日本の俳優が海外の映画に出演するのは、最近では珍しいことではありませんが、外国の俳優が出演している映画というのは、なかなか思いつくのは難しいのではないでしょうか。
日本の映画に出演する外国の俳優が少ない理由の1つには、俳優のギャラが高額であることもあるでしょうが、その一方で特撮映画などで外国の俳優が出演しているのを見かけることもあります。
そこで今回は、数少ない中から外国の俳優が出演している日本の映画を紹介します。
時代を経て、外国の俳優がどのような役を演じているのかを観るのも、また面白いのではないでしょうか。
女必殺五段拳
スタッフ&キャスト
- 監督:小沢茂弘
- VOD:[U-NEXT] [hulu] [Prime Video]
- キャスト
- 中川菊:志穂美悦子
- ミッチー:ミッチー・ラブ
- ジョー・スペンサー:クロード・ガニオン
あらすじ
京都は西陣の織物問屋の一人娘である菊は、空手道場の門弟である少女のミッチーを実の妹のように可愛がっていました。ミッチーには父親の異なるサリバンという兄がいましたが、実はミッチーには内緒で麻薬組織の手先として働いていたのです。
やがて警察から追われる身となったサリバンは、ミッチーに全てを告白した後、組織の追っ手に殺されてしまいます。その後、兄の告白から組織のアジトに単身で乗り込むミッチーでしたが、逆に捕まえられてしまいました。
ミッチーを救おうと、自ら捜査を開始する菊は、かねてから怪しいとにらんでいた極東映画の京都撮影所にエキストラとして潜入するのですが・・・
ポイント!
女性初のアクションスターといわれる志穂美悦子主演の女必殺拳シリーズですが、この作品では、カナダの俳優、監督であるクロード・ガニオンが、外国のプロデューサーという設定で出演しています。
日本万国博覧会の取材で日本に訪れたクロード・ガニオンでしたが、日本に魅せられたことから日本に定住し、ドキュメンタリー映画の製作を行っていました。
1979年には初の長編映画「Keiko」で日本映画監督協会新人賞を受賞し、1987年には実在する障碍者の少年が出演した「ケニー」でモントリオール世界映画祭のグランプリを獲得しました。
この映画ではクロード・ガニオンの場面はそれほど多くはありませんが、他では千葉真一主演の「殺人拳2」にドン・コステロ役で出演しています。
男はつらいよ 寅次郎春の夢
スタッフ&キャスト
あらすじ
ビタミン剤のセールスで日本にやってきたマイケル・ジョーダンでしたが、商売がうまくいかなかったことから無一文になってしまいました。
そんなマイケルを見た御前様がとらやに連れていくと、ひょんなことからマイケルはとらやの居候になります。
そんなある日、おばちゃんがマイケルのためにビフテキを作っているところに、寅が帰ってきたのですが、その場の空気が面白くない寅はマイケルと取っ組み合いのけんかを始めてしまいました。
当初は険悪な仲だった寅とマイケルでしたが、旅の途中で偶然に出会ったことから2人は意気投合します。寅と打ち解けたマイケルは、やがて寅の妹であるさくらが大好きだと寅に語るのですが・・・
ポイント!
今回の作品でビタミン剤のセールスマンを演じているのは、ハーブ・エデルマンというアメリカ人の俳優です。
俳優になる前は獣医師を目指していたというハーブ・エデルマンでしたが、1963年にブロードウェイ舞台の端役で俳優としてデビューすると、1967年にはジェームズ・コバーン主演の「電撃フリント・アタック作戦」で映画デビューを飾りました。
その後も、1974年にシドニー・ポラック監督の「ザ・ヤクザ」で高倉健と共演したり、1984年にはジャッキー・チェン主演の「スパルタンX」に出演したりしました。
なお、今回の映画のマイケル・ジョーダンは、アメリカ版寅さんといったイメージでしたが、CMでは寅さんをリチャード・ギアが演じて話題になりました。
復活の日
スタッフ&キャスト
- 監督:深作欣二
- VOD:[U-NEXT] [Prime Video]
- キャスト
- 吉住周三:草刈正雄
- 浅見則子:多岐川裕美
- マリト:オリビア・ハッセー
あらすじ
東ドイツの陸軍細菌研究所から新種のウイルスM-88が盗まれますが、小型飛行機がアルプス山中で墜落したことから、細菌が飛散してしまう事態になります。
実は、この細菌は摂氏マイナス10度で自己増殖をはじめ、零度を越えると猛烈な毒性を発揮することから、世界中にイタリア風邪が蔓延し、やがて南極大陸に残る人類を除いて世界は滅んでしまいました。
残された人類が南極で暮らす生活が始まりましたが、地震学者の吉住は、アメリカで発生する地震の影響から核ミサイルが発射され、報復としてソ連から発射される核ミサイルの1つが南極に向けられてるということを突き止めます。
人類滅亡の危機を防ぐため、ホワイトハウスに詳しいカーター少佐と、その助手として吉住がホワイトハウスに行き、ミサイルの発射を防ごうとするのですが・・・
ポイント!
