『AMADEUS』天才音楽家モーツアルトの光と影。モーツアルトの音楽を誰よりも愛したサリエリは何故、彼を憎むようになったのか?

©2018 Orion Releasing LLC. All Rights Reserved.

映画『AMADEUS』ネタバレ。

神よ、どうしてモーツアルトを選んだのですか――。

12歳にして初めて、オペラを書き上げたともいわれる天才音楽家モーツアルト。

そんな彼の才能を誰よりも理解し、憎んだもう1人の音楽家がいた。

サリエリのモーツアルトに対する憧憬、敬愛、尊敬、そして落胆、嫉妬、苦悩……。

モーツアルトとサリエリ、同じ時代を生きた2人の音楽家。神は彼らに微笑んだのか?

PR

映画『AMADEUS』のあらすじ

サリエリが語るモーツアルトの真実とは?

「私を赦してくれモーツアルト……私は、君を殺した」

ある冬の夜、サリエリの部屋から「私を赦してくれ、モーツアルト」「私は、君を殺した」と泣き叫ぶ声が聞こえてきました。

使用人が、サリエリの好物であるドルチェを持ってきて、「ドアを開けないとドルチェは食べさせませんよ!こんな美味しいドルチェは無いのに!」と呼びかけます。

どうやら、このように泣き叫んでいるのは珍しいことではないようです。

しかし次の瞬間、ドアの向こうからはサリエリの苦しそうな叫び声が……。

これはただ事ではないと察した使用人たちがドアを破ると、そこにはカミソリで自ら首を掻き切り、血まみれになった老人、サリエリの姿が……。

サリエリは、病院に運ばれて一命をとりとめましたが、どうやら精神病院のようなところに入院することになったようです。

ある日、チェンバロが置かれた個室で過ごすサリエリの元に、1人の若い神父が訪れます。

その神父に対しサリエリは、構うなと冷たくあしらいましたが、神父の「神の前では人は皆同じです」と言葉に「そうかね?」と興味を見せ、さらに「神父に音楽の知識はあるか?」と尋ねます。

多少は……と神父が答えると、サリエリは自分が若かった頃、コンサートで演奏して拍手喝采を受けた曲を弾いて見せました。

当時を思い出したサリエリは、それまでの気難しそうな顔から一変して幸せそうな笑顔を見せましたが、神父からは”知らない”と言われてしまいます。

「ではこれは?」と、サリエリは別の曲を弾き始めました。

すると神父は「この曲は知っています!まさかあなたが作曲していたなんて!」と感激しますが、サリエリは違うと否定したのです。

実は、サリエリが弾いた曲は、誰もが知るモーツアルトの名曲でした。

神父は、あなたが彼を殺したのですか?と尋ねるとサリエリは「彼は私の憧れだった」と、モーツアルトと自分の人生について回想したのです。

サリエリの過去を通して語られる、天才と名高きモーツアルトの本当の姿とは?

サリエリは父親から音楽の道に進むことを反対されていました。

それでも音楽家になることを諦められず「神よ……生涯純潔を守り、勤勉に働き、徳を積みます。どうか、私を偉大な音楽家にしてください。あなたのために音楽を捧げます」と、熱心に祈りました。

