンキを塗る姿を見下すウェイクの姿や、ウィンズローの自慰中に灯台の映像が挟まることで、暗に灯台を男性性の象徴として表していることがわかります。

のちにウェイクが、女性性の象徴である人形を犯す場面もありますが、灯台を取り巻く環境のなかで、次第に2人が追い詰められ欲求あるがままの姿になっていくとも考えられるでしょう。

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ライトハウスに隠された様々な謎

物語の語り手の揺らぎ

「ライトハウス」は新人の灯台主・ウィンズローの視点で物語が進んでいきます。

しかしのちに、ウィンズローとは偽の名前であり、彼の本当の名前はトーマス・ハワードであるとウェイクに打ち明けます。

ウィンズローとは彼が過去に殺した木こりの名前でした。

ハワードは嵐がやってきたあとの物語後半になるにつれて徐々に精神を病み、狂気的な行動に出るようになります。

ウェイクを襲ったシーンに至っては、すでに物語の語り手ウィンズローとしての自我はすでに失われており、人殺しのトーマス・ハワードとしての性格が全面に出ているようにも捉えられます。

果たしてウィンズローがどこから狂っていたのかは誰にもわかりませんが、ウィンズローが最初から嘘をつき続けていたのだとしたら、物語の語り手としての信憑性も怪しくなってくるでしょう。

ウィンズローにとって、ウェイクは傲慢で悪徳な嘘つき灯台主でしたが、果たしてそれがどこまで事実だったのかは怪しさを感じずにはいられません。

登るのを禁じられた塔に登ったり、船乗りの魂が宿るとされるカモメを殺すなど、ウィンズローの中に眠るもう1人の人格は、常に彼の中からこちらを伺っていたのかもしれません。

物語の語り手の揺らぎによって誰を信じればいいのか分からず、暗鬱とした物語の空気に飲み込まれていくような気がします。

人魚の存在

まず前提として、人魚の存在というのは西洋の人魚は精霊・妖精のような扱いなのに対し、日本を始めとする東洋の人魚は怪物として扱われる傾向があります。

人魚に対する伝説として「とても美しい歌声で歌う。その歌声を聴いた船乗り・航海者は舵を取ることを忘れた結果船が事故に遭ったり、海中へ引きずり込まれたり、はたまた廃人同然の状態と化して人魚の住まう島に赴いて歌を聞く事しか考えられなくなる。」とも言われているくらいであり、人魚というのは古くから不吉の象徴として物語に登場してきました。

本作でも特にウィンズローの視点において、人魚は不吉を予想させるモチーフとして機能しています。

また、人魚に女性器がついている描写を始め、人魚を性の対象として捉えている様子もわかります(灯台が男性性なので、灯台と対になる存在ともいえるでしょう)。

徐々に始めの人魚の接点から、心も体も人魚に囚われていくウィンズローは、カモメ殺しをはじめ海の掟を破った罰として、ある意味で海に囚われているようにも考えられました。

人魚という美しい存在、甘美な性の魅力に取り憑かれてしまうと、気がつけば後戻りのできない恐怖に足を救われていた、なんていうこともありそうです。

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ラストシーンの解釈

ラストシーンでは、トーマスとしての秘密をすでに暴露し、自我が崩壊したウィンズローが海辺でカモメたちに内臓を啄まれています。

このシーンの解釈としては、ギリシャ神話が元ネタのモチーフとなっています。

ゼウスの反対を無視して天界の火を盗み人類に与えた、という逸話が残っているプロメテウス。

その末路は、ワシに肝臓を半永久的に食べられ続けるというなんとも酷い罰でした。

入ってはならないとウェイクに固く諭された教えを破り、灯台の光を目の当たりにしたウィンズローへの罰は、この逸話が元になっていると考えられるでしょう。

海の掟を破り、自分の欲求だけを優先させたウィンズローには、神からの罰が与えられたとも捉えられるラストシーンだと考えられます。

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おわりに

灯台という一つのモチーフから様々な解釈ができる、物語の動きが魅力的な【ライトハウス】。

狂気に侵されてしまうウィンズローは、性や己の自己満足のための欲求に振り回された、ある意味では人間らしさを兼ね備えた人間であると思います。

とくに、カルト映画や神話モチーフの物語がお好きな方はぜひ観てみてください。

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