風変わりな恋愛映画5選。愛こそは全て、なのだろうか?

恋愛映画には大きく分けて、恋愛が上手くいくものと恋愛が上手くいかないものの2種類あります。

人は恋愛が上手くいく映画を見る一方で、お互い好きなのに何かの理由で離れ離れになってしまう映画もよく観るでしょう。

また、恋愛を表す表現にも、相思相愛、片思い、失恋、悲運の恋などと様々な言葉があるように、恋愛映画にも必ずしもハッピーエンドだけではない映画もたくさんあります。

一筋縄でいかないのが恋愛ならば、恋愛も人それぞれ、時には一風変わった恋愛悲喜劇もあるのではないでしょうか。

そこで、今回は少しひねりのある、風変わりな恋愛映画をご紹介していきます。

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【男性・女性】

解説

【男性・女性】(1968) は、監督が【勝手にしやがれ】(1960) のジャン=リュック・ゴダールで、モーパッサンの短編小説をベースにフランスの若者をドキュメンタリータッチで描いた恋愛映画です。

ジャン=ピエール・レオ演じるポールと、実際の歌手であるシャンタル・ゴヤ演じるマドレーヌとの、正反対の性格ともいえる男女の恋を中心に描いた物語は、数あるゴダールの映画でも比較的分かりやすいものとなっています。

ロマンチックで理想主義なポールに対して、現実的で政治に対しては無関心なマドレーヌの会話は噛み合っているようでどこかずれているような面もあり、世界の中心には愛があると語るポールに対して、世界の中心にあるのは自分よと語るマドレーヌのセリフは、映画のタイトルが表しているような、ゴダールの映画に一貫して描かれる男性と女性のずれのようなものを感じさせてくれます。

恋愛映画と見ることもできますが、そこはゴダールが撮る映画ゆえなかなか一筋縄ではいきません。

映画の中で「この映画は『マルクスとコカコーラの子どもたち』と呼ばれたい」と語られるように、マルクス=当時の政治の状況やそれに対する若者の気持ちや、コカコーラ=アメリカの文化に対する憧れとベトナム戦争やアメリカが世界に広めようとする資本主義への反発が横軸で交わりながら、若者の恋愛が縦軸で描かれていきます。

また、ゴダールの映画ではどこかロマンチックな男性は最後には死んでしまい、現実的な女性がそれを見届けるというパターンが多いようです。

ロマンチックな男性は世界の中心には愛があると信じながらも失望するこでこの世から去り、現実的な女性は世界の中心には自分がいることで実際の世界と折り合いをつけて生きていけるのではないかなという気がします。

【男性・女性】は、男性と女性の恋愛を描きつつも、男性と女性の違いを1960年代のパリを舞台に生き生きと描いた映画であり、今見ても色褪せることのない映画の1つです。

作品情報

製作年/製作国 1968年、フランス
監督:ジャン=リュック・ゴダール
キャスト:ジャン=ピエール・レオ、シャンタル・ゴヤ、マルレーヌ・ジョベール
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【猟奇的な彼女】

解説

【猟奇的な彼女】(2003) は、監督が【僕の彼女を紹介します】(2004) のクァク・ジェヨンで、キム・ホシクがパソコン通信で連載したネット小説が原作となっています。

この映画は、細かい設定では少し突っ込みも入れたくなる所が無きにしもあらずなのですが、それまでの恋愛映画には見られなかったギャップがとても面白い映画といえます。

まず、映画のタイトルですが、恋愛映画に「猟奇的」というホラー映画のような題名を付けたところにギャップを感じてしまいます。

ただし、それまで「異様な、怖い」といったイメージの強い言葉が、この映画から「かわいい」という意味に受け取られるようになったというのも原作や映画に出てくる女の子のキャラが大きいといえるでしょう。

映画のストーリー自体は恋愛映画にあるボーイミーツガールの枠組みでストーリーが進んでいきますが、カップルの男性と女性のキャラもこれまでの恋愛映画にはあまり見られないギャップがあることも魅力のひとつです。

