【説きふせられて】ネタバレと解説。ジェイン・オースティンのときめく恋の物語

説きふせられて
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【説きふせられて】あらすじと解説。【プライドと偏見】【エマ】の原作者ジェイン・オースティンの最晩年の傑作。8年ぶりに再会した2人の恋の行方は?

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【説きふせられて】あらすじ

準男爵エリオット家は、当主サー・ウォルター(アンソニー・ヘッド)の浪費がたたり、借金返済のために屋敷ケリンチ邸を人に貸し、これまでより小さな家に移り住むことになった。

屋敷の借り手がクロフト提督夫妻と聞いて、次女のアン(サリー・ホーキンス)は動揺する。

クロフト夫人の弟フレデリック・ウェントワース(ルパート・ペンリー=ジョーンズ)は、8年前に別れたアンの恋人だった。

ウェントワースが当時はまだ若い士官で財産もなかったことから、母親代わりのレディ・ラッセル(アリス・クリーグ)に説得され、結婚をあきらめたことをアンは後悔していた。

そして今も彼を忘れられず独身のままでいた。

父は長女だけ連れバースに移り、アンにはケリンチ邸の近所に住んでいる妹のメアリー(アマンダ・ヘイル)の世話をするよう告げる。

メアリーの夫チャールズ(サム・ヘイゼルダイン)の妹ルイーザ(ジェニファー・ハイアム)とヘンリエッタ(ロザムンド・ステファン)は、ウェントワースが姉を訪ねにケリンチ邸に来ることで浮足立っていた。

ウェントワースは今では大佐に昇進していて、財産もある好男子だった。

ついにアンはウェントワースと顔を合わせるが、彼はアンに冷たい一瞥いちべつを投げつけた。

準男爵とは 貴族階級の最下位の男爵と、貴族ではない世襲制の称号のナイトの中間に設定された階級。
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【説きふせられて】ネタバレと解説

原作の人物像に合ったキャスト

原作はジェイン・オースティンの【説得】(ちくま文庫/中野康司訳)。

19世紀英国のアッパーミドルを背景に、人間模様と繊細な心の動きを描いたオースティン最後の完成された恋愛小説である。

ヒロインのアン・エリオットは【パディントン 】シリーズ(2014,2017)でお馴染みのサリー・ホーキンス

控えめながらも芯の強さがあり、理知的なアンがぴったりだ。

ウェントワースは【MI-5 英国機密情報部】(2004-2008)で知られるルパート・ペンリー=ジョーンズ

ハンサムな若き大佐は、彼そのもの。

ウィリアム・エリオットは【アウトランダー 】(2014-2018)のトビアス・メンジーズ

アンの従兄で、外面がいいが裏がある貴公子をうまく演じている。

他にも、鏡ばかり見ている自惚れ屋の父サー・ウォルター(アンソニー・ヘッド)、わがままな三女メアリー(アマンダ・ヘイル)など原作から抜き出たように合っている。

複雑な心理描写を映像化

心理描写も原作を忠実に表現している。

ディナーの席で理想の女性像を聞かれたウェントワースは、意志の強い女性がいいと言う。

「主体性のない方は困る。芯の強さがないとすぐ説得に応じる

それを聞いたアンはいたたまれなくなる。

一方、若いルイーザは人の意見に従うなんて理解できない一度決断したら最後まで貫くべきとウェントワースに話し、彼から賞賛を受ける。

しかし、ルイーザは活気がある自分を見せようとして周囲の反対に耳を貸さず、高台から飛び降りて怪我をしてしまう。

周囲が取り乱す中、冷静に対応するアンを見たウェストワースは、本当の芯の強さは何かとに気づく。

そして、本当は自分はアンに意地を張っていただけだと気づくのだった。

本作品は、このような描写を丁寧に描き観る者の心を揺さぶる。

ラストだけ原作と異なる理由

その後、父と姉の住まいのバースに移ったアンの目の前に、周囲が喜ぶ求婚相手が現れる。

従兄のエリオットだった。

バースまでアンを追ったウェントワースだが、2人が婚約間近だという噂を聞きつける。

アンに噂の真相を訪ねるが、アンはきっぱり否定する

ここが原作と違うところ

原作では友人ごしに「女性は男性をいつまでも愛し続けることができます」と、近くにいるウェントワースに聞こえるように話して自分の気持ちを伝える。

ここで面白いのは、オースティンはこの小説に最初は別の結末を考えていたとの事。

推敲前の原稿が残っており、結局使用されなかったバージョンは、結婚は本当なのかウェントワースが尋ねるが、アンは別の男性と結婚する気はないと断言すると、書かれている。
「ジェイン・オースティンとイギリス文化」新井潤美著(NHK出版)より要約

BBCは、この推敲すいこう前の結末に従ったのかもしれない。

そして最後も、原作にはない、2人がケリンチ邸で暮らすという幸せなラストシーンで締めくくられる。

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【説きふせられて】感想

小説【説得】がオースティンの中でも【高慢と偏見】に並ぶ傑作だと思っているので、このキャストには大満足。

ただ最後の最後でバタバタと詰め込んだようになってしまったの事は、それまでが丁寧だっただけに残念。

BBCのテレビ映画という事情を考えると致し方ないことなのだろう。

説きふせられて】のタイトルも少し冴えない。

これでつまらないと思われたら、それはもったいない事だ。

原題が【Persuaiton】だから「説得」、それでは固すぎると思いそんなタイトルしかなかったのだろう。

原作はオースティン作品の中では短い方で、中野康司氏の訳も読みやすいので是非お薦めしたい。

映画をご覧になった後、キャストの2人を思い浮かべて読んで頂ければより楽しめると思う。

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