【スーパーノヴァ】ベテラン俳優であるコリン・ファースとスタンリー・トゥッチによるヒューマンドラマ…というよりも美しい愛の物語です。
愛する人との時間を大切にしたいと心から思える作品をぜひ。
【スーパーノヴァ】あらすじ
ピアニストのサム(コリン・ファース)と作家のタスカー(スタンリー・トゥッチ)は、長年付き合うゲイのカップル。
いろいろあったけれど、何だかんだ気づけば20年を共に生活してきました。
そんなふたりが今回キャンピングカーの旅に出たのは、2年前に発覚したタスカーの若年性認知症が進行し始めてしまったからでした。
ふたりは、思い出の地を回りつつ訪ねたサムの実家でホームパーティをして楽しく過ごします。
しかし、サムが友人から聞いたふとした言葉をきっかけに、キャンピングカーに置かれているタスカーの荷物を覗くと衝撃的な録音がされたテープと薬が……。
登場人物/キャスト
サム役/コリン・ファース
サムはピアニスト。
タスカーの荷物からテープと薬を見つけ……。
サム役はイギリス出身の俳優コリン・ファースが演じています。
【英国王のスピーチ】(2010)でゴールデン・グローブ賞主演男優賞・アカデミー賞主演男優賞を受賞した実力派俳優。
ほか、【キングスマン】シリーズのハリー・ハート役、【1917 命をかけた伝令】(2017)エリンモア将軍役でも知られています。
タスカー役/スタンリー・トゥッチ
タスカーは作家で、若年性認知症を発症してしまいました。
書くことが好きでしたが、徐々に書けなくなって……。
タスカー役はアメリカ出身の俳優スタンリー・トゥッチが演じています。
【ザ・ジャーナリスト】(1998)でゴールデングローブ賞主演男優賞・エミー賞主演男優賞を受賞し、【謀議】(2001)でゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞。
ほか、【ハンガー・ゲーム】シリーズのシーザー・フリッカーマン役、【トランス・フォーマー】シリーズでマーリン役を演じています。
ベテラン俳優による愛の物語
サムとタスカーにフォーカスが当てられている本作では、まず俳優の演技が素晴らしいです。
それもそのはず、サム役にはコリン・ファース、タスカー役にはスタンリー・トゥッチというベテラン俳優ふたり。
このふたり、2001年のHBOのドラマ【謀議(日本タイトルは「コンスピラシー アウシュビッツの黒幕」として有料チャンネルにて放送されていたそう)】にて共演しており、ふたりとも同い年であることから親交を深めていたそう。
当初は役が逆だったようですが、いくつかのシーンを重ねた結果、サムをコリンが、タスカーをスタンリーが演じることになったようです。
また、二人はゲイ役に定評があります。
コリンは【マンマ・ミーア!】シリーズのハリー、【シングルマン】(2010)や【裏切りのサーカス】(2012)など、スタンリーは【プラダを着た悪魔】(2006)のナイジェル役や【バーレスク】(2010)などなど。
経験を積み、友人同士なふたりだからこそのナチュラルな演技に注目です。
美しい風景、しずかな世界
ふたりの旅は、基本的に全編を通してとても静かに話が進んでいく印象です。
車から見える美しい風景、車から降りて湖に佇んだり、天体観測をして夜を楽しんだりするふたり。
車を走らせているシーンで思い出されるのは【ノマドランド】(2021)の世界観のよう。
イギリス、カンブリアの湖水地方が舞台ということもありますが、大自然にフォーカスを当て、ふたりっきりの世界を見事に表現しています。
そんな撮影を手がけたのは【ターナー、光に愛を求めて】(2015)などで知られる大御所、ディック・ホープ。
なるほど、美しいわけです。
近年ようやく日本でもLGBTQ+の話題が多くなり、映画やドラマでも取り入れられる作品が増えてきましたが、本作では結婚しているとか生活で苦労してきたこととか、よくあるテーマには一切触れていません。
ただサムとタスカーの現在が描かてれいるのみです。
あくまでも「ふたりの恋愛、その将来」についてにだけ焦点が当てられている作品は珍しいかもしれません。
今後、このような作品がもっと増えて欲しいと感じています。
誰しもが経験するかもしれない未来
【ファーザー】(2021)など認知症をテーマにしている作品が、ここ最近とても見かけることが多い気がする今日。
本作が「お互い共に年老いていったその先に待つ未来」のお話であることは間違いありませんが、そのテーマについてふたりで感情的になりながらも話し合うシーンがしっかりと描かれていることが素敵でした。
考え抜いた結果、絶対に世話をすると決めたサムに対し、サムの荷物になりたくないと懇願するタスカー。
両者どちらの気持ちも痛いほど理解できます。
愛する人と別れるのは辛すぎて受け入れることなど到底難しいことですが、タスカー曰く「同じ顔をした別人」と生活する毎日もあまりに悲しいです。
どういった選択が望ましいのか、ラストの解釈についても深く考えさせられる作品かと思います。
人を愛するということ。
全編において散りばめられている「相手が愛おしい」と心から思っているであろう仕草や表情、視線にぜひご注目しつつ観ていただきたい作品です。
作家ということもあり、タスカーが発する言葉はどれも詩的な印象を受けました。
紡がれる言葉たちが丁寧で静かでありつつも、認知症が進む彼が精一杯考えて発している言葉だと思うと胸が締め付けられる気持ちです。
書くことが好きだったタスカーが遺言をテープに録音したのも、辛い気持ちももちろんあると思いますが「サムへ、サムへ…」と、それ以上に書けなかったからではないかと思いました。
また、ラストシーンでサムがピアノで弾くのは、タスカーが弾かないのかと尋ねていたエルガーの「愛の挨拶」。
彼がどれだけタスカーのことを愛してるのか、ピアノを弾く姿で表現できるコリン・ファースの演技力、すさまじいです。
彼が翌日に愛する人に告げた「Let me go with you.」の意味をぜひ考えてみてください。
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