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戦う俳優の映画5選。映画そのものが戦場だ!

意識的であれ、無意識的であれ、人は何かに対して戦っています。

戦いからは無縁であるようなサラリーマンでも、満員電車のドアに顔面を押しつぶされそうになりながら会社に行く姿は日々の戦いともいえるでしょう。

戦いといえば、誰もが思い浮かべるのはまず戦争、次にボクシングやプロレスなどといった格闘技でしょうか。

しかし、これだけは誰にも譲れないというものを持っている人は、そのために日々何かに対して戦います。

そこで、今回は出演している俳優に焦点を当てながら、日々戦い続けている姿を描いた映画を紹介していきます。

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【女囚701号/さそり】

作品解説

「女囚701号/さそり」出典:Amazon

【女囚701号/さそり】(1972) は、篠原とおるの漫画「さそり」を伊藤俊也監督が映画化した作品です。

かって恋人だった夏八木勲演じる刑事の杉見次雄に裏切られた恨みから、警察署の前で杉身を襲うものの失敗したことで、梶芽衣子演じる松島ナミは逮捕され女子刑務所に投獄されてしまいます。

地獄のような刑務所生活を体験するものの、自分を陥れた男たちを復讐する一念から耐え抜き、やがて不満が爆発した女囚たちのストライキから脱走に成功します。

全身黒ずくめの姿で再び娑婆に出てきた松島ナミは、杉見をはじめ恨みのある男たち1人1人に復讐していく、というのが大まかなストーリーです。

【女囚701号/さそり】 の魅力はなんといっても、主役の松島ナミを演じる梶芽衣子の存在が大きいでしょう。

口数が少ないという設定のためか、映画の中のセリフは少ないのですが、そのセリフを補うかのような視線の強さは、一度見たら忘れらえないほど鮮明なものです。

目は口ほどに物を言うといいますが、梶芽衣子が【女囚701号/さそり】の中で見せる鋭い視線は 、女子刑務所という舞台設定と心の中に燃え続ける男達への復讐の気持ちが感じられます。

演技でセリフ以上のことを語れたというのが、【女囚701号/さそり】が当時ヒットした要因のひとつであったでしょう。

また、【女囚701号/さそり】は、復讐する1人の女性の姿を描いているということもあってか、男性の俳優の殆どがダーティーに描かれています。

漫画が原作のため、刑務所の描写もかなり戯画的ではありますが、刑事の杉見役の夏八木勲を筆頭に、刑務所の所長は渡辺文雄に看守長が室田英男と、今改めてみるとこんな俳優が出演していたのかという驚きもあります。

この映画が公開されたのは1970年代ですが、この時代を振り返ってみると反体制かつ野蛮な時代であったようです。

そのことは、【女囚701号/さそり】の映画の冒頭で君が代が流れることや、随時日の丸の旗が映し出されることに加えて、男性社会の象徴のような刑務所内で無意味な労働を強いられる女囚たちといった場面を見てもうかがうことができます。

高倉健演じるヤクザの姿が魅了されたように、刑務所を脱走し自分を裏切った男性に復讐する松島ナミの姿というのは、既存の体制に反抗する当時の学生達とどこか重なる部分があったともいえるでしょう。

基本情報

公開・製作国:1972年、日本

監督:伊藤俊也

配給:東映

キャスト:梶芽衣子、夏八木勲、渡辺文雄

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【太陽を盗んだ男】

作品解説

「太陽を盗んだ男」出典:Amazon

【太陽を盗んだ男】(1979) は、監督が長谷川和彦、原子力発電所からプルトニウムを盗み出し原子爆弾を製造する中学の理科教師を沢田研二が演じています。

公開された当時は興行的に成功しなかったものの、次第にカルト的な人気が起こったことから現在では高く評価されている作品となっています。

中学の理科教師である沢田研二演じる城戸誠がたった1人で原子爆弾を製造し、警察に脅迫電話をかけるのですが、最初の要求がプロ野球のナイター中継を最後まで放送しろというもので、2回目の要求がローリングストーンズの日本公演を実現させろというものでした。

この荒唐無稽ともいえる要求に城戸が交渉相手に指名した菅原文太演じる丸の内警察署捜査一課の山下警部は困惑するのですが、最初の要求はたまたまテレビで見ていたナイター中継が途中で終わったから、2回目の要求はラジオのDJだった池上季実子演じる沢井零子による公開リクエストの結果という、その場の思い付きともいえる行き当たりばったりなものでした。

【太陽を盗んだ男】 では原爆を作ったものの、それで何をしたいのかよく分からないという、イデオロギーや政治にすっかり醒めてしまった世代の孤独な姿というのがよく描かれています。

