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【人数の町】ここでの生活が幸せかそうでないかはあなた次第です。

©2020「人数の町」製作委員会

いま最も注目されている俳優のひとり、中村倫也の主演最新作映画【人数の町】。とある「町」の住人になった青年。衣食住が保証され、簡単な仕事をするために外出もできるけど決して離れることはできない。そんな奇妙な「町」の生活をのぞいてみましょう。

当サイトでご紹介しているものは2020年9月現在のものになります。状況により配信されていない場合がございますのでご了承ください。

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【人数の町】あらすじ

借金取りに追われる青年、蒼山哲也は黄色いツナギを着たポールと名乗る男に助けられます。

「居場所ないんだろ?」ポールはそう言うと、哲也をバスに乗せます。

他にもたくさんの人々を乗せたバスは夜通し走り、とある大きな建物の前で止まりました。

建物に入ると人々は順番に、首のうしろになにかを埋め込まれます。

「ようこそ、デュード。これであなたは町の住人です」

音声がくり返し流れ、色違いのパーカーと部屋の鍵がそれぞれ支給されます。

哲也は朝日を見つめていました。

となりに立つポールは「お前はもう自由だ。世界はずっと美しい」と言います。

哲也は敷地を囲うフェンスを越えたらどうなるか質問しますが、ポールは部屋にある「バイブル」を読めとしか答えません。

バイブルによるとこの町は「自由」「平等」で、フェンスはデュードと呼ばれる住人たちを守っているそうです。

自由にプールが使えるというので哲也は早速行ってみました。

更衣室で哲也はいきなり女に、数字の書かれた紙を渡されます。

プールではビキニの美女が男たちと戯れています。

その美女が「ハイ、フェロー」と話しかけてきました。

それがお決まりのあいさつで、そのあと相手をほめなければならないと美女は言います。

数字の書かれた紙を渡すのは〇ックスという意味で、数字は部屋番号であることを教えてくれました。

そうこうしているうちに哲也は別のメガネの女からも紙を渡されてしまいます。

その後、哲也は最初に紙を渡してきた女の部屋、822号室を訪れました。

事が済むと哲也は次の部屋に行こうとしますが、別に義務ではないと聞かされビキニ美女にからかわれたと気づきます。

翌日、おかしそうに笑う美女は、部屋にあるカンパンしか食べていない哲也に食事の方法を教えてくれました。

食事のための部屋にいくと、住人たちは端末でなにかを黙々と打ち込んでいます。

「ただいま絶賛タイム」と放送が流れ、商品をほめるレビューを入力するとブザーが鳴り、目の前のテーブルの中にある食べ物が取り出せるシステムのようです。

しばらくすると今度は「ディスりタイム」と放送され、住人たちは商品をけなす入力を始めるのでした。

ある日、哲也は例の美女に誘われバスに乗って出かけます。

黄色いツナギのチューターと呼ばれる男の指示のもと哲也たちは着替え、どこかの町の選挙の投票会場に連れてこられました。

投票券を渡され指定の候補者に投票する哲也たち。

それを2回くり返すと今度はスマホを2~3台ずつ持たされ、新しくオープンするバーガーショップに並びます。

行列の様子や店内の商品などを次々と撮影してはSNSにアップしていました。

いわゆるサクラです。

その店内で哲也はまた、あのメガネの女から数字の紙を渡されてしまい、反射的に自分の紙を彼女に渡してしまいます。

その日、部屋に戻った哲也が酒をラッパ飲みしていると、メガネの女がやってきました。

彼女との〇ックスに乗り気ではない哲也は適当に済ませようとしますが彼女が協力的ではなく、哲也はふて寝しようとします。

メガネの女は哲也にここに来た理由を聞き、自分は人殺しをしたと告白します。

嫉妬に狂ってグサッと刺した、と……。

翌朝、哲也は刃物を持った人々が殺人を犯すような悪夢で目覚めました。

メガネの女は「私の秘密をみてほしい」と言い、哲也を施設内のある部屋へと連れていきます。

そこは保育室でした。