チャ・テヒョン演じるキョヌがチョン・ジヒョン演じる「彼女」に出会うのは電車の中ですが、そこで酔っぱらった彼女が初老の男性のかつらに吐いてしまうのに遭遇するという掴みの部分から、果たしてこれは恋愛映画なのかというギャップを感じてしまいます。

そこから「彼女」とキョヌの関係が始まるのですが、可愛い外見とは裏腹に理不尽な要求で振り回すかと思えば、容赦なく平手打ちをくらわす「彼女」に対して、嫌々ながらも付き合っていくうちに次第に惹かれていく、決してハンサムとはいえないものの包容力のあるキョヌというこのカップルの組み合わせがこの映画の最大の見どころといえるでしょうか。

【猟奇的な彼女】は、「彼女」が可愛い外見通りのイメージの女性であったり、キョヌが優しい内面だけでなくハンサムな好青年だったら、それほど騒がれることのない映画で終わったかもしれません。

そう考えると、男女とも外見と内面にそれぞれギャップのあるカップルがお互いに惹かれていくという姿に、多くの観客が共感したのでしょう。

作品情報

製作年/製作国 2003年、韓国
監督:クァク・ジェヨン
キャスト:チョン・ジヒョン、チャ・テヒョン、キム・インムン
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「猟奇的な彼女」公式サイト

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【17歳の肖像】

解説

【17歳の肖像】(2010) は、監督が【幸せになるためのイタリア語講座】(2000) のロネ・シェルフィグで、リン・バーバーの自叙伝を映画化した作品です。

女性の方が早く大人になるのか、同年代の男性を見ていてあまりの子供っぽさにうんざりしてしまう女性は多いようです。

キャリー・マリガン演じる16歳のジェニー・メラーは成績優秀で、将来はオックスフォード大学に進学することを目指している優等生です。

自分のことを気にかけてくれる男子はいるものの、彼女にはどこか物足らない気持ちがありました。

そんな彼女が、土砂降りの雨の日にピーター・サースガード演じるデイヴィッド・ゴールドマンと出合います。

同年代の男子にはない教養とウィットに富み、音楽界やそれまで知らなかった未知の大人の世界に連れていってくれたデイヴィッドに次第に惹かれていくのですが、そこには苦い結末が待っていたというのが大まかなストーリーです。

16歳の少女と倍以上もの年が離れた男性の恋愛といった映画ですが、本当のところ彼女がデイヴィッドを愛していたのかは疑問が残ります。

彼を愛していたというよりは、自分がそれまで知らなかった世界の扉を開けてくれたということと、刺激的な世界に対する憧れの象徴としてデイヴィッドのことを見ていたようです。

自分は周りの同じ世代とは異なり、大人の刺激的な世界に触れているのだとワクワクするジェニーでしたが、後半の2人の苦い結末を見れば、厳しい大人の洗礼を受けたともいえるでしょう。

この映画は邦題よりも原題の「An Education(日本語:教育)」の方が、映画のラストがしっくりくるようです。

デイヴィッドと浮かれていたジェニーは、彼女の才能を認めるオリヴィア・ウィリアムズ演じる英文学のスタッブズ先生と意見の食い違いから思わず彼女に酷いことを言ってしいます。

ですが、デイヴィッドと別れた後、オックスフォード大学に進学しようとした彼女がスタッブズ先生に救いを求めると、先生が彼女のその一言を待っていたという場面は、これが大人の対応だと妙に感心しました。

【17歳の肖像】は、年上の男性に惹かれる女の子の恋愛映画のようにも見えるのですが、それだけでなく「生きていく上では教育や教養も身につけなさいよ」と言っているようで、そこがとてもイギリス映画らしいラストだったように感じました。

作品情報

製作年/製作国 2010年、イギリス
監督: ロネ・シェルフィグ
キャスト:キャリー・マリガン、ピーター・サースガード、ドミニク・クーパー
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【(500)日のサマー】