すると願いが届いたのか、ある日父親は食事を喉に詰まらせて亡くなってしまったのです。

サリエリは奇跡が起こった、神が進むべき道を指し示してくださったのだと信じ、あっという間にオーストリア皇帝のヨーゼフ2世に仕える宮廷音楽家に成り上ります。

ある日、モーツアルトがウィーンで演奏会を開くということで、天才モーツアルトはどんな顔をしているのか見てやろうと、サリエリは演奏会を訪れました。

どうやら演奏会は遅れているようで、演奏が始まるまでの時間に別室に食事が運ばれるのをみたサリエリは、こっそりつまみ食いをしようと忍び込みます。

しかし、そこに1人の女性が笑いながら、誰かから逃げるように入ってきたのです。

サリエリは思わず身を隠し、こっそりと様子を窺います。

しばらくすると1人の男が部屋に入り、女性を見つけると、恋人のように2人はじゃれ合います。

大広間では演奏会が始められたようで、別室にも音楽が聞こえてきました。

独特な甲高い笑い声をしたその男は、それを聞いてハッと立ち上がり「僕の曲だ」と言って部屋を出ていきます。

それがサリエリとモーツアルトとの出会いでした。

あんな下品な男がモーツアルトだなんて……。

サリエリは最初、信じられませんでしたが、モーツアルトと接するうちに彼の才能が本物であることを認めます。

しかし、モーツアルトの破天荒な性格や女性関係にだらしない面、かなりの浪費家であることなどを知り、「どうして神はあんな奴に才能を与えたのか」と怒り狂ったのです。

いつしか神を、モーツアルトを憎むようになったサリエリは、ある計画を立てるのでした……。

PR

『AMADEUS』の見どころ

豪華絢爛なバロック様式の宮殿と華やかなドレス、ゴージャスな世界観をたっぷり楽しめる

16世紀ごろから始まった豪華絢爛な造りが特徴のバロック様式。

映画内では、まさにその時代の煌びやかな宮殿の様子が描かれています。

アントワネットは最近民衆におびえている

オーストリア皇帝ヨーゼフ2世の発言もあったように、税金を搾取していた民衆からは大批判され、その後フランス革命が起こる原因にもなりました。

壁に飾られた大きな絵画や、金で飾られた調度品など、ため息が出そうなほど美しい家具がたくさん出てくるのも、本作の見どころのひとつです。

作中に登場する印象的なお菓子の数々

冒頭でのサリエリと使用人とのやり取りでもわかるように、彼女はかなりの甘党だったようで、作中にはたくさんのお菓子やドルチェが登場しました。

その中でも印象的なのが「ヴィーナスの乳首」というお菓子です。

ヴィーナスの乳首…また作ろうかな♡ pic.twitter.com/jyXQGWOgSj

— 小津🐼 (@Ozz_Fantasy) August 30, 2019

生涯純潔を守ったというサリエリには、あまり似合わない名前のお菓子かもしれませんが……。

このお菓子はマロングラッセをホワイトチョコレートでコーティングし、美の女神ヴィーナスの乳房に見立てた美しいもの。

レシピ出典:グレーテルのかまど

モーツアルトの婚約者であるコンスタンツィエが、こっそり2個食べてしまうほど美味しいようでした。

そもそも砂糖が貴重だった時代で、甘いものを食べられるのは身分が高い人だけ。

宿場の娘だったコンスタンツィエは、物珍しさもあってついたくさん食べてしまったのかもしれません。

PR

『AMADEUS』を観た感想

可愛さ余って憎さ100倍。サリエリは誰よりもモーツアルトの音楽を愛していた。

サリエリはモーツアルトの音楽を誰よりも理解し、その才能を認めていました。

神から選ばれたともいえるその能力があるにも関わらず、本人は下品で浪費家、女性関係もだらしなく「作曲するために酒が必要なんだ!」と、アルコール依存症のような面も見られます。

真面目なサリエリはそれが許せなかったのでしょう。

神に絶望し、最後はモーツアルトを陥れるような計画まで立ててしまいます。

しかし、裏返せばそれはサリエリがそれほどモーツアルトの才能と音楽を愛していたということではないでしょうか。

音楽の授業では必ず名前が挙げられ、モーツアルトの作曲した音楽は現代でも様々な場面で使われています。

偉大な作曲家として名前を遺したモーツアルトですが、妻に逃げられアパートにあった豪華な家具も売り払い、完全に落ちぶれてしまいました。

それでも冒頭の神父とのやり取りのように、サリエリよりもモーツアルトの名が知られているのは、やはり神に愛されていたから、ということなのかもしれません。

オフィシャルサイト
©2018 Orion Releasing LLC. All Rights Reserved.