映画『西の魔女が死んだ』では、不登校になった主人公が祖母の家で過ごした日々を綴った物語。
おばあちゃんの言葉は強くて優しくて心地よくて……。
いつか大人になっていくであろう主人公に、生きることの大切さを教えると共に成長させてくれる作品です。
この記事では映画『西の魔女が死んだ』のあらすじと映画レシピをお届けします。
『西の魔女が死んだ』あらすじ
おばあちゃんが危篤だという連絡を受けた”まい”は、母と急いで祖母の元へと向かうことに……。
母と車で祖母の家に向かっている途中、まいはおばあちゃんと暮らしていたあの2年前のことを思い出していました。
ここからまいの回想シーンとして物語が描かれます。
中学生になって間もなく、まいは学校に行くのが苦痛になっていました。
母の提案で、魔女だと言うおばあちゃんの家で暮らすことになったまいは、おばあちゃんから魔女になるための修行を受けることになります。
これは、実際に魔法使いになるためのものではなく、自分で考えた事をやり遂げるための意志の強さをを教えるためのものでした。
・規則正しい生活をすること
・自然と触れ合うこと
・採れたての果物でジャムを作ること
・お気に入りの場所を作ること
ばあちゃんとの暮らしは心地よく、お気に入りの場所を見つけたまいは、順調に笑顔を取り戻していきました。
そして魔女修行から3週間ほど過ぎたある朝、庭にあったニワトリ小屋が荒らされていました。
その日の夜、ひとりで寝るのが不安になったまいは、おばあちゃんと一緒に寝ることに……。
ニワトリの死を人間に例え「人は死んだらどうなるの?」とおばあちゃんに尋ねると、おばあちゃんは「わかりません。実は死んだことがないので」と、ちょっとしたギャグで和ませてくれました。
そして「死ぬということは、魂が体から離れて自由になることだと思っています」と、おばあちゃんが信じていることを話してくれたのです。
おばあちゃん「魂は体が無くなってからも、長い旅を続けなけばなりません。」
まい「じゃあ、魂が私なの?」
おばあちゃん「まいは、魂と体が一緒になってまいなんですよ」
出典:映画『西の魔女が死んだ』から引用
それから数日後、まいがお気に入りの場所でゲンジと遭遇。
元々、ゲンジに嫌悪感を感じていたまいは、おばあちゃんの前でゲンジを罵倒してしまいました。
そしておばあちゃんはこのとき初めて、まいの頬を叩いてしまいます。
ここから2人の間に確執生じ。まいはおばあちゃんを避けるようになり、そのまま両親と共に新しい場所へと引っ越してしまったのです。
新しい引っ越し先はおばあちゃんの家からも遠く、まいはそれから一度もおばあちゃんと会うこともなく月日だけが過ぎていきました。
そして2年後。おばあちゃんは亡くなり、まいは家族と共におばあちゃんの家へ向かいます。
わだかまりを残したまま去ってしまったおばあちゃん。
まいの心には後悔が残っていました。
そしておばあちゃんの家に着くと、そこにはゲンジの姿が……。
彼はおばあちゃんに付き添ってくれていたようで2年前、ゲンジに嫌悪感しか感じなかったまいは、人を見かけで判断していたことも後悔しました。
さらに以前、「おばあちゃんが死んだら、まいに知らせてあげますよ。魂が体から離れましたよって」と、おばあちゃんとの約束の痕跡を見つけたまいは、「おばあちゃん、大好き」と涙をこぼしたのです。
『西の魔女が死んだ』の見どころと映画飯
おばあちゃんがまいに伝えたかったこと
おばあちゃんがまいを怒ったのはたった一度。まいがゲンジを罵倒した時でした。
ゲンジは口数が少なく、強面で中学生のまいからすれば嫌悪感しか抱かなかったという理由もわからなくはありませんが、おばあちゃんは人を見かけで判断してはいけないということをまいに伝えたかったのでしょう。
学校生活が苦痛になったのも、クラスメイトを”見かけ”と”自分の基準で”考え、自分勝手に毛嫌いしていたからだったはず。
おばあちゃんは、まいのそんなところを治してあげたかったはずです。
ただ、おばあちゃんは決して無理強いはしません。
運動が苦手と言えば洗濯や掃除を運動代わりにしたり、よく食べて、よく寝て、午後は勉強して頭を使ったり、眠れないときはさりげなくフォローしてくれたりと、規則正しい生活習慣を身につけさせたのです。
まいが眠れない夜、おばあちゃんは焼き立てのクッキーと紅茶を持って、まいの部屋にやってきました。
こんな素敵なおばあちゃんのフォローも印象的でした。
紅茶に花を浮かべるだけで、とても贅沢で穏やかな気持ちになりますね。
I KNOW
まいは、よくおばあちゃんに「おばあちゃん、大好き」といってハグをしていました。
その時におばあちゃんは必ず「I KNOW」と答えてくれます。
I KNOWは「わかってる・知っている」ということ。
この言葉は、聞いていて耳が心地よく、思わずうなづいてしまう……。
観ている誰もがおばあちゃんの愛情を感じられる魔法の言葉です。
思い出のジャム
丘の上で採れるたくさんのワイルド・ストロベリー(野いちご)を使って、おばあちゃんがジャムを作っているシーンがありました。
さらに、ワイルド・ストロベリーが採れる場所は、おばあちゃんの悲しみも愛も喜びも詰まっている場所でもあったのです。
おじいちゃんは、このワイルド・ストロベリーのジャムが大好きで、何でもつけて食べたと話すおばあちゃん。
さすがにキュウリにつけて食べた時は”参った”と言い、それから青い野菜には付けなかったとのこと。
元々、そこにはワイルド・ストロベリーが自生していましたが、おじいちゃんが亡くなった翌年から数が増えたのです。
まるで野いちごの絨毯のようになったその日は、おばあちゃんの誕生日でした。
亡くなったおじいちゃんからのプレゼントだというおばあちゃん。
まいには、その時の光景が見えていました。お野いちごの絨毯の中、ひとり座り込んで泣いているおばあちゃんの姿を……。
そんな思い出が詰まったワイルド・ストロベリーのジャム。
カリカリに焼いたイギリスパンにたっぷりのせて頂きたいですね。
『西の魔女が死んだ』を観た感想
おばあちゃんのスローライフや天然生活のなかにも、思春期にありがちな迷いや悩みや家族の問題を言及した作品でした。庭のラベンダーの上にシーツを干して天然の香りづけをしたり、毎朝新鮮な卵を収穫して食卓に乗せたりと、憧れるシーンばかりでした。
お茶を飲みながら風に揺られているハーブを眺めたり、窓際やテーブルにちょこんと置かれている一輪の花は、おばあちゃんが毎朝積んだハーブが飾られています。
おばあちゃんが亡くなった後、テーブルに飾られていた花はおばあちゃんが最期に飾ったものでしょう。
まいが使っていたマグカップに小さなアジサイがひとつ。おばあちゃんは、ずっとまいが来るのを待っていたのかもしれませんね。
もうこの花が、差し替えられることはないんですね……。
おばあちゃんがまいに遺した痕跡。
「ニシノマジョカラ ヒガシノマジョヘ オバアチャンノ タマシイ ダッシュツ ダイセイコウ」
一気に涙が溢れる瞬間でした。何度観ても、このシーンには涙腺崩壊するはずです。
©2008「西の魔女が死んだ」製作委員会