ネタバレ解説
「ペドロ・パラモ」の原作情報
「ペドロ・パラモ」は、フアン・ルルフォ著書の同名小説を基にした欲望、腐敗、相続についての魅惑的な物語です。原作小説は日本語訳版も出版されているラテンアメリカ文学ブームの先駆けとなった名作であり、ルルフォはこの1冊で文学史に名を残しました。
代表作は、苛酷な現実を描いた短編集「燃える平原」と、長編小説「ペドロ・パラモ」があります。「ペドロ・パラモ」は、ガブリエル・ガルシア=マルケスを始めとするラテンアメリカ作家らに重大な影響を与えており、スランプに陥るマルケスを救ったのもこの1冊でした。
原作小説は、亡くなった母との約束を果たして父から援助を受けるためにコマラ村を訪れたフアンの物語を描いています。フアンはペドロ・パラモという名前の父を探しますが、彼はすでに亡くなっていました。それどころか、町はゴーストタウンのようだったり、案内役の男もペドロの子供だったりと奇妙なことばかりです。
村の色々な家を訪ねたフアンは、コマラ村が本当に死者に満ちていることを知り、さらに実は自分も亡くなっていて墓の中から語っていることに気づきます。
「ペドロ・パラモ」はメキシコ人を苦しめてきた歴史的不正義と痛みを反映している
ロドリゴ・プリエト監督は、Netflixのインタビューにて「ペドロ・パラモ」の背景や、本作を通じて伝えたいことについて語りました。「ペドロ・パラモ」は、メキシコ人を苦しめてきた一連の歴史的不正義と痛みを反映しており、スペインによる征服は宗教による過酷な教義を含め、今日まで続く抑圧のシステムをもたらしました。
この映画でプリエト監督が意図しているのは、世界中の観客がメキシコの過去の遠い歴史的出来事としてだけでなく、個人的なレベルでこれらのテーマと繋がり、感動してくれることだそう。私たちは先祖の罪を赦すことができるのか、それとも血の恨みを次世代に持ち越すのか、実際私たちは自分自身を赦すことができるのだろうかと、プリエト監督は問いかけます。
原作小説での主人公は、10代の頃にスサナ・サン・フアンと経験した感覚を取り戻すべく極限まで努力をし、儚い愛を取り戻すことに執着する彼は殺人さえも厭わない自分に気づきました。絶望的な希望と憧れが、時代の過酷で暴力的な状況に苛まれながら、全ての登場人物の行動を形成しているのです。
最後にプリエト監督は、「この映画が、メキシコ文化の豊かさを反映したものとしてだけでなく、自分たちのアイデンティティを探すという人類共通の経験を描いた普遍的な物語として見てもらえることを願っています。結局のところ、私たちは皆、自分だけの”コマラ”を持っているのだから。」と締めくくりました。