映画に出演している俳優を分けるとすれば、演技の上手い俳優と存在感のある俳優の2種類があるのではないでしょうか。もちろん、この2つを兼ね備えている俳優がいるのも確かですが、ミュージシャンが映画に出演している場合は、その存在感が映画を引き立てているのも確かです。
そこで今回は、存在感のある演技をしているミュージシャンが出演している映画を紹介します。今回の映画を観て、ひと癖もふた癖もあるミュージシャンの演技を堪能してください。
パフォーマンス/青春の罠
スタッフ&キャスト
- 監督:ドナルド・キャメル、 ニコラス・ローグ
- 原題:Performance
- VOD:[U-NEXT] [Prime Video]
- キャスト
- チャス :ジェームズ・フォックス
- ターナー :ミック・ジャガー
- ファーバー :アニタ・パレンバーグ
あらすじ
ギャングのチャスは、ボスのフラワーズの命令に背いて馬券屋ジョーイを殺してしまったことから、組織から追われる身となってしまいました。
そこでチャスは高跳びをするまでの隠れ家として、引退したロックスターのターナーの元に向かうのですが、初めの頃はターナーに拒絶されてしまいます。
ですが、次第にターナーはチャスの凶暴な魅力に、チャスはターナーの怪しい魅力に、お互い惹かれていくうちに同居人として受け入れられていくのですが・・・
ポイント!
暗黒街の世界に生きる男性と中性的で怪しい魅力を秘めたロッカーとの交流を描いたこの映画で、ターナーを演じているのは、この映画が初出演となるローリングストーンズのミックジャガーです。
この映画を観ると分かるように、60年代のミックジャガーは中性的な男のフェロモンに溢れていて、恐らくこれに匹敵するのは70年代の沢田研二ではないかなという気がします。
また、この映画で面白いのは、暴力が支配する世界に生きるチャスと、オスカーワイルドのようなデカダンな世界に生きるターナーが次第に惹かれ合っていくという姿でしょうか。
なお、この映画でターナーの恋人のファーバー役にアニタ・パレンバーグが出演しているのですが、当時アニタ・パレンバーグはローリングストーンズのギタリストだったキースリチャーズの彼女だったことから、この映画を観たキースがスクリーンの2人の姿を見て思わず嫉妬に駆られてしまったそうです。
ブルース・ブラザース
スタッフ&キャスト
- 監督:ジョン・ランディス
- 原題:The Blues Brothers
- VOD:[U-NEXT] [Prime Video]
- キャスト
- “ジョリエット”・ジェイク・ブルース:ジョン・ベルーシ
- エルウッド・ブルース:ダン・エイクロイド
- 謎の女:キャリー・フィッシャー
あらすじ
3年の刑期を終えて出所したジェイク・ブルースを迎えた弟のエルウッド・ブルース。
彼らは自分たちが幼少の頃に育ったカトリックの寺院を訪れるのですが、シスターのメアリー・スティグマタから固定資産税を支払わないと孤児院は閉鎖されてしまうと聞かされます。
何とか孤児院を救いたい2人は、ジェイムズ・クリオウファス牧師の移動礼拝に出席するのですが、クリオウファス牧師の説話を聞いたジェイクは突然神の啓示を受け、自分たちのバンドである「ブルース・ブラザーズ」を再結成して孤児院を救うための資金を集めようとするのですが・・・
ポイント!
ブルース・ブラザーズは、アメリカのコメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」のメンバーだったジョン・ベルーシとダン・エイクロイドが音楽的な趣味から始めたバンドでしたが、ここをきっかけにしてバンドを結成したという異色のコンビです。
スラップスティックな映画のストーリーもさることながら、この映画の魅力はやはり2人のミュージシャン顔負けのパフォーマンスといえるでしょう。
それだけでなく、この映画には牧師を演じたジェームス・ブラウンやアレサ・フランクリン、レイ・チャールズなどといったブルースやソウルの大御所のパフォーマンスも見どころ十分です。
そして執拗にジェイクを襲う謎の女に、「スターウォーズ」でレイア姫を演じたキャリー・フィッシャーが出演しているのも意外といえば意外な映画です。
プリンス/パープル・レイン
スタッフ&キャスト
- 監督:アルバート・マグノーリ
- 原題:Purple Rain
- VOD:[U-NEXT] [Prime Video]
- キャスト
- キッド:プリンス
- アポロニア:アポロニア・コテロ
- キッドの父親:クラレンス・ウィリアムズ3世
あらすじ
キッドはミネアポリスで有名なバンドでしたが、最近は落ち目になっただけでなく、ライブハウスのオーナーは彼の勝手な振る舞いに不満を抱いていました。
そんななか、キッドのもとにアポロニアという美しい娘が現れて、2人は惹かれ合うのですが、「ザ・タイム」のリーダーのモーリスが自分のバンドにアポロニアを引き入れたことを知り、2人はケンカ別れしてしまいます。
バンド活動も思うようにいかず、両親の不和にも心を痛めていたキッドでしたが、ある日父親がピストル自殺を図ったのをきっかけに、父親もまた自分と同じようにミュージシャンを志していたことを知ったキッドは、父に捧げる歌「パープル・レイン」をライブで演奏するのでした・・・
ポイント!