そのことは、冒頭のバスジャックで伊藤雄之助演じる犯人の山崎留吉が戦争で息子を失ったことから、皇居前で天皇陛下に会わせろという明確な意思とは対照的な姿にも見えます。

映画は被ばくで瀕死の状態の城戸が持つ原爆が爆発させることを予感させるラストシーンで終わりを迎えるのですが、結局のところ自ら被ばくしてまで城戸が何のために原爆を作ったのかというのは最後まで分かりません。

しかし、冴えない理科教師である城戸の孤独な姿をスクリーンを通して見ていると、何に対してかは分からないものの何かに対して闘う姿というのが見る者に伝わってくるのも確かです。

なお【太陽を盗んだ男】では、皇居前や国会議事堂のゲリラ撮影や、国会議事堂にダミー爆弾を置き去るシーンでは沢田研二に女装させるなどといった、かなりアナーキーな演出の場面も見どころの1つになっています。

基本情報

公開・製作国:1979年、日本

監督:長谷川和彦

配給:東宝

キャスト:沢田研二、菅原文太、池上季実子

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©1979 東宝/フィルムリンク・インターナショナル

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【セーラー服と機関銃】

作品解説

「セーラー服と機関銃」出典:Amazon

【セーラー服と機関銃】(1981) は、監督が相米慎二、ヤクザの組長を演じる女子高生を薬師丸ひろ子が演じました。

当時まだ無名だった赤川次郎の同名作品が原作です。

渡瀬恒彦演じる佐久間真の要請で目高組の組長になった星泉ですが、麻薬を隠し持っているのではないかという疑いを別の組からかけられたことから抗争に巻き込まれていきます。

そうした中、4人いた目高組の組員も抗争に巻き込まれるうちに殺されていき、憤った星泉が残りの組員を引き連れて浜口物産に殴りこみをかけて機関銃をぶっぱなすというのが大まかなストーリーです。

女子高生の組長というありえないような設定をしているのですが、耐えに耐えた主人公が最後に敵に殴り込みをかけるというのは、高倉健などが主演のヤクザ映画の定番ともいえますので、この【セーラー服と機関銃】 もヤクザ映画の王道路線のストーリーを踏襲しているともいえます。

また、セーラー服姿でヤクザ相手に機関銃をぶっぱなした後、放心状態でかいかんと呟く薬師丸ひろ子演じる星泉のシーンが話題になった映画ですが、映画が上映されて40年以上経って改めて見直てみると、当時どちらかといえばアイドルとして見られた薬師丸ひろ子が、アイドルとは思えない体当たりな演技をしていることに驚かされます。

相米慎二監督というのは、映画に出演するアイドルになかなか過酷な演技をさせることで有名なのですが、ここでも薬師丸ひろ子はクレーンで体を吊るされセメントの中に沈められるわ、組員の1人に抱きつかれるわ、きわどいセリフを言わされるわ、佐久間真と風祭ゆき演じる三大寺マユミとの濡れ場に遭遇するわと、アイドルらしからぬ場面が映画で見られますが、そうした場面でも違和感なく演じている姿は、相米慎二監督に負けるものかという薬師丸ひろ子の役者根性の萌芽のようなものが見られます。

ぱっと見ると青春映画ですが、薬師丸ひろ子以外の目高組の組員をはじめ、多くの人間が映画の中で死んでいることや、麻薬や悪徳刑事にホモといった際どい内容をさりげなく扱っているところを見ると、単なるアイドル映画では終わらせたくない相米慎二の意気込みと、演技としてはまだ未熟さは隠せないものの、単なるアイドルとしては見られたくない薬師丸ひろ子の役者としての火花がぱちぱちと弾けたような映画です。

基本情報

公開・製作国:1981年、日本

監督:相米慎二

配給:東映

キャスト:薬師丸ひろ子、渡瀬恒彦、風祭ゆき

配信[U-NEXT](PR) [Prime Video] (PR) [dTV ]

©KADOKAWA 1981

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【逆噴射家族】

作品解説

「逆噴射家族」出典:Amazon

【逆噴射家族】(1984) は、監督が【狂い咲きサンダーロード】(1980) の石井聰互、原作・脚本が漫画家の小林よしのりによる、マイホームを得た家族が次第に崩壊していく姿をブラックに描いた作品です。

タイトルにある「逆噴射」とは、映画公開の2年前に起こった日本航空羽田沖墜落事故に由来しています。

念願のマイホームを手に入れた小林克也演じる小林勝国と家族でしたが、祖父である植木等演じる小林寿国がやってきてから家族間のバランスが崩れだし、家族全員が次第におかしくなっていきます。

