東京裁判-戦勝国が敗戦国を裁く矛盾とは…

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作品情報

「戦争には勝者も敗者もいない」と述べたのは硫黄島の二部作を撮影したクリント・イーストウッドですが、実際には戦争に勝った国が負けた国を裁くという裁判が過去に行われました。

1つはナチス・ドイツの戦争犯罪を裁いた「ニュルンベルク裁判」で、もう1つは日本の侵略戦争を裁いた「東京裁判」です。(東京裁判の正式名称は「極東国際軍事裁判」)

今回紹介する映画「東京裁判」は、アメリカが裁判の模様を記録した膨大なフィルムを、映画「人間の條件」でも知られる監督の小林正樹が編集したドキュメンタリー映画です。

4時間30分にもわたる長編のドキュメンタリーですが、この映画を観ることで戦前から戦後にかけての日本の歴史が分かるだけでなく、戦争とは一体何なのか、日本の戦後とは何だったのかという問いを突き付けられているといえるでしょう。

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あらすじ

東京裁判は昭和23年に連合軍最高司令官マッカーサー元帥が、極東国際軍事裁判所条例を発布し、戦争そのものに責任のある主要戦犯を審理するために、市ヶ谷の旧陸軍省参謀本部で開廷された裁判です。

この裁判では、指導者百名以上の戦争犯罪者の中から28名が被告に指定され、その中には東条英機元首相や坂垣征四郎大将、広田弘毅元首相といった名前が挙げられていました。

裁判官および判事は、降伏文書に署名した9ヵ国と、インド、フィリピンの計11ヵ国代表で構成され、裁判長にはオーストラリア連邦代表、ウイリアム・F・ウェッブ卿が選ばれました。

5月3日に開廷した裁判では起訴状の朗読が行われ、そこで戦争犯罪だけでなく、平和に対する罪や人道に対する罪を含む55項目におよぶ罪状が挙げられたのです。

これに対して弁護側は、戦争は国家の行為であることから個人の責任は問われないと異議の申し立てを行いましたが、裁判所によって却下されてしまいます。

また、裁判長であるウイリアム・F・ウェッブ卿は天皇陛下を裁判に出廷させたい意向を持つ一方で、天皇陛下を残しておいた方が日本を治安しやすいと判断したアメリカ側の駆け引きや、インドの判事パルによる今回の裁判の違法性と非合理性を指摘して、被告の全員の無罪を主張したという点も、東京裁判での見どころの1つです。

裁判では、被告に指定された28名のうち、東条英機を含む7名が絞首刑を宣告され、昭和23年12月23日未明に巣鴨拘置所で実施されました・・・