世界中でコロナが広まったときに、話題となったのがアルベール・カミュの小説「ペスト」と、小松左京の小説「復活の日」でした。
ワールドスケールのストーリーのため、外国の俳優も数多く出演している今回の映画ですが、中でも話題となったのは、南極ノルウェイ隊のマリト役で出演したオリビア・ハッセーです。
イギリスの女優であるオリビア・ハッセーは、ロンドンの舞台で俳優として出演していたところをフランコ・ゼフィレッリ監督に注目され、1968年「ロミオとジュリエット」のジュリエットを演じたことから人気女優となりました。
その後はいい役になかなか恵まれませんでしたが、カネボウ化粧品のCMに出演したときのCM曲が「君は薔薇より美しい」であったことが縁で、この曲を歌っていた布施博と1980年に結婚しました。(1989年に離婚)
なお、今回の作品では他に、角川映画の「人間の証明」でも出演したジョージ・ケネディが、南極アメリカ隊のコンウェイ提督役で出演しているほか、南極日本隊の隊員の一人に角川春樹が出演しています。
戦場のメリークリスマス
スタッフ&キャスト
- 監督:大島渚
- VOD:[U-NEXT] [Prime Video]
- キャスト
- ジャック・セリアズ陸軍少佐 -:デヴィッド・ボウイ(青年期)
- ヨノイ大尉(レバクセンバタ俘虜収容所所長) :坂本龍一
- ハラ・ゲンゴ軍曹 -:ビートたけし
- ジョン・ロレンス陸軍中佐 -:トム・コンティ
あらすじ
舞台となったのは、第2次世界大戦中のジャワ島にある日本軍捕虜収容所。
そこで捕虜だった英国陸軍中佐のジョン・ロレンスは、収容所内で起きたある事件がきっかけとなって、日本軍のハラ・ゲンゴ軍曹と敵同士ながら不思議な友情で結ばれていきます。
一方でハラの上官で所長の陸軍大尉ヨノイは、日本軍の輸送部隊を襲撃したのち捕虜となった英国陸軍少佐のジャック・セリアズを預かることになり、彼の反抗的な態度に腹を立てながらも、次第に惹かれていくのでした。
ある日、セリアズとロレンスは無線機を無断で所持していたという容疑から独房に入れられますが、ハラから呼び出された2人は、クリスマスプレゼントだということで釈放されます。
そんななか、自分の要求に応じようとしない俘虜長ヒックスリーに腹を立てたヨノイは、病気の捕虜も含めた捕虜の全員が集合することを命じ、ヒックスリーを刀で斬ろうとしたヨノイにセリオズは一歩一歩近づいていこうとするのですが・・・
ポイント!
デヴィッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけしという異色の組み合わせが話題になった映画ですが、そんな彼らの潤滑油のようなジョン・ロレンスを演じたのは、スコットランドの俳優トム・コンティです。
イングランドの劇団ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに参加して舞台活動を行い、ブロードウェイにも出演したトム・コンティでしたが、本作品以外でもクリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト ライジング」や「オッペンハイマー」といった作品に出演しています。
ちなみに今回の映画の英語の題名は「Merry Christmas, Mr. Lawrence」ですが、これはハラ軍曹が2人を独房から釈放する場面と、ラストでハラ軍曹が戦犯となって処刑される前にジョン・ロレンスと再会する場面でのハラ軍曹のセリフです。
映画では、ジョン・ロレンス以外の3人は死んでしまいますが、それを最期まで観察者として見届けてあげることが、映画の中のジョン・ロレンスの役割だったのかもしれません。
空気人形
スタッフ&キャスト
- 監督:是枝裕和
- VOD:[U-NEXT] [Prime Video]
- キャスト
- 空気人形・のぞみ:ペ・ドゥナ
- レンタルビデオ店員・純一:ARATA
- 人形の持ち主・秀雄:板尾創路
あらすじ
ある朝、空気人形ののぞみに心が芽生えたことから、彼女は持ち主である秀雄が仕事に出かけている間、街にくり出していきます。
そんななか、レンタルビデオ店で働く純一と出会い、同じレンタル店で働いていくうちに、次第に純一に惹かれていくのぞみでした。
いつものようにレンタルビデオ店で働く2人でしたが、店で働いていいるうちに釘が引っかかったことから穴が開き、のぞみの体から空気が抜けていきました。
見ないでというのぞみに驚くものの、必死に空気を吹き込んで助けようとする純一に幸福な気分になるのぞみでしたが、家に帰れば空気人形として秀雄との生活を送らないといけないのでした・・・
ポイント!
漫画家である業田良家の「ゴーダ哲学堂 空気人形」が原作の作品で、空気人形ののぞみを演じているのは、韓国の女優ペ・ドゥナです。
演劇俳優の母とCM監督の兄を持つペ・ドゥナは、母の影響もあって幼い頃から俳優になることを目指していました。
そんな彼女は、1998年にモデルとしてデビューした後、1999年に日本映画「リング」の韓国でのリメイク版「リング・ウィルス」の貞子役で映画にデビューしたのです。
その後、ポン・ジュノ監督のデビュー作である「ほえる犬は噛まない」で正義感の強い主人公や、山下敦弘監督の「リンダ リンダ リンダ」では、THE BLUE HEARTSの同名曲を学園祭のライブで歌う韓国人留学生の役で出演しています。
シリアスな作品からコメディまでこなせる演技派の女優だけあって、「空気人形」でも心を持ったのぞみの複雑な揺れ動く感情を見事に演じています。
また、空気人形を観たアメリカの監督ウォシャウスキー姉妹からのオファーもあったことから、ハリウッドにも進出する国際女優となりました。