硫黄島からの手紙
【硫黄島からの手紙】(2006)は、第二次世界大戦での硫黄島の戦いを描いたクリント・イーストウッドが監督による戦争映画。本作は、第二次世界大戦における硫黄島の戦いを日米両者の視点で描いた”硫黄島プロジェクト”の日本側視点の作品であり、アメリカ側の視点を置いた作品は【父親たちの星条旗】(2006)となっています。
当初、本作の監督は日本人監督に依頼するつもりで黒澤明の名前が上がったものの、最終的には【父親たちの星条旗】(2006)に引き続きクリント・イーストウッドが引き受けました。主人公が日本人かつ全編日本語のアメリカ映画はこれまでになく、本作が初めての作品となりました。
1945年、第二次世界大戦・硫黄島の戦いで死闘を繰り広げた日本軍と、祖国に残された家族の思いが描かれた物語です。本作の特徴は、日本兵たちが家族へ向かって記した手紙を基に物語が展開されていくこと。
アメリカ軍に立ち向かう日本兵たちの心情がリアルに描かれており、戦時中の緊迫した心境や複雑な思いが見受け取れます。
フルメタル・ジャケット
【フルメタル・ジャケット】(1988)は、グスタフ・ハスフォード著書”ショート・タイマー”を原作に、【シャイニング】(1980)などで知られる名匠スタンリー・キューブリックが監督を務めたベトナム戦争を題材にした戦争映画。本作は、海兵隊訓練所で過酷な訓練を受ける新兵の姿と、ベトナム戦争の2部構成となっています。
鬼軍曹の元で追い込まれながらも何とか卒業を迎えた新兵たちが戦場で精神を蝕まれ、次第に人間性を失い殺人マシーンへと変貌を遂げていく物語。
スタンリー・キューブリック監督が自身で字幕翻訳をチェックしており、当初の翻訳が安穏だったことからより直訳に近い汚さを出すように求めた結果、奇抜な言い回しが多いことで話題になりました。
海兵訓練所での撮影時には、あまりにも理不尽な暴言を受けた出演者が怒り出すことまであったというエピソードもあります。戦争映画ではあるものの、そこに描かれたのは明らかに人間の狂気であり、屈強な軍人でさえも心を蝕まれていく……戦争というものがいかに人々を壊していくのかをリアルに描いた作品となっています。
プライベート・ライアン
【プライベート・ライアン】(1998)は、ナイランド兄弟の逸話を基にスティーヴン・スピルバーグが監督を務めた、第二次世界大戦・ノルマンディー上陸作戦を描いた戦争映画。アカデミー賞で11部門にノミネートされたうちの5部門(監督賞、編集賞、撮影賞、音響賞、音響編集賞)を受賞するなど、全世界で大ヒットを収めた不朽の名作です。
本作はフィクション映画ではあるものの、実在したナイランド兄弟の逸話が基になっています。ノルマンディー上陸作戦が成功に終わり、オマハビーチの攻防を生き延びた7人の兵士たちが兄弟を全員失った兵士の救出へと向かうストーリー。
クランクイン直前にはトム・ハンクスを筆頭に、出演者たちが元海兵隊の協力を受けて10日間ものブートキャンプを行っており、当時の兵士たちと同じ装備を背負って行軍をするなど厳しいものでした。
ちなみに、ライアン役のマット・デイモンはこの訓練から意図的に外されていたため、リアルな険悪な雰囲気を作り出すことに成功しました。
火垂るの墓
【火垂るの墓】(1988)は、野坂昭如著書の同名小説を原作に、高畑勲が監督を務めたスタジオジブリ制作のアニメーション映画。本作は、1945年の第二次世界大戦下にて家族を失いながらも、懸命に生きる14歳と4歳の兄妹の姿を描いた物語です。
監督を務めた高畑勲は1945年当時の風景の再現に特にこだわり、劇中の空襲などは自身が経験した岡山空襲の記憶を生かしたり、戦闘機がどの方角から侵入してきたかなどを徹底的に調査して製作しました。
また、高畑勲監督は【火垂るの墓】(1988)について、兄妹たちが周囲との共生を拒絶して社会生活に失敗していく姿は現代人にも通じるものであることから、現代の若い世代にこそ共感して欲しいと語っていました。
幼い兄妹が戦争をきっかけに理不尽な暮らしを余儀なくされ、そんな中でも妹を必死に守ろうとする兄の姿は健気で胸が締め付けられます。