マイホームを手に入れたことで自分以外の3人の家族の現代病も治ると期待した勝国でしたが、リビングに穴を掘ったりと次第に自分もおかしくなっていき、家族の病気も治る見込みがないことに絶望したことから一家心中を図ろうとします。

しかし、他の家族から病気は勝国の方だと言われたことが発端になって、真夜中に一家全員によるサバイバルバトルが繰り広げられるというのが主なストーリーです。

【逆噴射家族】がユニークなのは、本職が役者ではないDJの小林克也を起用したことでしょう。

テレビ等で見る、流暢に英語を語る小林克也のイメージからは想像もできない父親のキャラクターですが、普段は小心者で真面目なのだけど、いったんキレてしまえば何をするか分からないという、逆噴射のキャラクターが見事にはまっています。

しかし、小林克也といえばスネークマンショーとして桑原茂一や伊武雅刀とコントをやっていたことがあるだけに、【逆噴射家族】では真面目さの中に潜む狂気や危うさといったものをブラックかつシュールに見せてくれます。

植木等や他の家族の狂気ぶりもなかなかのものですが、小林克也の逆噴射ともいえる狂気ぶりが際立っているからこそ、他の人物の狂気も生きてくるといえます。

【逆噴射家族】は、家族の関係をグロテスクにカリカチュアしたものですが、ブラックなユーモアに笑いつつも、笑えないところがあるのは、30年以上たった今も家族の間で悲惨な事件が起きているからでしょうか。

家族というのはお互いの微妙なバランスの上に成り立っているのですが、その微妙なバランスが少しでも崩れてしまうと、いつ逆噴射してもおかしくないような危うさがあるということを、【逆噴射家族】は描いています。

基本情報

公開・製作国:1984年、日本

監督:石井聰互

配給:ATG

キャスト:小林克也、倍賞美津子、工藤夕貴

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©1984 ディレクターズカンパニー/国際放映/ATG

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【麻雀放浪記】

作品解説

「麻雀放浪記」出典:Amazon

【麻雀放浪記】(1984) は、イラストレーターの和田誠が初めて監督として撮影した作品で、阿佐田哲也の同名小説が原作です。

【麻雀放浪記】の面白さは、敗戦間もない復興期の風景がよく描かれていることに加えて、必ずしも品行方正とはいえない悪漢たちが、ギャンブルで相手を出し抜いて生きていこうとする姿がとても生き生きと描かれていることです。

阿佐田哲也の小説に登場する人物に負けずとも劣らない個性ある役者が、そうした悪漢たちを演じています。

阿佐田哲也の分身ともいえる、真田広之演じる坊や哲と鹿賀丈史演じるドサ健をメインに、そこから様々な個性ある人物が火に群がる蛾のように現れてくるのですが、【麻雀放浪記】で強烈な個性を発揮しているのはメインの2人ではなく高品格演じる出目徳です。

この映画では坊や哲とドサ健の影が小説ほど強く感じられないのに対して、出目徳の存在感はメインの2人を完全に喰っているともいえます。

坊や哲がふらりと訪れた雀荘で出目徳と出合うのですが、それが縁となりコンビを組むことになります。

坊や哲にサイコロの目と積み込みの特訓をさせた後、ドサ健が経営する雀荘に乗り込み、2度同じような積み込みであがったことで、イカサマだと怒りドスを向けるドサ健に対してのとぼけぶりはなかなかの食わせ物です。

ラストの、坊や哲と加藤健一演じる女衒ぜげんの達を交えたドサ健と出目徳とのリベンジともいえる麻雀では、いつ終わるともなく続けられていく中で、最後に出目徳が牌を握ったまま息絶えることで終わります。

この時の出目徳の役は九蓮宝燈ちゅうれんぽうとう

その役に敬意を払いつつも、死人にもう用はないとばかりに身ぐるみを剝がされた後、残った3人が見守る中、自宅近くのどぶに放り込まれます。

映画の中でもちらりとセリフが出てきましたが、阿佐田哲也の小説の中でギャンブルに勝ち続ける人間はいない。もしそんな人間がいたとしたら健康を壊している。健康を壊しているのでなければ人間が壊れている、という意味の言葉があります。

【麻雀放浪記】(1984) に登場する人物を見ていると、相手を出し抜いてまでギャンブルに勝とうとした男たちの悲哀というものが感じられ、その最たるものがラストの出目徳の壮絶な最後だったのではないでしょうか。

基本情報

公開・製作国:1984年、日本

監督:和田誠

配給:東映

キャスト:真田広之、鹿賀丈史、高品格

配信[U-NEXT](PR) [Prime Video] (PR) [dTV ]

©1984KADOKAWA