【殺人ホテル】あらすじと解説。不気味な洋館で起きることは全て演出なのか⁉︎

殺人ホテル

【殺人ホテル】あらすじと解説。若干17歳のヤーラン・ヘルダル監督が描く、核戦争によって訪れた終末世界が舞台のノルウェー発ホラー映画。荒廃した世界で人々は食べ物に飢え、道端には餓死した者も多く見られました。そんなある日、とある高級ホテルにてディナーショーが行われるとのこと。豪勢な食事目当てに殺到した人々でしたが、そのホテルには”恐ろしい秘密”が隠されていて……⁉︎

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【殺人ホテル】あらすじ

物語の舞台は、核戦争によって荒廃した世界。

街は壊滅状態で食料もなく、道端には死体が転がり、そんな状況に絶望して命を絶つ者も現れます。

それでも、父ヤコブ(トーマス・グルスタッド)と母レオ(ギッテ・ヴィット)、娘のアリス(トゥーヴァ・オリヴィア・レーマン)の3人家族は希望を捨てずに生きていました。

元舞台俳優のレオはこんな状況でも希望を捨てぬよう、娘アリスの前では芝居を演じ空想を働かせて力強く生きることを教えていました。

そんなある日、高級ホテルの支配人マティアス(ソービョルン・ハール)によるディナーショーが開催されると街中で宣伝する男が現れます。

ヤコブは胡散臭いとショーへの参加を反対したものの、悲惨な状況だからこそ娯楽は必要だと訴えるレオに説得されて家族3人での参加を決めました。

ホテルに着くと参加者たちには肉料理が振る舞われ、久々のまともな食事に舌鼓を打っていました。

するとそこへ支配人のマティアスが現れ、今夜のショーについて説明を始めます。

このショーは通常の劇場とは異なり、ホテルそのものが舞台であり自分が興味をそそられる人物を追いかけるというもの。

今夜起こることは全て演出であり、参加者は決して仮面を外してはいけません。

仮面は参加者のみがつけるもの”であり、演者と参加者を見分けるためのものでした。

マティアスの説明にあった通り、舞台はホテルそのものであるため 演者たちはあちこちに現れてはそれぞれのストーリーを演じています。

激しい夫婦喧嘩を演じる者や、冷え切った夫婦関係を修復したい者など多種多様。

早速、レオたちはアリスの提案を受けて演者のひとりの後を追いかけていましたが、ほんの一瞬目を離した隙にアリスを見失ってしまいます。

必死になってアリスを探すレオたちでしたが、次々と目の前で起きる惨劇に何が現実で何が演技なのかわからなくなっていきます。

目の前で首を切って自殺を図るウェイターや、動く羊の絵画、壁から出て来る人など。

これらは本当に全て演出なのか、誰を信用するのか、疑心暗鬼に陥りながらもアリスの痕跡を追うレオとヤコブを待ち受けていたのは……衝撃の真相でした。

高級ホテルで行われる不気味なショーに隠された真相とは一体何なのか⁉︎

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【殺人ホテル】解説

どこまでが演出なのか

マティアスが支配人を務めるホテルにて行われるディナーショーでは、”今夜起きる全てのことは演出”だとのこと。

そして、通常の劇場で行うようなものではなくホテルそのものが舞台となった、いわゆる体験型のショーです。

それらを踏まえていても、目の前で繰り広げられる出来事はあまりにもリアルで、本当に演出なのかと目を疑いたくなります。

危機迫る様子で廊下を走る女性や、目の前で自殺を図る男性など。

後になってわかることですが、面白いことにこれらの演出には”真実”が混ざっています

主人公のレオもそのことに気付いていきますが、真実が混ざっていることでより演出との境を見分けることが難しくなっていくのです。

何が現実で何が演出なのか、実際にご自身の目でご確認ください。

体験型シアター”SLEEP NO MORE”との共通点

【殺人ホテル】(2020)では、NYで上演されている体験型シアターのSLEEP NO MORE(スリープ・ノー・モア)との共通点が多く見られます。

SLEEP NO MORE(スリープ・ノー・モア)とは、NYで上演されている体験型シアター。

シェイクスピアの【マクベス】をベースにした物語で、参加者は全員”アノニマス”(見えざる者)として仮面を被って参加し、劇場となる廃ホテルを自由に歩き回れるというもの。

まさにこれらは【殺人ホテル】(2020)のホテルでの状況と全く同じで、いかにSLEEP NO MORE(スリープ・ノー・モア)から影響を受けているのかがわかります。

200人超の被害者を出したシリアルキラーの”殺人の城”と似ている⁉︎

【殺人ホテル】(2020)でマティアスが支配人を務めるホテルには、地下通路壁画の裏に隠された通路など数々の仕掛けが施されています。

そして、このホテルの仕掛けは、アメリカ史上初のシリアルキラーH・H・ホームズが建造した”ワールド・フェア・ホテル(通称:殺人の城)”と非常に酷似しています。

H・H・ホームズとは、1800年代後半に自身が経営するホテルの宿泊客や関係者200人以上を殺害したと言われるアメリカ犯罪史上最悪の連続殺人鬼。

H・H・ホームズのホテルと【殺人ホテル】(2020)の共通点は以下の通り。

  • 全て繋がっている秘密の通路
  • 落とし穴が仕掛けられた部屋
  • 覗き穴完備の隠し扉
  • 拷問や解剖道具の揃った地下室
  • ホテルで火災が起きている

これらはH・H・ホームズのホテルの仕掛けの一部ですが、あまりにも巧妙に作られた仕掛けは殺人のためとしか思えないものばかりであり、このホテルが殺人の城と呼ばれる所以です。

ここまでの類似点が見られることから、【殺人ホテル】(2020)はH・H・ホームズのホテルからインスパイアされた可能性が高いでしょう。

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【殺人ホテル】感想

撮影当時には若干17歳だったというヤーラン・ヘルダルが監督を務める【殺人ホテル】(2020)。

とても17歳が作ったとは思えないほどに、細部まで伏線が散りばめられていたりと巧妙に作り込まれた作品です。

特に、ホラー映画において重要な世界観を描くのが非常に上手だと感じました。

高級ホテルながらもどこか不気味に感じる雰囲気だったり、赤を基調にした内装がより不気味さを醸し出していたり……。

それらはまるでサスペンスのような不気味さを感じさせ、ただのホラー映画とは違った楽しみ方ができます。

また、仮面をつける人とつけない人に分けたり、食糧難の中で無償で料理を提供できる謎など、所々に散りばめられた伏線がより物語に深みを感じさせます。

これらの謎はひとつずつ明らかになっていくので、推理しながら観ていくことこそ【殺人ホテル】(2020)の楽しみ方のひとつでしょう。

さらに注目していただきたいポイントは俳優陣の迫真の演技です。

ノルウェー映画ともあってあまり有名な俳優こそいないものの、それぞれのキャラクターが際立っていて皆とても演技力が高かったです。

中でも、支配人マティアス役を演じたソービョルン・ハールの演技のクオリティが非常に高く、彼自身が本当にマティアスのような人物なのではないかと思うほどでした。

観ているだけでゾクゾクする、落ち着かない不気味さを感じる辺りは、【ゲット・アウト】(2017)を彷彿とさせます。

ミステリー要素のあるホラー映画をお探しの方は、是非一度ご覧あれ!

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