映画【アントラーズ】は、2021年に公開されたアメリカのホラー映画で、ホラー作家ニック・アントスカの短編小説”The Quiet Boy”を基に、ギレルモ・デル・トロが製作総指揮を務めています。
また、脚本はC.ヘンリー・チャイソンとニック・アントスカとスコット・クーパー監督による共同制作。
アメリカのオリゴン州にある炭鉱の町で、過去のトラウマがある2人の姉弟のうち、教師をしている姉が家庭虐待を疑われる少年と出会います。
この出会いにより、姉は村で起きたおぞましい事件を調査中の保安官である弟と共に、原住民の伝説となっている怪物と向き合っていくことに……。
2021年/アメリカ
原題:Antlers
配給:Disney+
原作:The Quiet Boy
配信:[Disney+]月額プラン(PR)
監督:スコット・クーパー
あらすじ
アメリカのオレゴン州中部の小さな村で、フランク・ウィーヴァー(スコット・ヘイズ)は捨てられた鉱山で麻薬を製造していました。
彼の息子のエイデン(ソーヤー・ジョーンズ)がトラックの中で待っている間、フランクとその仲間ケニー(マイケル・エクランド)は見えない怪物に攻撃されてしまいます。
変な音を聞いて、父親を捜しに出たエイデンも怪物から襲われてしまいました。
身体中に激しい痛みと共に異変を感じたフランクは、鍵のかかった部屋を作り、エイデンの兄ルーカス(ジェレミー・T. トーマス)に、何があっても部屋を開けないよう忠告します。
しかし、エイデンの身体にも異変が起き、ルーカスはフランクに助けを求めましたが、フランクはエイデンを部屋へ連れて引きこもってしまいました。
その後、ルーカスの小学校の先生をしているジュリア(ケリー・ラッセル)が、ルーカスの怪しい行動に気付き….。
登場人物 / キャスト
ジュリア・メドウズ役 / ケリー・ラッセル
登場人物
ルーカスの小学校の担任の先生で、ポールの姉。
ルーカスの異変に気付き、弟ポールと共に探っていく。
キャスト情報
●ケリー・ラッセル(Keri Russell)
●アメリカ合衆国カリフォルニア州ファウンテンバレー出身
●1976年3月23日生
●代表作
- 【ウェイトレス ~おいしい人生のつくりかた】(2007)
- 【猿の惑星:新世紀】(2014)
- 【M:i:III】(2006)
- 【ダークスカイズ】(2013)
●受賞歴
【フェリシティの青春】
- ゴールデングローブ賞主演女優賞
- ティーン・チョイス・アワード
ポール・メドウズ役 / ジェシー・プレモンズ
登場人物
ジュリアの弟で、町の保安官。
姉ジュリアと共に、怪物について調査する。
キャスト情報
●ジェシー・プレモンズ(Jesse Plemons)
●アメリカ合衆国テキサス州ダラス出身
●1988年4月2日生
●代表作
- 【アイリッシュマン】(2019)
- 【ゲーム・ナイト】(2018)
- 【バトルシップ】(2012)
- 【パワー・オブ・ザ・ドッグ】(2021)
●受賞歴
【Friday Night Lights】
- ゴールドダービー賞
【ブレイキング・バッド】
- 映画俳優組合賞
ルーカス・ウィーバー役 / ジェレミー・T. トーマス
登場人物
小学生で、父フランクと弟エイダンの世話をしている。
キャスト情報
●ジェレミー・T. トーマス(Jeremy T. Thomas)
●代表作
【Dolly Parton’s Coat of Many Colors】(2015)、【Lore】(2017)、【The Righteous Gemstones】(2019-2022)、【Paradise Lost】(2020)
ウォーレン・ストークス役 / グレアム・グリーン
登場人物
ウェンディゴについて、良く知っている学者。
キャスト情報
●グレアム・グリーン(Graham Greene)
●カナダ・オンタリオ州シックスネイションズ・リザーブ出身
●1952年6月22日生
●代表作
- 【ダンス・ウィズ・ウルブズ】(1990)
- 【マーヴェリック】(1994)
- 【グリーンマイル】(1999)
