映画【ビューティフル・ボーイ】ネタバレと感想。
成績優秀だった息子が気づけば薬物依存に陥っていた……。
自分の知っている息子はどこへ行ってしまったのか。
最愛の息子を父親は救い出すことができるのか!?
薬物依存症の息子と、家族の愛と苦しみの実話を描いた【ビューティフル・ボーイ】のネタバレと感想をお伝えします。
【ビューティフル・ボーイ】作品情報
【製作】
2018年 アメリカ
【監督】
フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン
【原題】
Beautiful Boy
【キャスト】
スティーヴ・カレル、ティモシー・シャラメ、モーラ・ティアニー、ケイトリン・デヴァー、エイミー・ライアン、ジャック・ディラン・グレイザー、ザカリー・リフキン、アンドレ・ロヨ、ティモシー・ハットン、リサゲイ・ハミルトン、エイミー・フォーサイス、ステファニー・スコット、他
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【ビューティフル・ボーイ】あらすじ
フリーライターのデヴィッド(スティーヴ・カレル)は、カウンセラーに息子の悩みを打ち明けました。
「時々息子を見つめて思うんです。知り尽くしていると思っていた…私がこの手で育てたはずの、この子は誰だろうと…」
息子ニック(ティモシー・シャラメ)は、ありとあらゆるドラッグに手を出し、最近は薬物の中で最悪と言われているクリスタル・メスまで使うほどの薬物依存症に陥っていたのです。
才能に満ち溢れ、母親の違う弟、妹の良き兄であったニックに一体何が起きたのか?
遡ること1年前。
家に帰らないことが多くなったニックを心配したデヴィッドは、もうドラッグを2度とやらないというニックを説き伏せて専門家の診察を受けさせました。
すると、体内に大量のドラッグが残っているため至急治療を要すると診断され、ニックを更生施設に入所させることにします。
しかし、ニックはすぐに施設を脱走し行方不明となってしまったのです。
回復へのプロセスの一環だという施設職員でしたが、施設に頼っていられないと感じたデヴィッドは、自分で更生させるべく様々な方法を試します。
それは、ニックにとってもデヴィッドにとっても、そして家族にとっても辛く厳しい苦難の始まりだったのです。
【ビューティフル・ボーイ】見どころ
もがく父親
愛する息子がボロボロになっていく姿を目の前にして、何もできない無力さを感じるデヴィッド。
「もうドラッグはやらない。」
「ごめんなさい。僕を信じて。」
涙ながらに訴えるニックに対し、「本当にそうかもしれない……そうであってほしい……」という希望を持っては裏切られ、持っては裏切られの連続で心が苦しくなるほどでした。
外部の人に助けを求めたり、自力で再生させようとしたりと、ありとあらゆるアプローチを試しまくるデヴィッド。
最後には、デヴィッド自身も絶対に手を出してはいけないと言われている”クリスタルメス”を使い、ニックの気持ちを理解しようとまでしていました。
1度手を出したら止められない。
しかし、デヴィッドは息子を更生させることにベクトルを置いていたため、依存症にならずに済みました。
どの依存症でも共通することかも知れませんが、周りがいくら協力しても最終的には本人の気持ち次第です。
分かってはいながらも、動かずにはいられないデヴィッドの葛藤がとても上手く表現されています。
徐々に見えてくる光
薬物に溺れるニックの姿はとにかくリアルで、考えさせられる作品となっています。
才能に満ち溢れていたニックが、薬物に溺れていくきっかけになった理由はハッキリとは描かれていませんが、ひとつは両親の離婚にあったようにも見えます。
ニックは両親の離婚後、父親と母親の家を行き来していましたが、2人とも大好きなのに一緒に暮らせないというストレスが無意識のうちにニックの心をむしばんでいたのかもしれません。
まだ少年であるニックが薬物依存から、ひとりで抜け出すことはとても難しいことでした。
更生したいという気持ちはありながらも、家族に背を向けられ孤独を感じてまたドラッグに手を出してしまう……。
更生しかけては堕ち、という負のスパイラルから抜け出せない地獄のような日々。
それでも、弟や妹を可愛がり一緒に遊んであげるシーンでは普通の少年の姿を見せ、そのギャップがなおさら切なさ感じさせてしまいます。
この依存症に、完治という言葉はないのかも知れません。
この先、順調に回復へ向かっていく保証がないという危うさを残しつつの終わり方でしたが、愛に囲まれているニックはきっと大丈夫と感じることができるでしょう。
ミニ情報
米国の薬物事情
世界で薬物の直接的な影響による死者は、年間約17万人。
そのうち最多の死者を出しているのが米国で、2017年には史上最多の7万人以上が過剰摂取で亡くなっています。
薬物依存に陥るきっかけは実は身近なところにあったりするようです。
ある少年は、背中の痛みで町医者にかかり始めました。
その病院では毎月1回の診療で500ドルほどを払えば好きな処方薬を何でも手に入れられるシステムでした。
少年はこの制度を悪用し、オキシコンティンという鎮痛剤を乱用するようになったのです。
ニックの薬物依存症も、始まりはただの鎮痛剤だったと描かれていました。
「たいしたことない」と安心して使う低い警戒心が、その後の人生を大きく変えてしまうきっかけとなってしまうのですね。
この作品では、たかが鎮痛剤と軽く見てはいけないという警告も伝えたかったのでしょう。
そして、違法薬物には決して手を出さないという事は言うまでもありません。
ジョン・レノンの名曲
この映画のBGMで使われているのが、ジョン・レノンの楽曲”ビューティフル・ボーイ”です。
1980年に発表されたこの歌は、数々のアーティストによってカバーされ、今もなお色褪せることのない名曲として世界中の人々に愛され続けています。
この歌は、当時5歳だった息子ショーン・レノンに向けて作られた楽曲です。
ジョンが息子に向けて歌ったように、この作品で父親デヴィッドが息子ニックに歌っているシーンでは、同じ父親としての2人が思わずシンクロしてしまいます。
どの父親にとっても息子という存在は”ビューティフル・ボーイ”であってほしいですね。
【ビューティフル・ボーイ】の感想
とにかく終始重いテーマでした。
冒頭の、この子は誰だろうと思ってしまうというデヴィッドの言葉に、息子に何があったのか?と、グッと引き寄せられていきました。
依存症克服のためにはこれ!というものはありません。
その人の状態、環境などによって回復方法を見つけていかなければなりませんが、この映画が実際に苦しむ家族にとってひとつのヒントになるのかもしれないと思いました。
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