終戦において天皇陛下の玉音放送は誰もが知るところですが、玉音放送にいたるまでの経緯や、ポツダム宣言の受諾を阻止しようと陸軍将校がクーデターを起こそうとしたこと(宮城事件)を、知らない人も多いのではないでしょうか。
そんな8月15日の正午に天皇陛下の玉音放送が放送されるまでの出来事を描いたのが映画「日本のいちばん長い日」です。この映画は時代を経てオリジナル版とリメイク版がありますが、全く同じ内容というわけではなく、描かれる視点が異なっています。そこで今回は、オリジナル版とリメイク版の違いを考えてみながら、この映画を紹介することにします。
あらすじ
戦局が不利になった日本に無条件降伏を求めるポツダム宣言を受けて、鈴木総理大臣官邸で緊急会議が開かれたものの、その後広島と長崎に原爆が投下され、8月8日にはソ連が参戦したことから、日本の敗戦は避けられないものとなっていきます。
第1回御前会議において天皇陛下が戦争終結を望まれたことから、8月10日に政府は天皇の主権に変更がないことを条件にポツダム宣言を受諾する旨を、中立国のスウェーデン、スイスの日本公使に通知しました。
8月12日に連合国から回答がありましたが、天皇の地位に関する条項で “Subject to”と記載されているのが従属か制限のどちらの意味かということで大論争が起こり、阿南陸相はこの内容ではポツダム宣言を受け入れることはできないと反対します。
ですが、8月14日の御前会議で天皇陛下が終戦を決意されたことからポツダム宣言の受諾が正式に決まり、14日午後1時の閣議では、宮内省で録音された陛下の終戦詔書を8月15日正午に全国でラジオ放送することが決定したのです。
一方で戦争反対派の青年将校はクーデターをくわだてようとしていましたが、阿南陸相から御聖断が下った上はそれに従うべきで、どうしてもクーデターを起こすのなら阿南を斬れと述べて彼らを抑えようとしました。
8月14日の午後11時50分に天皇陛下の録音は宮内省二階の御政務室で行われているのと同じ頃、畑中少佐は近衛師団長森中将を説得してクーデター計画を進めようとしていたことから、日本のいちばん長い日がはじまろうとしていました・・・