- 【ウインド・リバー】(2017)
●受賞歴
【ウインド・リバー】
- BAMアワード
【A Dark Foe】
- ダイヤモンド賞主演男優賞
フランク・ウィーバー役 / スコット・ヘイズ
登場人物
ルーカスとエイダンの父親。
怪物に襲われ、ウェンディゴになってしまう。
キャスト情報
●スコット・ヘイズ(Scott Haze)
●アメリカ合衆国テキサス州ダラス出身出身
●1993年6月28日生
●代表作
- 【チャイルド・オブ・ゴッド】(2013)
- 【ヴェノム】(2018)
- 【Old Henry】(2021)
- 【ジュラシック・ワールド/ドミニオン】(2022)
●受賞歴
【The Taste of Copper】
- バーバンク国際映画祭主演男優賞
【Mully】
- プレイハウス西部映画祭最優秀ディレクター賞
その他の登場人物(A)
ダニエル・ルクロイ役 / ローリー・コクラン
登場人物
保安官で、ポールの相棒。
一人でルーカスの家に行った際に、フランクに襲われる。
キャスト情報
●ローリー・コクラン(Rory Cochrane)
●アメリカ合衆国ニューヨーク州シラキュース出身
●1972年2月28日生
●代表作
- 【ブラック・スキャンダル】(2015)
- 【荒野の誓い】(2017)
- 【ホワイト・ボーイ・リック】(2018)
- 【静かなる侵蝕】(2021)
●受賞歴
【アルゴ】
- ハリウッド映画賞
- 映画俳優組合賞
エレン・ブース役 / エイミー・マディガン
登場人物
ルーカスの小学校の校長。
ジュリアと共にルーカスの家庭虐待を心配し、ルーカスの家まで様子を見に行った時に、フランクに襲われる。
キャスト情報
●エイミー・マディガン(Amy Madigan)
●アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ出身
●1950年9月11日生
●代表作
- 【ストリート・オブ・ファイヤー】(1984)
- 【フィールド・オブ・ドリームス】(1989)
- 【おじさんに気をつけろ!】(1989)
- 【ゴーン・ベイビー・ゴーン】(2007)
●受賞歴
【ストリート・オブ・ファイヤー】
- シッチェスカタルーニャ国際映画祭主演女優賞
【Roe vs. Wade】
- ゴールデングローブ賞(助演女優による最優秀演技)
エイデン・ウィーバー役 / ソーヤー・ジョーンズ
登場人物
フランクの息子で、ルーカスの弟。
フランクと同行していた時に、ウェンディゴに襲われてしまう。
キャスト情報
●ソーヤー・ジョーンズ(Sawyer Jones)
●アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス出身
●代表作
- 【Modern Family】(2018)
- 【Chicago Med】(2020)
- 【パンダのシズカ】(2021)
- 【Madagascar: A Little Wild】(2021)
ケニー・グラス役 / マイケル・エクランド
登場人物
フランクの仲間。
フランクと共に、作業をしていた時にウェンディゴに襲われてしまう。
キャスト情報
●マイケル・エクランド(Michael Eklund)
●カナダ・サスカチュワン州サスカトゥーン出身
●1962年7月31日生
●代表作
- 【ディヴァイド】(2011)
- 【Errors of the Human Body】(2012)
- 【ザ・コール 緊急通報指令室】(2013)
- 【Eadweard】(2015)
●受賞歴
【Eadweard】
- UBCP/ACTRAアワード
【ザ・コール 緊急通報指令室】
- Leo Awards
クリント・オーウェンズ役 / コーディ・デイヴィス
登場人物
ルーカスのクラスメイトで、ルーカスをからかっている。
ルーカスを追った時に、森の中でフランクに喰われる。
キャスト情報
●コーディ・デイヴィス(Cody Davis)
●アメリカ合衆国テキサス州出身
●2006年7月10日生
●代表作
