【シャークウォーター 滅びゆく捕食者たち】は、Amazon original作品です。
製作者のロブ・スチュワート氏が、10億ドルの巨大サメ市場とその密漁・密輸の闇に命がけで迫る、パワフルで美しいドキュメンタリーとなっています。
【シャークウォーター 滅びゆく捕食者たち】あらすじ
ロブ・スチュワート氏はコスタリカ政府に取材し、2006年に【シャークウォーター 神秘なる海の世界】でサメの密漁実情を公開しました。
そして、2016年。
スチュワート氏は、続編のために極秘でコスタリカを来訪しました。
フカヒレのために多くのサメが捕獲され、ヒレだけを切り落とされ、また海に捨てられているという現実があります。
彼は、そんなサメの保護のために活動していたのです。
コスタリカは政権の交代と共に、密輸が見逃されるようになっていました。
プンタレナスの港では、台湾人マフィアがフカヒレビジネスを行って膨大な利益を得ています。
コスタリカ当局は、その利益で買収されているため黙認していたのです。
【シャークウォーター 滅びゆく捕食者たち】ネタバレ
まさに命がけの撮影
彼はこの5〜6年の撮影で、6度も殺されかけていました。
サメ市場はそれだけ巨額の富をもたらすため、それを妨害しようとするロブ氏は漁業者にとって邪魔でしかないのでしょう。
そして、ここコスタリカでもマフィア達から厳しい警告を受け、仕方なくコスタリカを離れることになります。
それでも、彼は撮影を続けました。
各地での密漁・密輸の現状を追う
ここからは、彼が世界各地でのサメの密漁・密輸の実態をあらゆる角度で撮影していきます。
◎バハマ
美しい海や島が綺麗なことで有名な島です。
ここにはヨゴレという大型のサメが5月にだけやってきます。
密猟者は、ヨゴレの大きいヒレを狙って乱獲するという、美しい海や綺麗な島にそぐわない残酷な事実が映されました。
◎マイアミ
ここではアメリカ人のサメ漁に同行しました。
漁師は他の魚と同じだ、絶滅の危機も嘘だ、と言います。
需要があるから、値段も高い。だからビジネスになる、それが問題だというのでしょうか。
サメは人を殺す怖い魚だと教わりますが、事実は違うのです。
こうして、人間に容易く捕獲されて続けた結果、サメはこの30年で90%も減少してしまったと言います。
絶滅の危機を何度も乗り越えたはずの種が追い込まれいるのです。
漁船の下で、潜って撮影をしていたスタッフはショックを受けていました。
針にかかったサメがもがき続け、そして最後は諦める。
そのリアルな姿も映し出されます。
◎パナマ
ここでは、サメがフカヒレ以外にも食用となっていることがわかります。
そもそもサメは上位の捕食者で、水銀などの有害物質も蓄積されているため、本来なら食用にすべきではないのです。
特に子どもや女性が食べるべき物ではないのですが、サメはあらゆる食品に巧妙に混ぜられているのが実情だと言います。
ヒレは、中国では200ドルほどで販売されている高価なものですが、パナマではたったの5ドルで雑に売りさばかれていました。
その、5ドルのために子供のサメまで大量に捕獲されているのです。
◎アフリカ、カーボベルデ共和国
ここでは取引禁止の抜け穴として、港付近でサメ取引が盛んに行われています。
そしてなんと、そこには日本の漁船もありました。
荷の積み替えという、取引の抜け穴を利用していたのです。
スチュワート氏は大胆にも潜入撮影を実行。
そこには冷凍された大量のサメがいました。
◎ロサンゼルス
ここで行われていたのは流し網漁です。
この漁法は残酷だとスチュワート氏は言います。
年間2500万もの魚が、訳もなく網にかかって死んでいるのです。
目的でない魚は網にかかって死んでも捨てられるだけ。
そこにはサメもかかっていました。
しかし、撮影をする彼らのところに突然、別の漁船がやって来て発泡し始めたのです。
まるで、追い払うかのように……。
◎マイアミ
サメがスーパーに売っている、という情報を聞いて撮影に向かいます。
売られている多くの食品や化粧品、ドックフードにまでサメの成分が入っていました。
購入する人が意識を変えて欲しい、と彼は訴えます。
そうでなければ現実は変わらないのだと。
最後の潜水
◎フロリダ
ロブ・スチュワート氏最後の潜水ー。
今回は最新技術の潜水服で、深く潜ることが出来ます。
チェックもOKで、彼は深く、深く潜っていきました。
ところが、夜になると彼の船から救難信号が出されます。
彼のチームは、潜水後1度浮上して来ますが、仲間の1人が浮上後に突然倒れそのまま海中に沈んだというのです。
必死の捜索が行われた3日後、ロブ・スチュワート氏は遺体で発見されました。
見どころと個人的な感想
美しい映像と引き込まれるカメラワーク
ドキュメンタリーでありながら、フィクションだと思いたくなるような残酷な事実が続きます。
しかし、海の映像は雄大で美しく、それだけでも楽しむことができました。
ロブ・スチュワート氏のサメに対する愛情も、随所で垣間見ることができます。
サメはパニック映画などの題材になったりもしますが、これは全く違う視点で製作された映画で、サメの見方が変わる作品になっています。
正直、サメに愛情なんて湧くのか?と思いましたが、マイアミで捕獲されるサメを海中からとった映像では、サメが苦しむ姿がリアルで心に迫るものがありました。
ドキュメンタリーとしては……
とはいえ、あまりにも作られた感じがするのも事実。
映画の途中で、日本船がサメの乱獲に関与しているかのような描写がありますが、サメではなくただのマグロ漁船だと思われます。
一部の批評家からは、彼の手法を批判するものもあるので全面的に意見を支持することは難しいかもしれません。
ドキュメンタリーとしてみる、というよりは、美しいドラマとして見るのがちょうどいい、確かに美しい仕上がりの作品でした。
最期までサメを愛し続けた男
まさか、最後にロブ・スチュワート氏が亡くなる展開があるとは思いませんでした。
急死が悼まれましたが、最期までサメに向き合い、その美しい海で生涯を終えた彼の姿は、強いメッセージを発信し続けるでしょう。
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