数人の子どもが遊んでいて、その中のひとりが自分の娘だとメガネの女は言いました。

木村紅子が帰宅すると、妹の夫が待っていました。

紅子の妹は幼い娘を連れて行方不明なのです。

その原因はこのDV夫で、紅子がふたりをかくまっているのではないかと探しにきたのですが紅子は知らないと言い続けます。

そのころ哲也はフェンスを越えてどこまで行けるか、度胸試しをしていました。

進んでいくとすぐに頭の中で音楽が鳴り始めます。

それはみるみる大きくなり、やがて倒れ込むほどのダメージを受けるのでした。

ある日哲也たちは、副作用発現率3%というよくわからない薬を試すことになります。

覚悟を決めて飲みますが、特にどうということはありません。

でも、あのメガネの女が急に苦しみだし、担架で運ばれていきました。

そしてその後、彼女を見かけることはありませんでした。

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【人数の町】ネタバレ

今日の仕事は、キズメイクをしてライブハウスから出てくるというものでした。

テレビで流れたライブハウスでテロ発生のニュース映像の中に、紅子は妹の姿を見つけました。

紅子は被害者たちが運ばれた病院を訪れますが、既に退院してわからないとの返事。

あきらめきれない紅子は、病院関係者と会話していたあやしげなスーツの男性を尾行します。

その男は紅子に黄色い紙を渡して姿を消します。

紅子がその紙に書かれた場所に行くと、それは「町」へのバス乗り場でした。

迷った末に書類にサインをしてバスに乗った紅子はスマホを没収され、睡眠薬を飲まされてしまいます。

「町」に潜入した紅子は妹をさがし始めました。

そんな紅子の前に妹は自ら姿を現します。

それはあのプールの美女でした。

今では「町」の暮らしに順応している妹・末永緑。

緑は夫から逃げ、姉の助けも得られず仕方なくこの町にやってきました。

姉の紅子を恨んでいる緑は紅子の声には耳を貸さず、ここでの暮らしをわからせようとしますが紅子はそれを拒否します。

そんな姉妹を心配する哲也は紅子に話しかけ、緑の娘がどこにいるか気にしている紅子を保育室に案内しました。

緑の娘・ももがそこにいるとわかった紅子は、子どもたちがこの先どうなってしまうのか不安を感じます。

紅子は外に逃げることを考えますが、哲也はフェンスから離れると頭に中に音楽が鳴り響いて遠くにはいけないと教えました。

バスに乗ってインチキ選挙やパフォーマンスの仕事に参加するうち、紅子は耐えられなくなり逃げ出そうとします。

それを止めた哲也を紅子は拒絶しますが、哲也は「いっしょにいたい」「愛してる」と大声で言いました。

その夜、哲也は紅子の部屋を訪れ「ももを連れて3人で逃げよう」と言い、ふたりはキスを交わし行動開始です。

火災報知器を鳴らし、哲也はチューターの部屋から頭に鳴る音楽を止める装置を持ち出します。

保育室からももを連れ出すと、3人はフェンスを越えて進んでいきました。

でも、すぐに装置の充電が切れ大人ふたりは苦しみ倒れ込んでしまいます。

そこで、ふっと音楽が止みました。

顔をあげると目の前には、黄色いツナギの女が立っていたのです。

女の運転する車に乗せられ「町」へ戻ることになった3人ですが、抵抗しなかったので処罰はなしにすると女は言います。

「また<人数>やってくれれば」

その言葉に哲也はハッとし、次の瞬間には女を殴っていました。

女を車からおろして逃げる哲也たち。

しかし、紅子の住んでいた家には既に別の誰かが住み、役所にいっても戸籍はありません。

お金もなく、装置から離れるとたちまち音楽が襲ってきます。

そんな中、紅子が腹痛で倒れ哲也は病院にかけ込みます。

紅子は妊娠していたのです。

母子手帳も、保険証すらない哲也は医師の説明を受けるため、ももをひとり廊下に残し部屋に入っていきます。

ひとり絵本をよむももの横に黄色いツナギのポールが座りました。

戻ってきた哲也はポールの姿に驚きつつ、戸籍を返してほしいと訴えます。

何でもしますから、と。

ポールは黄色い紙を渡し、戻ってくるようすすめました。