- 【THE FLASH/フラッシュ】(2015)
- 【Kindergarten Da Bin Ich Wieder】(2015)
- 【Scout & the Gumboot Kids】(2015-2017)
- 【Good Boys】(2019)
ハリソン・クロフォード役 / ジェシー・ダウンズ
登場人物
ルーカスのクラスメイトで、クリント共にルーカスをからかっている。
キャスト情報
●ジェシー・ダウンズ(Jesse Downs)
●アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス出身
●代表作
- 【Zoo】(2017)
- 【オルタード・カーボン】(2018)
- 【グッド・ドクター 名医の条件】(2018)
- 【デュードが僕を強くした】(2020)
その他の登場人物(B)
アルロ・ケビンズ役 / アルロ・ハジュドゥ
登場人物
ルーカスのクラスメイトで、クリントとハリソンとルーカスをからかっている。
キャスト情報
●アルロ・ハジュドゥ(Arlo Hajdu)
●カナダ・オタワ出身
●代表作
- 【THE FLASH/フラッシュ】(2015)
- 【Infidelity in Suburbia】(2017)
- 【ザ・ホーンティング・オブ・ブライマナー】(2020)
- 【Santa’s Little HELLpers】(2020)
ウェンディゴ役 / ドリアン・キンギ
登場人物
キャスト情報
●ドリアン・キンギ(Dorian Kingi)
●アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス出身
●1982年9月25日生
●代表作
- 【ロボコップ】(2014)
- 【レディ・プレイヤー1】(2018)
- 【A-X-L/アクセル】(2018)
- 【ヴェノム】(2018)
ジェラルド・ファーガソン役 / ケン・クレイマー
登場人物
死体の検死医で、ケニーの遺体を解剖する。
キャスト情報
●ケン・クレイマー(Ken Kramer)
●カナダ出身
●1940年生
●代表作
- 【アメージング・ハイウェイ60】(2002)
- 【最凶赤ちゃん計画】(2006)
- 【ライトアップ!イルミネーション大戦争】(2006)
- 【グッバイ、リチャード!】(2018)
フランシス医師役 / ジェイ・ブラゼウ
登場人物
病院の医師で、ルーカスを診察する。
キャスト情報
●ジェイ・ブラゼウ(Jay Brazeau)
●カナダ・マニトバ州ウィニペグ出身
●1953年12月22日生
●代表作
- 【インソムニア】(2002)
- 【ハウス・オブ・ザ・デッド】(2003)
- 【ウォッチメン】(2009)
- 【ホーンズ 容疑者と告白の角】(2013)
●受賞歴
【Fathers & Sons】
- Leo Awards
- バンクーバー映画批評家協会賞
キャロル・レイノルズ役 / デンドリー・テイラー
登場人物
クリントの母親。
キャスト情報
●デンドリー・テイラー(Dendrie Taylor)
●アメリカ合衆国出身
●1960年11月23日生
●代表作
- 【ジャーヘッド】(2005)
- 【ザ・ファイター】(2010)
- 【A Haunting at Silver Falls 】(2019)
- 【Capsized: Blood in the Water】(2019)
ジュリアの父親役 / アンディ・トンプソン
登場人物
過去、ジュリアに虐待していた。
キャスト情報
●アンディ・トンプソン(Andy Thompson)
●カナダ・ブリティッシュコロンビア州チリワック出身
●1970年1月1日生
●代表作
- 【BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント】(2016)
- 【Trial & Error】(2018)
- 【A Million Little Things】(2018-2020)
- 【Upload】(2020-2022)
幼少時代のジュリア役 / ケイトリン・ピーターソン
