【くれなずめ】レビュー考察。あの青春へもう一度行けるなら。

(C)2020「くれなずめ」製作委員会

【くれなずめ】は、原作者 松居大悟自身の実体験を基にしたオリジナル舞台劇の映画化。友人の結婚式で余興を披露しようと久しぶりに再会した高校時代の旧友同士が、結婚式の披露宴から二次会までの間、自分たちの過去に思いを巡らす様子を描きます。

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【くれなずめ】あらすじ

結婚披露宴会場で、人の男たちが打ち合わせをしていました。

年ぶりの再会ながらも、テンポよく打ち合わせは進んでいきます。

学生時代から友人であった彼らは、まるで高校生の頃に戻ったかのようにふざけ合い、カラオケで久々の再会を喜びます。

優柔不断だけど心優しい吉尾(成田凌)、劇団を主宰する欽一(高良健吾)と役者の明石(若葉竜也)、唯一の既婚者となったソース(浜野謙太)、会社員で後輩気質の大成(藤原季節)、地元のネジ工場で働くネジ(目次立樹)。

皆が揃うと、そこはもう高校時代の思い出の理科実験室のようでした。

カラオケも終わりに差し掛かったとき吉尾は、ふと感じていた疑問を口にします。

「もしかして、俺ってさぁ、ほら5年前…。

「分かってるよね?死んでるんだけど」

真剣に聞く吉尾になぜか仲間たちは冗談めかして話をはぐらかします。

吉尾は言葉通り、死んでいました。

結婚式当日。余興は大失敗。

高校時代に文化祭で披露した赤フンダンスは、結婚式の披露宴には不向きでした。

フンドシ一丁で、ウルフルズの【それが答えだ!】を全力で踊るという余興は、観客から冷ややかな視線を浴びたのです。

結婚式の余興をきっかけに集まった人と、一度死んだはずなのになぜか成仏できない吉尾。

大切な人との青春を振り返りつつもどこか切なくなってしまうのは、きっとわたしたちにも同じような青春が思い浮かぶからなのかもしれません。

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キャスト

吉尾和樹(成田凌)

 
 
 
 
 
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俳優紹介:成田凌は平成5年生まれのファッションモデル兼俳優。

ソニー・ミュージックアーティスツ所属で【ニワトリ・スター】(2018)【愛が何だ】(2019)【チワワちゃん】(2019)をはじめとする人気作品に出演しています。

本作【くれなずめ】では主人公・吉尾和希役を演じます。

人物紹介:高校時代には清掃委員会に所属していましたが、後輩を庇いミキエに怒られるなど気弱ながらに仲間思いの一面が見えます。明石に誘われて演劇の道に進みます。

明石哲也(若葉竜也)

 
 
 
 
 
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俳優紹介:若葉竜也は1989年生まれの俳優で、第8回TAMA映画賞・最優秀新進男優賞(2016年)を【葛城事件】にて受賞しています。

今泉力哉監督による【街の上で】(2021)の主演で話題になりました。

人物紹介:欽一が主宰する劇団に所属する舞台役者の役をやっています。

チームの中心的存在で吉尾含むみんなから愛されています。

曽川拓(浜野謙太)

 
 
 
 
 
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俳優紹介:浜野 謙太は1981年生まれの日本のミュージシャン、作曲家、俳優です。インストゥルメンタルバンド・SAKEROCK(2015年に解散)のメンバーとして、トロンボーン、スキャットを担当していました。

また、自身がリーダーを務めるバンド・在日ファンクではボーカル兼リーダーを、Newdayではトロンボーンを担当するなど、多彩な音楽活動が注目を集めています。

人物紹介:和希たちの後輩でサラリーマンをしており、唯一の既婚者です。

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くれなずめ見どころ

成田凌の名演技

成田凌は、【ニワトリ・スター】【愛が何だ】【チワワちゃん】など、数多くの作品を通じて乙女をたぶらかすクズ男の演技に徹してきたイメージがある方もいるでしょう。

しかし、今回演じる吉尾は不器用ながらもみんなに愛される誠実な好青年として描かれていました。

どちらかと言うと気弱で、同じ清掃委員で気が強い女子ミキエ(前田敦子)にも口答えができず、人に合わせることで調和を得ていたタイプかもしれません。

それでも、吉尾のその優しさを周りの人々は愛おしく思っていました。

6人の男子の「男子ならではのノリ」の中心にはいつも楽しそうな吉尾の笑顔がありました。

気弱だけれど、実は誰よりもみんなのことを考えて行動できる人情あふれる吉尾だからこそ、死んでしまってからもなお、高校時代のみんなが集まってくるようにも感じられます。

ミキエと吉尾

吉尾は高校時代からずっとミキエのことが好きでした。

ミキエとは結婚式で再会しますが、変わらずキレキャラのミキエに怒られてしまいます。

そんな彼女に「ずっと好きです」と告白する吉尾。

しかしミキエは、吉尾に自分の娘の写真を突き付けます。

ミキエは結婚し、子供もいました。

「幸せになれよー!」と声をかける吉尾に「死んでるから偉いの?生きてても変わんねぇんだよ」とミキエはさらに怒りを示しながら捲し立てます。

ミキエは一見、怒ってばかりのようにも見えますが、本質的には誰よりも平等で、ある種吉尾のお人好しがよくない方向に働いていたときに、唯一見抜いていた人間でもあると考えられるでしょう。

あくまで考察ではありますが、死んでもなお死にきれない吉尾に喝を入れることができるのは、ミキエだけであり、彼女もそれわかっていたのかも知れません。

吉尾は愛されているが故に、周りと衝突することも少ないのではないでしょう。

ミキエはそんな吉尾に苛立ちながらも、彼の幸せを誰よりも願っていたようにも思えます。

スクールカースト

吉尾たち一向はいわゆるスクールカーストの「底辺」のグループでした。

文化祭の打ち上げのカラオケボックスでクラスの中心的存在のクラスメイトに絡まれたとき、彼らの中の空気が凍りつきます。

争いを好まない吉尾は、クラスメイトの言われるがままに芸を披露し侮辱されますが、それでもそれは弱い彼なりの正義でした。

こうしたクラスの中でのスクールカーストの描写は、前提として「死人が生きている」というファンタジー要素が組み込まれた本作品の中でもどこか生々しく、観ている人の胸をキュッと締め付けます

思わず「どうか吉尾たちの青春を邪魔しないでくれ!」と感じてしまう場面でもあるでしょう。

人の絆が深まったきっかけでもあるこの出来事の回想シーンは、この作品の中でも印象に残った方も多いはずです。

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 まとめ

回想シーンが入り混じり全ての謎が明らかになった時に少し切なさを感じてしまうのは、この6人の絆と、もう戻れない青春時代を見ている人それぞれが思い出しているからかもしれません。

帰りたい青春がある人に、ぜひ見て欲しい作品です。

オフィシャルサイト
(C)2020「くれなずめ」製作委員会