80年代の洋楽といえばMTVの存在は不可欠ですが、当時のMTVを観てプリンスのプロモーションビデオを観ない日はないというのが、この「パープル・レイン」の映画が上映された頃でした。
この映画はプリンスがまだブレイクする前の下積み時代を描いたというものですが、同じような下積み時代を描いたエミネムの自伝映画「8 Mile」と比べると、ややおとぎ話的なストーリーになっているのは時代の違いともいえるかもしれません。
ただ、この映画のラストで「パープル・レイン」を演奏するプリンスのパフォーマンスは圧巻ともいえるだけに、このラストだけでも映画を観る価値は十分にあるといえるでしょう。
なお、映画のタイトルでもある「パープル・レイン」とは、一説によると終末の世界に降る雨のことで、そんな世界の中でも愛する者と一緒に進んでいこうという意味だそうです。
ダンサー・イン・ザ・ダーク
スタッフ&キャスト
- 監督:ラース・フォン・トリアー
- 原題:Dancer in the Dark
- VOD:[U-NEXT] [Prime Video]
- キャスト
- セルマ :ビョーク
- キャシー :カトリーヌ・ドヌーヴ
- ビル :デヴィッド・モース
あらすじ
チェコからの移民の女性セルマは、12歳の息子のジーンと2人で暮らしていました。
セルマは先天性の病気でいずれは失明すると医者から言われ、遺伝により息子も13歳までに手術をしなければ失明するといわれたため、セルマは昼夜働くことで手術の費用を貯めていました。
ですが、トレーラーの家主であるビルから貯めていたお金を盗まれてしまい、それを取り戻そうとしたセルマは、ビルともみ合いになったあげくに、ビルの拳銃で彼を殺してしまうのでした。
その後、ビルを殺害したことでセルマは逮捕され、裁判にかけられるのですが・・・
ポイント!
ミュージシャンが出演した映画で、恐らくこれほど地味な役で出演した映画はないのではというくらい、地味な役をアイスランドのミュージシャンであるビョークが演じています。
ラストの場面を観て、救いようのない映画だと思う人も多いかもしれませんが、この映画の監督であるラース・フォン・トリアー監督のインタビューなどを読んでいると、現代の殉教者といったものを描きたかったというのがモチーフにあるようです。
また、この映画の見どころの一つとして、映画の場面場面で突然に現れるミュージックシーンですが、それまでのミュージカルとは違って、リアルな工場などの場面で突然踊りだすというのも当時としては斬新だったのではないでしょうか。
なお、この映画には「シェルブールの雨傘」や「ロシュフォールの恋人たち」のミュージカルで主演していた、カトリーヌ・ドヌーヴがセルマの工場の同僚として出演しています。
アリー/ スター誕生
スタッフ&キャスト
- 監督:ブラッドリー・クーパー
- 原題:A Star Is Born
- VOD:[U-NEXT] [hulu] [Prime Video] [Netflix]
- キャスト
- ジャクソン・“ジャック”・メイン:ブラッドリー・クーパー
- アリー:レディー・ガガ
- ボビー:サム・エリオット
あらすじ
カントリー歌手としてスターだったジャクソン・メインは、ある日何気なく立ち寄ったドラッグ・バーでアリーのライブを耳にします。
その歌声に心を揺さぶられたジャクソンは、その当時ウェイトレスだったアリーに次のコンサートで一緒に出演するように彼女にもちかけます。
とまどうアリーでしたが、ジャクソンのライブに出演しデュエットすることで観客から喝さいを浴び、ジャクソンのツアーに同行するうちに、次第にスターへの階段を駆け上がっていくのですが・・・
ポイント!
この映画はアメリカのミュージシャンであるレディー・ガガがアリーを演じていますが、この映画はもともと1937年に映画化されたものがオリジナルで、その後も1954年と1976年にリメイクされたことから、今回が3度目のリメイクという映画です。
1937年のオリジナル版「スター誕生」は映画業界でのストーリーでしたが、1976年のバーブラ・ストライサンド出演の「スター誕生」はストーリーが音楽業界に変更し、今回の映画も1976年版のストーリーを踏襲しているともいえます。
ストーリー的に、それまで無名だった女性がスターダムの階段を上がっていく一方で、スターだった男性が次第に落ちぶれていくというのは珍しくないストーリーのように思いますが、この映画の魅力は、何と言ってもアリーを演じたレディー・ガガの歌唱力に尽きるといえるでしょう。
また、レディ・ガガといえば奇抜なファッションメイククで観る人を驚かせるというイメージがあるのですが、この映画では素のレディ・ガガも観ることができるというのも、別の意味で驚きという映画です。