哲也は、外の世界で愛する人と協力し合って暮らしたいと言いますが、ポールは「のちほど」と言って去っていきます。

哲也は黄色い紙をクシャクシャに丸めて床に投げつけました。

哲也と紅子、ももの3人は川の字になって寝ていました。

ひとり起き出した哲也は仕事へ行く準備をしています。

それをベッドから見送る紅子のお腹はずいぶん大きくなっていました。

哲也の乗った車が遠ざかっていく音を聞きながら、紅子は哲也があの音を止める装置を持っていかなかったことに気づきます。

かつて、哲也が着ていたのと同じ青いパーカーを着た青年が佇んでいる横には、黄色いツナギを着た哲也が立っていました。

「なぜこの景色はこんなに美しいか? 自由だからだよ」

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【人数の町】ここがみどころ

中村倫也の魅力

作品によって全く印象がちがうカメレオン俳優、中村倫也。

この作品では、ちょっと気弱で周囲に流されやすい青年を演じています。

テレビドラマなどでは色気ダダもれな雰囲気を纏って女子のハートを鷲掴みの彼ですが、ここではそれを封印。

借金で首のまわらなくなったダメな男が、目的を持ってやってきた紅子と出会い惹かれていく姿をごく自然に表現しています。

決してセリフは多くありませんが、ただ現状を受け入れるだけの「無」の状態から次第に自らの意志で行動する「動」の男へと変わっていく様子は、中村の巧みな演技によって説得力のあるものになっています。

秀逸なストーリー

この作品は、荒木伸ニ監督のオリジナル脚本です。

映画監督を目指していた荒木はCMプランナー・ディレクラーとして活躍しながらも、映画をつくるならその脚本をつくって評価されることが近道、と脚本を書き始めたそうです。

木下グループの第1回新人監督賞準グランプリに選ばれた「人数の町」は、人が名前で呼ばれない、ただの頭数でしかない「町」が存在する世界の物語。

ここにでてくる選挙の不正やSNSの情報など、もしかしたら現実にこういうことが行われているんじゃないかというリアルさがあります。

そして、個性を奪われ行動が制限されるディストピア(dystopia=ユートピア<理想郷>の反対語)でありながら、何かから逃げて生きている人々にとってはシェルターのような場所になっているのがこの物語の面白いところです。

町から離れなければ比較的自由に生活でき、楽しく享楽的に生活できるところに幸せを見いだす人もいれば、辛くても外の世界で愛する家族と暮らしたい人もいる。

今までにあった管理社会の恐ろしさを描いた作品にはないゆるさ、どちらが幸せと言い切れない曖昧な居心地の悪さがこの物語の最大の魅力なのです。

説得力のある演出

物語の随所に黒バックで差し込まれる統計の数値。

失業率、失踪者の数、食品廃棄率……。

「町」の住人たちがここにやってきた理由を紹介するフラッシュバックのような映像と、それを裏付けるような統計データ。

この演出が物語にドキュメンタリーのような生々しさを与えています。

また、色の使い方も印象的でした。

なにより一番怖いのは、チューターたちが着ている黄色いツナギ

目を引くあざやかな黄色は、さまざまな色のパーカーを着せられている住人たちの中で異様に浮き上がる存在です。

キャスト陣の強烈な表情も相まって、黄色いツナギはトラウマものの恐怖をわたしたちに植え付けます。

ちなみに住人たちの名前が蒼山、紅子、緑などみな色の名前になっているのも面白いです。

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【人数の町】まとめ

キービジュアルになっている遠くを見つめる中村倫也の横顔。

映画の冒頭のこのシーンはラストにもう一度現れます。

印象的なこの画の意味するものとは?

この映画は、観た後に人それぞれさまざまな感想が出てくると思います。

なにが幸せなのか、なにが不幸せなのか。

自分の状況によって感じ方はまったくちがってくるでしょう。

どう思ったか語り合うのがこの映画の正しい楽しみ方かもしれません。

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