愛する男女の哀しい別れ。
戦争は2人の愛を、無残に引き裂いてしまいました。
イタリア映画【ひまわり】は、戦争によって引き裂かれた夫婦の行く末を悲哀たっぷりに描いた名作。
エンディングの哀しい別れと共に、地平線までも一面に広がるひまわり畑の映像が圧巻です。
【ひまわり】あらすじ
時は、第二次世界大戦終結後のイタリア。
やつれた姿で、戦争後の役所へ毎日通う女性の姿がありました。
ジョバンナ(ソフィア・ローレン)は、出征したきりで死亡確認もなく、行方不明になった夫のアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)の消息を必死に求めていたのです。
戦時中に陽気なナポリ娘のジョバンナと、アフリカ戦線行きを控えた兵士のアントニオは海岸で出会い、すぐに恋に落ち結婚しました。
幸せな結婚休暇もあっという間に終わり、アントニオは戦争に行かないよう精神疾患による除隊を目論みましたが偽装がバレて、懲罰として極寒のソ連戦線に送られてしまいます。
終戦を迎え、ジョバンナは夫の帰りを何年も待ち続けたものの、夫の消息はわからないまま。
ある日、ようやくアントニオと同じ部隊にいたという男性を見つけたジョバンナは、夫が敗走中に極寒の雪原で倒れたという話を聞きました。
戻らない夫を探すために、ジョバンナはソ連に向かい夫の足跡を追います。
しかし、ロシアの広大なひまわり畑の果てに待っていたのは、ロシアの美しい娘と結婚して子供にも恵まれていたアントニオの幸せな姿でした。
アントニオは記憶を失っていたのです。
敗走して雪原で凍死しかけていたアントニオを、ロシアの娘マーシャ(リュドミラ・サベーリエワ)が救っていました。
そしてそのまま一緒になっていたのです。
ジョバンナはアントニオと再会したものの彼の反応は無く、ジョバンナは絶望と涙にくれミラノに帰ります。
ミラノに帰ったジョバンナは、アントニオの写真を泣きながら踏みつけ、地元の男たちと毎日荒れた生活を始めます。
「いっそ死んでくれても良かったのに」と……。
ところが、ある日突然アントニオが彼女の元を訪れてきました。
彼の記憶が戻ったのです。
アントニオはもう一度やり直そうと言いますが、そのとき隣の部屋から赤ん坊の泣き声が。
ジョバンナはアントニオと名付けた子供を産んでいたのです。
そう、彼女自身もすでに別の人生を歩んでいました。
翌日、ジョバンナはミラノ駅にモスクワ行きの汽車に乗るアントニオを見送りに行きました。
もう2度と会うことは無い2人。
ジョバンナは、消えてゆく彼の姿に堪えきれず、涙を流しひとりホームに立ち尽くすのでした。
ヘンリー・マンシー二の哀愁に満ちたテーマ曲と共に……。
映画【ひまわり】見どころ
戦争の悲劇
映画【ひまわり】は、明るいひまわりの花と、愛の悲劇が対比的にドラマチックに描かれています。
愛し合って結婚したばかりなのに、夫は徴兵で戦争に行かなければなりませんでした。
どうしてこんなことになるのだろうと、戦争で男女の愛が引き裂かれる現実があります。
本作は互いに想い合いながらも、戦争で引き裂かれていく男女を通して、戦争のもたらす悲劇を静かに訴える名作といえるでしょう。
ひまわり畑の美しさ
映画は果てしなく広がるひまわり畑から始まり、ソ連で夫を捜し続けるその過程で広大なひまわり畑の墓地が描かれています。
とにかく一面に広がる、ひまわり畑の映像が圧巻。
青い空の下で強風に煽られても大きく咲き誇るひまわりからは、強い生命力が感じられるはずです。
映画【ひまわり】のロケは、東西冷戦時代に体制が緩和されたソ連で大規模に行われました。
広大なひまわり畑やモスクワ各地で撮影が行われたため、当時のソ連の風景や生活も見る事ができる貴重な作品です。
【ひまわり】感想・評価
2大スターの名演技が素晴らしい!
主役を演じたソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニの名演が素晴らしいの一言に尽きます。
イタリア出身のソフィア・ローレンは、喜びも悲しみも幅広く演じ分けられる演技派として数々の名作にも出演し、イタリアの太陽と言われるほど存在感がある女優です。
マルチェロ・マストロヤンニは、フェリーニ監督の【甘い】(1960)に出演し、世界的スターの座を手に入れた人物。
2枚目から3枚目役まで、人生の悲喜劇を巧みに演じ分けることのできるイタリアを代表する名優です。
この2大スターの演技が絶妙で実に感動的。
また、マーシャ役を演じたリュドミラ・サベリーエワの、少女のようにはかなげな演技が印象的です。
永遠の名作にふさわしい作品
全編に流れたヘンリー・マンシーニの哀愁に満ちたテーマ曲は、世界中で大ヒットになりました。
特にひまわり畑を眺めながら、ジョバンナが泣き崩れる場面での音楽の盛り上がりは大感涙シーンです。
映画【ひまわり】は、ソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニの名演、イタリア・ネオリアリズムの担い手であった巨匠デ・シーカ監督の見事な演出、そしてヘンリー・マンシー二の素晴らしい楽曲によって仕上げられた永遠の名作といえます。
映画史上、最も切ない愛の物語。
これは絶対オススメです!
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