Netflix映画【フラクチャード/fractured】ネタバレと感想。
両親と娘の家族旅行の途中、立ち寄った休憩所で怪我を負ってしまった娘と父。
父親は軽傷、娘も目立つところに怪我は無かったものの、そのまま病院へ連れて行きました。
しかし、検査に行った娘と付き添っていた妻がそのまま姿を消してしまったのです。
2人に一体何が起こったのか!?
映画【フラクチャード】あらすじ
レイ・モンロー(サム・ワーシントン)は、妻ジョアンと6歳の娘ペリとの旅行中、ある休憩所に立ち寄りました。
娘が、大事にしていたコンパクトを失くしたと騒いだため、ジョアンはトイレに置き忘れたかと確認しに行き、レイは車内を探すことに。
しかし、レイが探している間、車を降りていたペリが近くにあった工事現場に落下するという事故が起こります。
レイは、ペリを助けようと手を伸ばしましたが間に合わず、彼も一緒に落ちてしまいました。
戻って来たジョアンが2人に駆け寄ると、レイは頭を打ったようで朦朧としてジョアンの呼びかけにすぐに答えず、彼女を振り払います。
少しするとレイの意識は戻り始め、ペリを抱きかかえて叫ぶジョアンに気づきました。
ペリは、腕の骨を折ったようですが他には傷も見当たりません。
救急車を呼ぶより、このまま病院に運んだ方が早いと思ったレイは、ペリを抱えて近くにある救急病院に駆け込みました。
レイが手続きをし、ジョアンはペリを抱えて院内に入ります。
手続きには時間が掛かりペリの治療はすぐには始まらず、レイは別室で”ありえない”質問ばかりされたのです。
・ペリに手術経験やアレルギーは?
・家族に精神障害者は?
・麻薬やアル中は?
・扶養家族のアビー・モンローとは?
(レイの前妻で8年前に死去)保険の更新がされていないとのことで扶養家族にアビーの名が出る。
・雇用主は同じ?
・結婚していますか?
・何年間?
・ペリを臓器提供登録するか?
・ペリの血液型は?
そうしてやっと治療室に運ばれたペリは、ベルスラム医師の診察を受けました。
腕に骨折が見られ、頭を打っていることもありCT検査も受けることに……。
付き添いは家族ひとりと言われ、レイは待合室で待たされました。
ところが、何時間経過しても2人は戻ってくるどころか、ペリ・モンローという患者名すら登録されていなかったのです。
映画【フラクチャード】解説(ネタバレ)
レイに何が起こっていたのか?
これはすべてレイの幻覚妄想の物語でした。
工事現場で落下したペリは頭や体を強打して死亡。
ペリを見たジョアンがレイを責めるも、朦朧とした意識の中で振り払われたジョアンも突き出していた鉄骨に頭を突き抜かれて即死していたのです。
レイは8年前、アビーという妻を事故で亡くしていましたが、これはレイの飲酒運転による正面衝突事故で隣に乗っていたアビーだけが死んでしまいました。
この事故がレイの精神的トラウマとなっており、彼の嘘の記憶を作り出してしまったのです。
2人は病院に運ばれたわけではなく、受付すらしていないので患者名にペリの名前が無いのは当たり前。
想像を絶する恐怖を避けるためであり、自分がペリとジョアンにしたことに脳は対処できなかったようでした。
ジョアンとペリはどこにいる?
結果として、ジョアンとペリが居る場所は地下にある手術室でした。
レイは、待合室で待っていた長い時間で臓器が入っているであろうクーラーボックスを救急隊員が受けり、それと引き換えに医師へ封筒を渡す場面を見ていたため、そこでは違法な”臓器提供”が行われていると思い込んでいました。
このような嘘を脳が作り出してしまったようです。
それでも2人は生きている、臓器を取り出されていると思い込んだレイは、保安官を殺害してキーを手に入れ地下に忍び込みます。
ちょうど、手術が行われている所に乱入して”ジョアンとペリ”を連れ出すと、そのまま車に乗せて逃げたのです。
しかし、レイが連れ出したのはペリでもジョアンでもなく、交通事故で怪我をした男性でした。
ではペリとジョアンの遺体はどこにあるのか、それは殺害直後にレイが車のトランクに乗せていたのです。
映画【フラクチャード】見どころ
幻覚と現実の狭間は不思議な感覚に襲われる
レイの主張を誰も信じないといった展開は、ジョディ・フォスター主演の【フライトプラン】(2005年)を思わせるものでした。
あの作品も、ジョディ演じる主人公の話が本当なのか、それとも彼女が幻覚を見ているのか最後まで分かりませんでしたが、本作もまた同じような展開で楽しめる作品となっています。
レイは妻子が連れて行かれたまま戻ってこないと主張するものの、妻子を見た人は誰もいない。
現実なのか妄想なのか、小さなヒントも見逃さずにどちらの言い分が正しいのかを探る、不思議な感覚に包まれます。
病院では、医師の手に負えないとのことで群の精神科で働いているテレサという女性を呼び寄せました。
この時点では、レイの不安を和らげるために呼ばれたのかと思いきや、彼女の言葉ひとつひとつから少しずつ状況が見えてくるようになります。
そういった探りの過程も楽しめるのが、映画【フラクチャード】の魅力のひとつと言えるでしょう。
レイのファイルが鍵
テレサの話の中で、”レイのファイル”が見つかったと言っていますが、これはつまり”カルテ”ではないかと思われます。
「これはレイのファイル ペリのことは何も書いてない」
この、レイのファイルであることが物語を解き明かすポイントになっています。
8年前の彼にはアビーという妻がいました。
愛する妻を自分のミスで失ったことがトラウマになっており、その時からずっと精神状態が不安定だったのかもしれません。
ファイルに書かれているのは、アビーのこと、トラウマのこと、それによる精神状態のことなどすべてが書き込まれているはず。
つまり、今回もすべてレイの妄想によるものであるということが、レイのファイルを通じて伝えられてくるのです。
ただ、ここまででは彼が2人を殺害したとまでは分かりません。
実際に2人は存在していないという可能性もありましたが、工事現場に行って初めて2人が殺害されたという描写が見えてくるのです。
映画【フラクチャード】の感想
レイが病院でジョアンと会話しているシーン、担当の医師とジョアンやペリが会話していたりするシーンがあったので現実かと思っていましたが、それが妄想だったというどんでん返しを食らいました。
すべてはレイの妄想の中での物語。
現実、妄想それぞれの表情が変わっていくサム・ワーシントンの表情の作り方が最高でした。
初めは妻子を心配する父であり夫としての表情、しかしテレサに指摘されたあとのトラウマを抱えるレイの表情、どちらも同じ人物ですが表情が全く違うのです。
これはサム・ワーシントンの演技力を堪能するともいえる作品です。
時には優しく、時には厳しく、そして狂気に変わる。
ぜひ、この変化をお楽しみいただければと思います。
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