キャスト情報
●ケイトリン・ピーターソン(Katelyn Peterson)
●アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス出身
●代表作
- 【Once Upon a Time】(2017)
- 【Take Two】(2018)
- 【Unspeakable】(2019)
- 【アントラーズ】(2021)
映画の解説
“鹿の角”を意味する【アントラーズ】は、クリーチャー怪物をテーマにしたホラー映画です。
ジュリアがルーカスを気にする理由
ルーカスが栄養失調でいつも暗く、変な角絵を描いていたのは、やはり家庭虐待という暗い過去を持つジュリアの憂鬱だった時代の内面を投影したもの。
ジュリアがルーカスに関心を持ったのも、ルーカスと自分の内面を同一視したためです。
フランクの目的
鉱山で得体の知れない怪物に襲われた後、息子のルーカスに部屋に閉じ込めて欲しいと頼んだフランクが、ルーカスの弟エイデンと監禁生活をしながら死体を食いちぎってきたこと、そして映画の舞台となったオレゴン州の鉱山が薄暗い景色になっていた事から、これらは人々の絶望を意味しており、フランクは人々の安全を守る為に自ら孤立を選んだのです。
悲しい結末
映画の結末で、鹿の角を持った怪物に変わっていったフランクと対決したジュリアが、ルーカスの前でフランクだけでなくエイデンまで殺したのは、村の平和の為でした。
しかし、彼女の弟ポールが死ぬ前のフランクに噛まれて怪我していた為、口から黒い血を吐いた時点で、既にポールは伝染しており怪物になっていくという伏線でバッドエンディングになりました。
“ウェンディゴ”という北米の怪物伝説
ウェンディゴ(Wendigo)は、アメリカとカナダの西海岸及び五大湖地域のアルゴンキン族原住民の伝説に登場する悪魔的な怪物です。
この怪物は、人間のようでもあり獣のようでもあり、人の姿に変えることが出来ます。
カナダのオンタリオ出身であるオジブワ族の学者バジルH・ジョンストンの証言によると、ウェンディゴは骨が見える程やせ細っており、乾燥した皮膚は骨に張りをもたせています。
骨が突き出るような肌の顔色は死体のような灰色で、両眼は眼窩の中に深く埋まっているため、まるで墓から掘り出したばかりの骨のようです。
更に、唇のある部位はボロボロの血だらけで、肌から出る悪臭を放つ膿は腐敗した死体のようなのです。
またウェンディゴは食欲の権化でもあり、1人を殺して食べるだけでは満足できず、いつも新しい犠牲者を捜し求めます。
ウェンディゴになった人間は暴力的かつ人肉に執着するようになります。
人間がウェンディゴに変わる理由は食人。
特に、厳冬や飢饉の時のような苦難の時期に飢え死にしないよう人肉を食べた為、ウェンディゴが誕生したのです。
映画でも同様に、フランクやエイデンを襲ったのは、森の中で人肉を食べていたウェンディゴであり、彼の消息や詳しい正体はまだ明らかになっていません。
映画が伝えるテーマ
本作はぞっとするような奇怪な作品で、フランクがウェンディゴになっていく設定はアメリカ先住民の都市伝説に根ざしています。
また、女性教師と男の子の関係からも見えるように”虐待”もテーマのひとつになっており、ウェンディゴは世の中の問題に対する隠喩として描かれているのです。
大人の童話のようなホラー
短編小説を原作とした映画なので脚本も上手く構成されたホラー映画です。
自然が絶妙に表現された映画の静かな雰囲気と、不気味に調和された音楽と視覚的演出が逸品で、CG効果や奇怪な怪物の描写もとても印象的でした。
アメリカの田舎村の文化と閑散とした雰囲気を作り出す感覚が良く、クリーチャーも興味深く描かれています。
スコット・クーパー監督の感性が見応えのある映画を作り出しており、ギレルモ・デル・トロ監督の独特で暗黒な背景がこの映画でもよく表れている、いわゆる大人の童話のような物語でした。
「アントラーズ」オフィシャルサイト
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