【博士の愛した数式】あらすじと解説。「数学」で伝える、数学者と家政婦の優しい物語。

博士の愛した数式
©「博士の愛した数式」製作委員会

映画【博士の愛した数式】は、2003年に発行された小川洋子の原作小説を、寺尾聰と深津絵里主演で映画化したヒューマン映画です。原作小説は、2004年に本屋大賞を受賞し、100万部を超えるヒット作となりました。映画【博士の愛した数式】のキャッチコピーは「博士と過ごしたひとときは私とルートにとって本当に大切な時間でした」を、ぜひ。

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【博士の愛した数式】あらすじ

家政婦の仕事をしている杏子(深津絵里)が新たに派遣された家は、交通事故の後遺症で記憶が80分しか持たない数学博士(寺尾聰)の住む家でした。

「君の靴のサイズはいくつかね?」

「24、実に潔い数字だ。4の階乗だ。」

初対面の博士のコミュニケーションは変わっていて、数字に関する質問ばかりでした。

そして、博士は杏子に10歳の息子(齋藤隆成)がいること、その息子が家でひとりで杏子の帰りを待っていることを知ると、次の日から息子を家に連れてくるように言います。

博士は杏子の息子を「ルート」と名付け、その日から博士・杏子・ルートの3人の穏やかで温かな時間が始まりました。

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キャスト情報

杏子/深津絵里

博士の家に派遣された家政婦で、10歳の息子を持つ28歳のシングルマザーです。

家政婦紹介所の中では一番若いですが、キャリアはすでに10年になります。

杏子役を演じたのは、【踊る大捜査線 THE MOVIE】シリーズ(1998)、【ザ・マジックアワー】(2008)、【悪人】(2010)などに出演している深津絵里です。

博士/寺尾聰

記憶が80分しか持たない数学者で、数学と阪神タイガースをこよなく愛しています。

記憶が持たないことから、洋服に大切なことを書いたメモを貼り付けています。

博士を演じたのは、【半落ち】(2003)、【さまよう刃】(2009)、【雨あがる】(2000)など多くの作品に出演し、歌手としても活動する寺尾聰です。

ルート/齋藤隆成・吉岡秀隆

杏子の息子で、頭がルート記号のように平らだったことから、博士に「ルート」と呼ばれるようになりました。

映画の冒頭は、中学校の数学の先生になったルートの授業から始まります。

子ども時代のルート役は齋藤隆成が演じ、大人のルートを演じたのは、【男はつらいよ】シリーズ(1981)、【ALWAYS 三丁目の夕日】シリーズ(2005)、【海賊とよばれた男】(2016)などに出演している吉岡秀隆です。

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【博士の愛した数式】見どころと解説

数学に「美しさ」を感じさせる博士の名言

本作の魅力のひとつに、数学について語る博士の名言があります。

「神の計らいを受けた、絆で結ばれた数字なんだ」

杏子の誕生日である220と博士の腕時計に刻まれた数字284は、約数の和がお互いの数字になる数少ない友愛数という関係にあり、博士はこのように表現しています。

「完全な人間が滅多にいないように、完全な数もまた稀だ」

28のように自身の約数を全て足すと自身と同じ数字になる完全数については、このように話していました。

杏子とルートは、これらの名言と数学の美しさに感銘を受け、博士を尊敬するようになります。

最後に紹介される博士の愛した数式

これほどまでに数学を愛している博士が最も愛した数式は、18世紀最大の数学者レオンハルト・オイラーによって発見されたオイラーの公式です。

「e+1=0」

この公式は、「ネピア数e・虚数i・円周率πの決して交わることのない矛盾するものが統一され、自然と繋がり、そしてゼロ(無)になる」と表現されています。

博士・杏子・ルートの一見無関係に見える3人に、自然な繋がりを感じた博士の気持ちを表現しているように思います。

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【博士の愛した数式】感想

本作は、数字を無機質なものではなく、人間や自然のように優しく美しく例える博士に、いろんな愛を感じる作品となっています。

周囲から家政婦の度を越えたコミュニケーションと言われ、一度は博士の家から担当を外されてしまいますが、博士と杏子のまっすぐな説得に、再び博士の担当に戻ることになりました。

3人の仲の良い交流は家族愛や男女の愛とは違う、もっと単純でシンプルな優しい気持ちから生まれています。

見終わった後、博士の穏やかな人柄を感じ、心地よい余韻に浸ることができます。

また桜や夕日など自然豊かな風景や映画のラストには能のシーンがあり、日本の美しさを感じられることも本作の魅力のひとつです。

数学に興味がある人はもちろんですが、興味がない人でも楽しめる映画だと思います。

ぜひ、ご覧下さい。

©「博士の愛した数式」製作委員会