解説

【(500)日のサマー】(2010) は、監督がミュージックビデオなどを手がけてきたマーク・ウェブで、本作品が初の監督作品です。

映画「卒業」を見て、自分は運命の人と結ばれることを夢想するロマンチックなジョセフ・ゴードン=レヴィット演じるトム・ハンセンと、両親の離婚から常に現実的でロマンスのかけらも持たないズーイー・デシャネル演じるサマー・フィンの出会いと別れを描いた映画です。

ただし、この映画に関しては、冒頭のナレーションでも述べているように、厳密にいえば恋愛映画ではありません。

映画はサマーを運命の人と信じたトムの回想から、サマーとの出会いと別れ、そして再会するまでの500日間をトムの回想という形でアットランダムに描かれています。

この映画の面白いところは、映画の冒頭では、受け身でロマンチストなトムに対して積極的で現実的なサマーが次第にすれ違う様が描かれるのですが、ラストでは運命の人と出合い結婚したサマーに対して、運命というものはなく人の出会いというのは偶然なのだと悟るトムというように、2人の考え方が逆転していることです。

サマーはトムに対して、あなたは運命の人ではなかったと告げて別れるのですが、サマーとトムはお互いに付き合うことで、サマーはトムの考え方に影響を受け、トムはトムでサマーの考え方に影響を受けることで、お互いにそれまでとは違った自分になったような気がします。

ほろ苦いボーイミーツガールな映画ですが、2人が出合うことによって、紆余曲折はあるものの2人にとってプラスになったということでは、恋愛とはお互いが好きになるだけではなく、お互いを成長させるためのものでもあると感じさせてくれる映画です。

作品情報

製作年/製作国 2010年、アメリカ
監督:マーク・ウェブ
キャスト:ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ズーイー・デシャネル、クラーク・グレッグ
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【愛がなんだ】

解説

【愛がなんだ】(2019) は、監督が【パンとバスと2度目のハツコイ】(2018) の今泉力哉で、角田光代の同名小説を原作とした作品です。

岸井ゆきの演じるアラサーの山田テルコは、成田凌演じる田中マモルに偶然出合ったことからマモルを好きになるものの、マモルの方では一度もテルコを彼女として思ったことがないという片思いですが、それでもマモルに対する一途な恋を貫くという、ある意味では究極の片思いともいえるストーリーです。

恋をすると、好きになった相手以外はもうどうでもいいとなったテルコは、ひたすらマモルに尽くしていくのですが、そんなテルコを時には疎ましくすら思うマモルは、彼女を都合のいい女という風にしか見ていません。

やがて、マモルは江口のりこ演じる塚塚すみれのことを好きになるのですが、すみれはマモルのことは何とも思わず、なぜかテルコをしきりに飲み会などに誘います。

そのため、マモルがすみれのことを好きだと知っているテルコは、マモルに会いたいがためにマモルに連絡をして一緒に来ないかと誘うのでした。

映画を見ていると、テルコの好きなマモルというのは、第三者から見ると言うことも薄ぺっらで冴えない男性にしか見えないため、どうしてこんな男性をテルコは一途にこれほどまでに好きになってしまったのだろうかと不思議な気持ちになります。

ですが、テルコにとっては、”自分が好きな人が全てであり、それ以外のことはどうでもいい” となるため、映画のタイトルにもあるように、他者からマモルのことを悪く言われるたびに、愛がなんだという気持ちで反論します。

ここにテルコと他の人との愛に対する考え方のすれ違いといったものが伺えます。

ただ、テルコは一途に恋をしているにもかかわらず、そのことで悩んだり、食欲がなくなるということはありません。

そんなテルコは、マモルを好きになっている自分の存在が生きている証と言っているようにも見えます。

【愛がなんだ】(2019) のテルコは、愛というものを超えた想いというものが、彼女の生きていく原動力なのではないのかと、ある意味テルコのたくましい姿を見せてくれる映画です。

作品情報

製作年/製作国 2019年、日本
監督:今泉力哉
キャスト:岸井ゆきの、成田凌、深川麻衣
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「愛がなんだ」公式サイト


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